2018年05月20日

4月文楽公演 第1部


bunraku201804.jpg4月の国立文楽劇場は、吉田玉助さん襲名披露興行。
吉田幸助さん改め五代目吉田玉助さんは三代目玉助さんのお孫さんで、お若いころから将来を嘱望された人形遣いのサラブレットですが、襲名特設サイトはできるし、CAPCOMとコラボレーションするしで、文楽の襲名としては破格の華やかさです。



4月文楽公演  第1部 
2018年4月7日(土) 11:00am 国立文楽劇場 1列上手



本朝廿四孝 

「本朝廿四孝」といえば、武田信玄、上杉謙信の確執を背景に信玄の子 武田勝頼と謙信の息女 八重垣姫の恋模様や、軍師山本勘助、直江山城守の活躍などを描いた浄瑠璃で、時代物の義太夫狂言として歌舞伎でもたびたび上演されます。
「十種香」や「奥庭狐火」の段は歌舞伎でも文楽でも何度か拝見したことがあるのですが、今回上演された「桔梗原の段」 「景勝下駄の段」 「勘助住家の段」はこれまで文楽でも歌舞伎でも観たことなくて、「ほぇ~、そういうことだったの?!」「そういうお話だったのぉ」と驚きの連続で、とてもおもしろかったです。


桔梗原の段 (上演時間: 49分)
太夫: 豊竹芳穂太夫  竹本文字久太夫  
三味線: 竹澤團吾  竹澤團七



甲斐(武田家)と越後(長尾家)の国境にある桔梗原。舞台真ん中に国境を表す道標が立てられています。
国境をめぐって日頃から両家の家臣がいがみ合っているこの地に、山本勘助の次男・慈悲蔵〈吉田玉男〉が捨てた一子 峰松を、武田家執権・高坂弾正・唐織夫妻と、長尾家執権・越名弾正・入江夫妻が取り合いする話(大ざっぱ)。


・武田家の奴たちが草を刈っているのに、長尾家の奴が国境からはみ出していると文句をつけて喧嘩になる
・唐織と入江がどちらも豪華な打ち掛けを着たべっぴんさんなのに嫌味の応酬で言い負かされた入江がすごすご退散する
・峰松をめぐって「足がこっちの領地に入っていたからこちらのもの」「いや、頭がこっちだから」と子供か、というような取り合いをする高坂、越名の両弾正
・唐織が「赤ん坊がどっちの乳に吸いつくかで決めよう」と言って、年上の入江ブチ切れ

・・・おもしろすぎる。
「本朝廿四孝」って結構居ずまい正して観る義太夫狂言みたいなイメージだったのですが、こんな中二病みたいな喧嘩の応酬なんて(笑)。
いや、芳穂さんも文字久さんもいいお声で大真面目に語ってくださっているのだけれど。
赤子の峰松を抱く慈悲蔵が玉男さんで、配役確認していなかったので、キリリとした男前ぶりに不意をつかれてドッキリ
子を思うやさしさと何だか内に秘めたものを感じさせて、次の幕への期待もふくらみます。



tamasuke.jpg

文楽劇場の階段の上に吊られた垂れ幕。
幕間にこれ撮ってて階段から落ちそうになって惨事になりかねない事案発生



吉田幸助改め 五代目吉田玉助 襲名披露 口上

下手から、吉田玉男さん・吉田簑助さん・吉田幸助改め五代目吉田玉助さん・吉田和生さん・桐竹勘十郎さんの並び。
後列にはずらりと人形遣いさんたちが控え、全員目にも鮮やかなフューシャピンクの裃。

簑助さんは口上を述べられず、トップバッターの玉男さんは初日だったこともあってかとても緊張されていて、書いたものを読んでいらっしゃるようでした(それもかなり棒読み(^^ゞ・・・そこがまた普段の凛々しさとのギャップがあってカワイイ←)
和生さんはいつも通り、丁寧に淡々と。勘十郎さんは手慣れた感じで、「初めて幸助くんに会ったのは14歳の時で、脚の長い少年だった。長い脚は足遣いにはハンデになるはずなのに、その修業も無事に勤めあげ・・・」といったお話を茶目っ気たっぷりに。

襲名を皆さんで寿ぐという温かい雰囲気にあふれた口上。
観ているこちらまで思わず笑顔になって、幸せのおすそ分けをいただいた気分でした。



景勝下駄の段 (上演時間: 33分)
太夫: 竹本織太夫  
三味線: 鶴澤寛治


襲名披露狂言  勘助住家の段 (上演時間: 1時間21分)
太夫: 豊竹呂太夫  豊竹呂勢太夫  
三味線: 鶴澤清介  鶴澤清治

人形: 吉田玉助  吉田簑助  吉田和生  桐竹勘十郎  吉田玉男  ほか



えーっとですね。
この二つの段は話しの展開がかなり怒涛で、最初に書いた「ほぇ~、そういうことだったの?!」の連続だった訳ですが、私のヒアリング力とそれを理解する能力にも限界というものがあり、誤解している部分もあるかもしれませんのであしからず。


