2018年07月29日

15年の時を経て面白さを知る 「ニンゲン御破算」


ningen.jpg松尾スズキさんが中村勘三郎(当時 勘九郎)さんのために書きおろして2003年に上演された作品。
私の記念すべき初コクーン遠征作品です。

15年の時を経ての再演。
勘三郎さんに代わって主役を張るのは大人計画の看板役者 阿部サダヲ。
キャッチコピーは、「松尾スズキ史上最大の幕末大河エンタテインメント!」


シアターコクーン・オンレパートリー2018
「ニンゲン御破算」
作・演出: 松尾スズキ
音楽: 伊藤ヨタロウ
殺陣: 前田悟
出演:  阿部サダヲ  岡田将生  多部未華子  荒川良々  皆川猿時  小松和重  
村杉蝉之介  平岩紙  菅原永二  ノゾエ征爾  平田敦子  松尾スズキ ほか

2018年7月11日(水) 12:30pm 森ノ宮ピロティホール K列センター
(上演時間: 3時間20分/休憩 15分)



ストーリーはなかなか説明しづらいので公式サイトから:
頃は幕末。加瀬実之介(阿部サダヲ)は、人気狂言作者・鶴屋南北(松尾スズキ)、河竹黙阿弥(ノゾエ征爾)のもとへ、弟子入りを志願していた。大の芝居好きで、成り行きとはいえ、家も侍分も捨て、狂言作者を志している実之介。「あなた自身の話のほうが面白そうだ」と南北に言い放たれた彼は、自分、そして自分の人生に関わってくるニンゲンたちの物語を語りだした―。もともとは元松ヶ枝藩勘定方の実之介は奉行から直々の密命を受けていた。それは偽金造りの職人たちを斬ること。幼馴染みのお福(平岩紙)との祝言を済ませた実之介は、偽金造りの隠れ家へ向かい、職人たちを次々に殺めたのだった。その様子を目撃していた、マタギの黒太郎(荒川良々)と 灰次(岡田将生)の兄弟は殺しのことは黙っている代わりに自分たちを侍にしてくれるよう、実之介に取り引きを持ちかけた。そこへ駆け込んできた娘が一人。黒太郎たちの幼馴染みで、吉原へ売られていく途中のお吉(多部未華子)だった。ちょうどその頃、実之介は、同志の瀬谷(菅原永二)や豊田(小松和重)から、悪事の責任をすべて負わされて切腹を迫られていた・・・・・。


初演当時、「勘九郎さんが大人計画にっ!」と舞い上がって東京まで出かけた割にはほとんど内容を覚えていないことに愕然としました。
多分、今なら見えるあんなことやこんなこと、あの頃の私は未熟すぎて何もわかってなかったなぁと感じ入った次第・・・今でもちゃんと理解しているかどうか怪しいものですが。
そして、「こんなにおもしろいお芝居だったのか!」という思いを新たにしたのでした。


初演時は終盤、勘九郎さん実之介が「実は女だった」ということが発覚して、着物の胸をはだけておっぱい曝け出して暴れまわるシーンがとにかく強烈に印象的で、「ええぇ~っ!そんなオチ?!」と驚いたものですが、それを知っている上で今回観ていると、許嫁のお福(平岩紙)との結婚に激しく抵抗する、灰次(岡田将生)に吉原に誘われても拒否する、お吉(多部未華子)に「おっさん」呼ばわりされて「おっさん言うな!」とキレる、などそこここに細かい伏線が張られていることにに改めて感心。

まったく余談ですが、今回のサダヲ実之介のおっぱいが初演のにくらべるとやたらリアルでさわると気持ちよさそうで(←)、その技術の進歩にも驚いた次第。

そして、「からっぽだ、からっぽだ」も。
一幕ラストに実之介が叫ぶ言葉ですが、今なら、「男」という、本来の自分とは違う型にはめられて生きることを強いられた人間の、こんなにも切ない魂の吐露だったのだとわかります。
女でありながら男として育てられた実之介という役を、男にしかなることができない、男でありながら女を演じる歌舞伎役者を宛てたことまでも、松尾さんの深謀遠慮だったのかと思いました。

大人計画らしい笑いやギャグ、そしてブラックを散りばめながら物語は進みます。
その中で、幕末から明治への向かっていく時代の混沌、武士の世界と庶民の対比、貧困や人身売買、金、名誉欲・・・人間のどうしようもない業を描く松尾スズキさんの筆致が冴えわたっています。


阿部サダヲさんが舞台から発する熱量にはいつも押されっ放しですが、今回も出ずっぱり、しゃべりっ放しでずっとハイテンション・・・でいながら、実之介の人には言えない心の陰影も切なさも表現していて緩急自在とはまさにこのこと。

初演でそのサダヲちゃんがやった灰次は岡田将生くん。すばらしい。
岡田くんの舞台作品は、初舞台でエキセントリックなランボーを演じた「皆既食」から「ウーマン・イン・ブラック」「ゴーゴーボーイズ・ゴーゴーヘブン」とすべて観ていますが、すべてアタリ!で、若いけれどとても力のある役者さんだと思います。声もよく通るし、阿部サダヲさんと対峙しても位負けしない圧も華もあるという・・・岡田将生、おそろしい子。

今回、センターブロック通路側で横を役者さんたちが頻繁に行き来する席だったのですが、岡田くん灰次が真横に立ち止まったり、私の頬に風をあててビュンと走り抜けて行ったり、目もハートもヤラレたよね。

相変わらず高値安定の多部未華子さんをはじめ、平田敦子さん、荒川良々さん、小松和重さん、皆川猿時さん、材杉蝉之介(あの自転車乗ったまま大階段をダンダンダンッて降りてくるの、すごかった)、平岩紙さんなどナド、鉄板の共演陣。

舞台中央に大階段があって、両側の壁が倒れかかったり、奥行きと高さを利用した舞台装置。
中段あたりに本水のプールがあって、役者さんたち、バンバン飛び込みます。
大階段のさらに上、舞台最上段に下座音楽風のお囃子連中がいて、舞台上手のエプロンステージのサックスやバイオリン、キーボードなどのバンドの生演奏とのリミックス感が楽しかったです。

再演にあたって松尾さんは、「今回は作品の本質的なものを伝えたいという思いもあり、物語だけで自立出来るよう求心力を心がけました」と話されたとか。
松尾さんが意図して物語としてより理解しやすくされたであろうことも今回この戯曲を楽しめた要因の一つかと思いますが、初演から15を経て、そのおもしろさ、凄さに気づくなんて、再演の妙だなと思いました。



image1 (13).jpg

最近はパンフレットはほとんど買わないのですが、15年前と検証してみたくて購入
左が今回、右が2003年のもの



image2 (9).jpg

阿部サダヲさん、確かに若いけど(右が初演パンフ)、あまり面ざし変わってないなぁ



image1 (9).jpg

そして2003年版パンフのモブの中に、今をときめく星野源さんはっけ~ん!



「この作品はこのあと15年以上やらないと思うので、このチャンスを逃さないように」 by 阿部サダヲ  あ~ 見逃さないでよかった のごくらく度 (total 1940 vs 1946 )


posted by スキップ at 21:00| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください