2018年03月19日

そんなの、これから知ればいいことでしょうがぁ 「ヒッキー・ソトニデテミターノ」


hickey.jpg2012年 ハイバイ主宰の岩井秀人さんが初めてパルコ劇場に進出して吹越満さん主演で上演した「ヒッキー・ソトニデテミターノ」。
あの時、チケット取っていたのに諸般の事情で観に行けなくて、後々まで悔んだものです。
今回、劇団の公演として岩井秀人さん自ら主演されると聞いて、とても楽しみにしていました。

ハイバイの処女作にして代表作「ヒッキー・カンクーントルネード」(2015年に観た感想はこちら)の続編という位置づけの作品です。


ハイバイ 「ヒッキー・ソトニデテミターノ」
作・演出: 岩井秀人
出演: 岩井秀人  平原テツ  田村健太郎  チャン・リーメイ
能島瑞穂  高橋周平  藤谷理子  猪股俊明/古舘寛治

2018年3月9日(金) 2:00pm アイホール 1列センター(全席自由席)
(上演時間: 2時間)



物語: 13歳から10年間、自室にひきこもり、両親(平原テツ・能島瑞穂)とも顔を会わせたがらず狂暴で暴力もふるう鈴木太郎(田村健太郎)。
いろいろなことをうまく説明できないことが醜態であり完璧でないと感じて28年間ひきこもっている48歳の斉藤和夫(古舘寛治)。
2人が入ることになる自立支援センターの相談員 黒木(チャン・リーメイ)のアシスタントで、かつては自身もひきこもりだった森田登美男(岩井秀人)。
3人のひきこもりの青年と彼らの家族が描かれます。


周りを枠のような四角い通路で囲った舞台。
その中にテーブルや椅子やおもちゃや、様々なものが雑多に置かれています。
そこに岩井さんが登場して前説(あの飴の包み紙のカシャカシャ音とか)をしている間に役者さんたちがわらわらと登場して開演です。

太郎と両親の場面に始まって、黒木と登美男が和夫の家を訪ねる場面、太郎と和夫が施設に入ってからの場面、と時系列に続く中に登美男がひきこもっていた過去のエピソードが織り込まれ、それらがシームレスに展開していきます。

不思議な感覚でした。
フラッシュバックのように織り込まれる登美男の過去が、すべて「ヒッキー・カンクーントルネード」で観た場面で、観るまでは忘れていたのに、場面はもちろん、それを観た時の感情までありありと甦ってきました。
「カンクーントルネード」→「ソトニデテミターノ」という順で作品がつくられたので、この順番で観たのが正解だったのかもしれません。


岩井さんはこの作品を「僕自身もまだわからない違和感や問題を観客と一緒に考えようという姿勢のもとに」つくられたそうです(フライヤーより)。

黒木が登美男に、「どうして人が家から外に出た方がいいかなんて、森田くん、わかる?」と問い
「その方が幸せになる可能性が高くなるからだ」と言いながら「不幸になる可能性もあるけど」と応える登美男。
これが岩井さんのおっしゃる違和感や問題なのかなと思います。
リアルの岩井さんはひきこもりから「外に出た」人ですが、どうして家を出られたのか、出たことが本当によかったのか、そもそも出なければならないものなのか・・・この問いへの答えは人それぞれで、正解なんてない。
斉藤和夫が迎える不幸な結末はそれを象徴しているよう。

不完全な登美男を見ていて世界の「イレギュラー」を許せるようになった和夫。
登美男の気持ちをきちんと整理して代弁して「ね、森田さんはそんなことも整理して話せないんです」と少し自慢げに笑う和夫。
あの笑顔の向うに、どんな葛藤や苦悩があったのかと思うとやり切れない思いです。

妻に先立たれ、老いた身で和夫の面倒をみてきた父、リストラされ「外」の世界にいながら行き場を失う太郎の父・・・ひきこもる彼らと外の世界を繋ぐ人々にも、外の世界を生きる切なさがあふれています。
そんな中、登美男の妹 綾の明るさと正のエネルギーに救われる思い。

みちのくプロレスの来訪を告げる花火。
「お兄ちゃん!あそこの公園に何が来てるか知ってる?みちのくプロレスだよ!行こうよ!先行っちゃうよ!!」
「お前、みちのくプロレスに誰がいるのか知ってるのかよ」
「知らないよ!」
「ばぁか、そんなんじゃなぁ・・・」
「そんなの、これから知ればいいことでしょうがぁ~!先行ってまっせ~」

これ、そのまんま「ヒッキー・カンクーントルネード」の場面の再現。
「カンクーントルネード」では飛び出して行った綾の後を追って、玄関を出ようとしてちょっと足がすくんで一歩さがり、また進もうとする登美男がその一歩を踏み出せたのか、やはり後戻りしてしまったのか、という余白を残すラストでしたが、この時、踏み出したから今の登美男があるのでしょう。
2回挿入された「そんなの、これから知ればいいことでしょうがぁ」というシーンとその言葉は、ひきこもりの人たちばかりでなく、それぞれに厳しい世界を生きる「外」の人々にも向けられた、岩井さんのメッセージのように聞えました。

そういえば、「先 行ってまっせ~」は前回は「先行くよ!」だったと記憶しているのですが、ここだけ関西弁にしたのはなぜ?・・・と質問用紙に書けばよかったわ、と今さらながら思うアフタートークがありました。

岩井さん、太郎の母役の能島瑞穂さん、斉藤和夫役の古舘寛治さんの3人で事前に集めた質問に答える形。
お2人はアフタートーク出演をこの日突然言われたのだとか。

「女性より男性(特に年配になってから)の方がひきこもりが多い」というお話が興味深かったです。
古舘寛治さんが手を挙げて、「男性はずっと社会の中で生きているから定年とかでそれがなくなるとどうしていいかわからないのだと思う。女性は個の世界で楽しむ術を知っている」といった内容の発言。
岩井さんも、確かにたとえば老人ホームとかに入った場合、「ここBunkamuraに似てるなぁ」と「昔、阿部サダヲと・・」とかさり気なく話して、「芝居やってたんですか?」「ええ、まぁ」みたいなところから入りたい、とおっしゃっていて、思わず笑っちゃいました。

「愛するのと愛されるのとどちらが?」という質問に「それは絶対愛される方でしょ」と岩井さんが即答されたのも印象的でした。
「KinKi Kidsなんか、愛されるよりも愛したい マ・ジ・で なんて歌ってるんだゼ」と、とんでもないわ、といったニュアンス。
う~ん、どうだろ?(笑)


image1 (2).jpg

事前に配布された質問票。岩井さん自筆かしら。
今回のチケットは劇団先行で取ったのですが、当日チケットを確認していたら、券面に「★先行特典付★」の記載が。
「へ?特典って何??」と思いながら劇場へ行くとこちらをいただきました(画像右のオレンジのキャップ)。
ハイバイのイラスト入り水のり。長さ6センチのミニサイズ。



水のりなんてみたのすっごく久しぶり 使ってる人いるのか? のごくらく地獄度 (total 1888 vs 1892 )





posted by スキップ at 23:24| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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