2018年01月18日

僕に命を返して  宙組 「不滅の棘」


fumetsu.jpg愛月ひかるさん 二度目の主演公演にして初めての東上付き別箱主演。
演じるのは348歳(!)の男。


宝塚歌劇 宙組公演
ロマンス 「不滅の棘」
原作: カレル・チャペック   翻訳: 田才益夫
脚本・演出: 木村信司
出演: 愛月ひかる  美風舞良  純矢ちとせ  澄輝さやと  凛城きら  留依蒔世  遥羽らら  華妃まいあ  ほか

2018年1月10日(水) 4:00pm シアター・ドラマシティ 17列センター
(上演時間: 2時間30分/休憩 25分)



チェコの作家カレル・チャペックの戯曲「マクロプロス事件」をベースに主役を女性から男性に置き換え、2003年 花組 春野寿美礼さん主演で上演された作品・・・ということですが、初演は観ていなくて、もちろん原作も読んだことはなく、全くの初見です。

16世紀の神聖ローマ皇帝ルドルフ二世の侍医であった父が皇帝の依頼で完成させた不老不死の薬を自分の息子であるエリイ(愛月ひかる)に飲ませ、永遠の命を得たエリイは300年以上も若さと美しさを保ったままそれぞれの時代を名前を変え、職業を変えながら生き続ける・・・という物語。


描かれるのは3つの時代。
1603年 ギリシャ・クレタ島。
父が殺された後、18歳のエリィが不老不死の薬を飲まされていたことを知って、「僕はもう人間じゃない。父さん、僕に命を返して!」と叫ぶ冒頭のシーンが切ない。その後の物語もエリイの生き方も、このニヒリズムに支配されているように感じました。


1816年 プラハ。
令嬢フリーダ・プルス(遥羽らら)から求愛される宮廷のお抱え歌手エリイ・マック・グレゴル(愛月ひかる)。
不老不死の身で誰かを愛することも、自分の人生に巻き込むことも避けて、一度は拒絶するものの、フリーダの真っ直ぐな想い、彼女を愛する気持ちに抗えず、手を取り合って夜の闇へと消えていきます。

そして、1933年 プラハ。
フリーダ・ムハ(遥羽らら)が四代前から100年以上続く遺産相続裁判について、弁護士コレナティ(凛城きらさん)、その息子アルベルト(澄輝さやと)と相談しているところへ突如現れる人気ロックスター エロール・マックスウェル(愛月ひかる)。フリーダに彼女の先祖 フェルナンド・ムハはフリーダ・プルスとマック・グレゴルとの子供であり、その証拠は裁判の相手であるプルス男爵の家にあると告げます。


愛月さんはもちろん、周りの人たちもほぼ白一色の衣装で、舞台装置もほとんど白、という世界が現実感から少し距離を置いていて、どことなく神の啓示の世界のような印象を受けました。
エロールのそばにいつもいる4人のべっぴんさんコーラス隊(愛白もあ・花咲あいり・桜音れい・花菱りず)なんて♪エロ~ル~ って会話もすべて綺麗なコーラス。妖精のようでリアリティないよね。

そんな白い世界の中で「赤」が鮮烈に印象的な場面が2ヵ所ありました。
一つ目は、エロールのリサイタル。
女装して歌うエロールが、ぶっ返り(歌舞伎用語ごめんなさい)で白スーツのカッコイイ男に変身、真っ赤な口紅を手の甲でぬぐい、そのまま頬をなぞって頬に赤い口紅の跡をつけたまま歌うシーン。
「愛ちゃん、ほっぺに口紅ついてるやん」と最初思いましたが、その妖しい色っぽさにドキドキ。
これは初演からの有名なシーンだったようです。

二つ目はラスト。
すべてを告白し、自分で自分の胸を撃ち抜いたエロールの胸から流れる赤い血。
死なないものの、心身ともに疲弊し、せっかく探し出した不老不死の薬の調合法を書いた紙を「誰でも欲しいものにくれてやる」と言い、それをフリーダが受け取って燃え盛る暖炉に投げ入れるのを見届けると、白いコートを放り投げて姿を消すエロール。遺されたのは白い砂。
フリーダが両手ですくい上げたその砂が指の間からサラサラとこぼれ落ちるところに ピンスポットが当あたるという、何とも余韻に満ちた終幕でした。

永遠の命を得ることがどれほど苦しく、限りある命を生きている人間がどれほど幸せか。
エロールはこんなふうに「不老不死」から自分を解放してくれる人を探していたのかもしれません。


愛月ひかるさんは、真っ白なスーツやコート、ゴージャスな白い毛皮やハットが長身に映えて端正な佇まい。堂々のスターっぷりです。
女とみれは若い子から老女まで、なプレイボーイなエロールの中に、誰にも心を開かず300年以上も一人で生きなければならなかった孤独や苦悩の翳りが滲んで素敵でした。
声が・・とよく言われますが、歌唱もずい分安定してきたように思います。

朝夏まなとさんが退団して、真風涼帆さんが次期トップ、愛月さんは二番手・・・と思ったところへ同期の芹香さんが組替えしてきて二番手、というのはご本人にとってもファンの方たちにとってもかなりハードだと心中お察しするに余りありますが、どうかめげずにがんばっていただきたい、と心から応援しています。

1816年と1933年。2人のフリーダを演じた遥羽ららさん。
このところ結構キツめキャラの役が続いている印象ですが、1816年のフリーダのような愛に一途な可憐な雰囲気もよかったです。演技も歌もお上手。
クリスティーナの華妃まいあさんの綺麗なソプラノの歌唱も印象に残りました。
クリスティーナはエロールを愛しているのに実の母 タチアナ(純矢ちとせ)さんに寝とられて自殺してしまうという可哀想な役ですが、それにしても何て母親。

男役では、フリーダに片思いの弁護士 アルベルトの澄輝さやとさんの眉を寄せる困ったちゃんの顔(ほめています)、クリスティーナの兄で何やら心に葛藤を抱え酒に溺れるハンスの留依蒔世さんあたりが目立った役。
  

「明日は休演日です」とカーテンコールの愛月さん。
「この作品は演じる方もですが観るお客様も体力がいると思います。明日は少しゆっくり休んでいただいて、また明後日、よろしければ観にいらしてください」といった趣旨のことをおっしゃっていました。




同じ不老不死でもポーと違って一族がいないのがツラいところなんですって のごくらく地獄度 (total 1864 vs 1866 )


posted by スキップ at 23:18| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください