2018年05月01日

「隣の芝生も。」・・・青くはない


tonarinoshibafumo.jpg来年劇団創立30年を迎えるMONOのオリジナル公演。
劇団員5名に若手俳優の客演5名という布陣です。


MONO 第45回公演 「隣の芝生も。」
作・演出: 土田英生 
出演:  尾方宣久  水沼健  奥村泰彦  金替康博  
土田英生/高橋明日香  大村わたる  立川茜  
石丸奈菜美  渡辺啓太

2018年3月26日(月) 7:00pm ABCホール 
XA列(最前列)センター (上演時間: 2時間)



物語: 古い雑居ビルの1室で、元ヤクザたちが探偵事務所を開こうとしていました。元組長の小山田(尾方宣久)は敵対組織から命を狙われているらしいと怯えています。
一方、隣の部屋は若者たちが営むスタンプショップ。その経営者兄妹の兄・信之助(大村わたる)が1か月前から失踪中で、妹の波留(立川茜)兄の行方を探してほしいと探偵事務所に依頼します。信之助はほどなく見つかりますが・・・。



MONOの劇団員(全員おじさん)がヤクザ側でスタンプショップ側は客演の若い役者さんとくっきり分かれた構成。
途中で廻り舞台のように入れ替わる2つの部屋も明るさや色の違いがくっきり際立ちます。
本当なら出会うはずのない人々が隣同士という縁で出会ったり、知らずに接点を持っていたり、という人生の機微を描くのかと思いきや、そこには秘密めいた陰謀も見え隠れして。
結局、世間的に怖いと思われているヤクザ(だけど気のいいおじさんたち)よりフツーの若者の方が一枚も二枚も上手だった(?)という切なくも苦い話・・・という感じでしょうか。



元ヤクザたちは小山田組長筆頭に、どこかユルくて憎めない人たち。
元構成員で今は便利屋をしている修ちゃん(土田英生)を除いては。
いや、修ちゃんも観ている間は彼らと同じようなタイプに映るのですが、ラストで冷たいナイフを当てられたような感覚になります。

物語のプロットは
・小山田元組長はヤクザ時代、「33K」という香港の組織ともめていて今も命を狙われていると怯えている
・探偵事務所の部屋を格安で貸してくれたのは組時代に恩義のある「おやっさん」
・あやしい刺客らしき男をつかまえると、失踪していた信之助
・おやっさんが倒れ、娘の栞がおやっさんの秘密を暴露・・・つまりおやっさんこそが「33K」とつながっていて、小山田を殺そうとしていた張本人、かつ栞は親であるおやっさんを嫌っている
・元ヤクザたちは意を決して病院のおやっさんを殺すべく襲撃に出発


で、ラストはすべてが終わった後のスタンプショップ。
元ヤクザたちはあれっきり姿を見せないということが語られます(多分襲撃に失敗して逆に消されたと思われる)。
ただ一人残った修ちゃんの胸には「なんとかK」というバッジが・・・。

ここでハッと気づきました。
これってつまり、修ちゃんと栞はおやっさんと(ひいては33Kと)繋がっていて、修ちゃんが情報をすぐ集められたのも、栞が小山田たちに協力したのも、ひいてはおやっさんが入院したことさえ、すべては仕組まれていたことだったのではないか、と。

さらには。

信之助が刺客のまねごとをしたり探偵事務所を盗聴したりしていたのはいかにも素人のバイトという感じですが、胡散臭いのは妹の波留。
実は波留ちゃん、栞の仲間ですべて知っていたのではないかという疑惑がムクムク。
「私にだって秘密があるのよ」という意味深発言があったり、トイレ掃除と称して長時間トイレから出てこなかったり(盗聴器回収疑惑)、さっぱり明るい顔して「子どもの頃からの夢だった留学に行く」って、お兄さんはまた行方不明で経営にも困っていたスタンプショップのどこにそんなお金が?報酬もらったのかしら?
水沼健さん演じる桐生なんて波留ちゃんの可憐さにコロッと参って探偵料無料にしたりしていましたが、兄思いの天真爛漫で可憐な少女といった風情の波留ちゃんがこの中で一番・・・。



「隣の芝生」ということばからイメージするのは、「隣の芝生は青く見える」=他人を羨むという物語かと想像していたのですが、それとは印象が違っていて、後でMONOの公式サイトで土田さんのこの言葉を読んで納得がいきました。


「『隣の芝生も。』続くとしたら『青くはない』。そういう設定です。
2つの話が両方絡み合って、1本の昭和のヤクザ映画のような話になっていく。
僕の好きなウディ・アレンの映画『重罪と軽罪』がヒントになりました」


「も」がポイントなのですね。
隣の芝生が青く見えるのは、隣のことをよく知らないから。
内情を知ると結局、隣の芝生も・・・ということかな。


どことなく切なくて人間なんて信じられないよと言われているような思いにもなりますが、重さ暗さや絶望感はそれほど感じられず、おじさん元ヤクザたちの可愛らしさが心に残ります。
ほろ苦い笑いが重ねられて、温かみも感じられるのは土田さんならでは筆致だなぁと思いました。


この日はアフタートークがありました。
相良美紅役の石丸奈菜美さんの進行で、土田英生さんと金替康博さんのご登壇。

お話の中で印象に残ったのは、
作品のテーマにちなんで、「ねたみ」について:
土田 「僕はねたみの塊のような人間で、いつも誰かをねたんでます。『ヨーロッパの芝生』とか」(笑)

これ、土田さんよくおっしゃっていますね。
公式サイトにも、「僕は誰よりも妬み深い人間で、周囲が自分より派手に活躍していると、誰を見ても僕より楽しそうに見えるんです」と書いていらっしゃいますし、以前別の公演のアフタートークでも若手の役者さんに「才能ある若手は早いうちにつぶす」と冗談まじりの発言がありました。


もう一つは
来年劇団30周年を迎えるにあたり、長続きする秘訣は?:
土田 「小さなことを一つずつ、そのままにせずに解決してきました。何で今日遅刻して来たんだよ、とか、楽屋で、そこにこんなもの置くなよ、とか」

これ、人間関係の基本だなと感じました。
そして、そういうことを遠慮せずちゃんと言い合えるMONOのつくり出す雰囲気が温かいのも、これを聞いたら当然だな、と。



message.jpg

こちらは劇団先行で予約したらいつもチケットとともに送られてくるメッセージカード。
今回は土田さんからのものでした。
ちゃんと直筆で、画像カットしていますが左上の部分には「□□□□様」とフルネームで私の名前が。
お忙しいのにありがたいお心遣いです。




3月に観たお芝居の感想今ごろ書くようでは・・・の地獄度 (total 1906 vs 1908 )



posted by スキップ at 22:21| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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