・慈悲蔵には兄 横蔵がいて、母(山本勘助の未亡人)は、よくできた孝行者の弟 慈悲蔵にはなぜか辛くあたり、乱暴者の兄横蔵を猫っ可愛がりしている
・母は慈悲蔵に雪の降る真冬にもかかわらずタケノコ取って来いと無理難題をふっかける
・脱げて飛んでしまった母の下駄を拾ってくれたのは長尾景勝で横蔵を家来にほしいと言い、母は横蔵を家来に差し出すと約束
・横蔵はとんでもなく横暴でイヤな奴
・峰松を抱いた唐織が「武田信玄参上」とやってきて、「この子は甲斐の国が預かるからには信玄公。慈悲蔵を軍師として迎えにきた」と言う
・慈悲蔵が断ると、峰松を雪の降りしきる戸口に置いて去る
・慈悲蔵の妻 お種は泣く峰松の声に耐えかねてわが子を抱き上げてしまう・・・とどこからか懐剣が飛んできて峰松に刺さり、峰松は死んでしまう
・慈悲蔵がタケノコを探して雪の中を掘っていると何やら箱が出てくるも、横蔵がそれを奪い取る
・そこへ母が現れ、横蔵に白小袖と裃、腹切刀を差し出し、長尾景勝の身代わりとなって切腹するよう命じる
・横蔵は刀で自分の右目を刺して、「こうして傷をつければ景勝に似た顔でなくなり偽首にならない。本日より父の名 山本勘助を受け継ぐ」と宣言
・横蔵が「長尾謙信が家臣・直江山城之助、これへ出でよ」と告げると現れたのは長裃を着た慈悲蔵
・横蔵はかねて信玄公と主従であり、義晴公暗殺事件の折に館から源氏の白旗と側室賤の方を連れ出した。産後亡くなった賤の方に代わり義晴公の遺児・松寿君を我が子と偽って養育していたこと、ここに埋めていたのはその白旗であると告げてその白旗を掲げる
・それを聞いた母は、「父の名を上げる『廿四孝』にも優る孝行者だと勘助が遺した軍法の巻物を与えようとするが、「それは弟へ」と横蔵
・かくして、信玄の軍師 勘助(横蔵)と景勝の軍師 山城之助の兄弟は合戦場での再会を約束して甲斐と越後に別れゆく


は~っ、壮大。

集中して聴かないと訳わからなくなってしまうので疲れましたがとてもおもしろかったです。
「廿四孝」ってそこからきてるのか、とか、たくさん勉強にもなりました。

とはいえ、楽しい場面もあって、特に前半の横蔵の傍若無人ぶり。
母がお湯で足を洗ってくれるのに、「若い娘の手ならいいが、母の乾物みたいな手では・・」と言ってみたり、こたつがぬるいと「もうすぐ火屋(焼き場)へ行くんだからその稽古に熱めのこたつにあたれ」と言い放ったり。
あまりの言いたい放題に爆笑してしまいました(周りで笑ってる人は他に誰もいなかったけど)。


横蔵を遣うのは襲名披露の玉助さん。
初日ということもあってかなり大変そうでしたが、若々しく、勘十郎さんが口上でおっしゃっていたように長身で脚が長ければ手も長い玉助さんが遣う人形も手足が大きく動いていて迫力たっぷり。ぶっ返った姿もピタリと決まっていました。
これからこんな大きなお役をたくさんお勤めになるのね、と観ていて胸が熱くなりました。

凛々しさの中に高潔さが滲む玉男さんの慈悲蔵、子を思う母の深い情愛が感じられる和生さんのお種。
母を勘助住家の段の前までを勘十郎さん、後を簑助さんがリレーで遣うという贅沢。お二人の個性の違いも際立って興味深かったです。
簑助さんの遣う女性はいつもながら可愛い。この勘助未亡人のような強い女性でも、凛として品よくかわいいおばあちゃんに映ります。

それにつけても、これまで知っていると思っていた「本朝廿四孝」がほんの一部だったこと、その物語の奥深さに改めて感じ入った襲名披露狂言でした。



義経千本桜  道行初音旅
太夫: 豊竹咲太夫  竹本織太夫  竹本津國太夫 ほか  
三味線: 鶴澤燕三  竹澤宗助  鶴澤清志郎 ほか
人形: 桐竹勘十郎  豊松清十郎 ほか
(上演時間: 35分)


歌舞伎では何度も観ていますが、文楽で観るのは初めてでした。
いつもの床ではなく、歌舞伎の松羽目物みたいに舞台奥のひな壇に太夫、三味線 九梃九枚が並ぶ形。

楽しかった!
以前別の演目で、「勘十郎さんが狐か、狐が勘十郎さんか」と感想を書いたことがあるのですが、勘十郎さんの狐は今回も格別でした。
もう出遣いから、「え!そこからっ?!」と驚き楽しませてくれます。
次の登場の一瞬で衣装まで変わって・・・あー、そうだった。勘十郎さんの狐だったと思いました。

清廉でたおやかで可愛らしい清十郎さんの静とともに舞う忠信の凛々しく華やかなこと。
時おり挟みこまれる狐の仕草もかわいくて、桜満開の中、多幸感に満ち満ちて打ち出されました。



image1 (5).jpg  image2 (3).jpg

CAPCOMコラボのポスターと、とりまとめてインスタにアップした画像



文楽も歌舞伎もまだまだ知らないことがいっぱい のごくらく地獄度 (total 1912 vs 1919 )


posted by スキップ at 23:27| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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