2018年01月07日

高麗屋を背負って立つ覚悟 「壽 初春大歌舞伎  夜の部」



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壽 初春大歌舞伎 初日 歌舞伎座のロビーは昼の部から祝祭ムードにあふれて華やかでしたが、口上のある夜の部はより一層華やかさが増したようでした。


舞伎座百三十年
松本幸四郎改め 二代目 松本白鸚
市川染五郎改め 十代目 松本幸四郎
松本金太郎改め 八代目 市川染五郎  襲名披露
壽 初春大歌舞伎  夜の部


2018年1月2日(火) 4:30pm 歌舞伎座 1階7列上手



一、双蝶々曲輪日記  角力場
出演: 中村芝翫  中村七之助  澤村宗之助  松本錦吾  片岡愛之助 ほか
(上演時間: 52分)


芝翫さんの濡髪長五郎が角力場の入口に立った時、まだ顔も見えないのですが、戸口いっぱいに立った姿がすでにとんでもなく大きく立派で感心。
威厳のある佇まいの中、ゆったりした動きでいかにも人物の大きな横綱の風格。

それに対して、放駒長吉は少し軽い(リアルな意味で重量的に)印象。
まぁ、駆け出しの素朴な青年関取なのでこういう感じでいいのかもしれませんが。
愛之助さんは山崎屋与五郎と二役。昼の部の感想にも書きましたが、猿之助さんの代役で忙しそうです。
与五郎はいかにも上方歌舞伎のつっころばしの若旦那がじゃらじゃらしていてモテ男の色気もあって、愛之助さん余裕たっぷりに演じていらっしゃいました。

そんな与五郎の思い人 芸妓の吾妻は七之助さん。
舞台に出てくるだけで花が咲いたようです。



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二、二代目松本白鸚 十代目松本幸四郎 八代目市川染五郎 襲名披露 口上  
並び順(下手より): 
中村梅玉  中村東蔵  中村鴈治郎  坂東彌十郎  市川高麗蔵  
中村勘九郎  中村芝翫  中村雀右衛門  片岡秀太郎  
市川染五郎  松本幸四郎  松本白鸚  
坂田藤十郎  中村魁春  中村歌六  中村扇雀  片岡愛之助  
中村七之助  片岡孝太郎  中村又五郎  市川左團次  中村吉右衛門


総勢22名。豪華壮観。
仕切りは坂田藤十郎さん。

初日でもあり、三代の襲名でもあって皆さまきっちりとした楷書の口上を述べられる中、「白鸚さんは暁星時代級長をつとめ、放課後の稽古にも熱心だったのに自分はキャバレー通い」とぶっ込んできた左團次さん、さすがです。
秀太郎さんはどなたの時もいつも自分のお言葉で温かい心のこもった口上を述べられるのがとても好感。

吉右衛門さんが、「実父 初代白鸚に習った富樫を演じます」とおっしゃったことがとても印象に残りました。そしてそれは、この後「勧進帳」を観て思い知ることになるのでした。


白鸚さん 「高麗屋にとりまして親子孫そろっての襲名は37年ぶりでございます。3人揃っての襲名が再び盛大に行われますこと、私はもとより、泉下の父もさぞ喜んでいることと存じます。これもひとえにご列座してくださった皆さまや、とりわけ(客席の)皆さま方のご贔屓の賜物と厚く御礼を申しあげます」

幸四郎さん 「今年は歌舞伎座130年という節目の年に襲名興行ができますこと、何よりの慶びと存じます。まだ芸道未熟の私でございますが、自分の勤めている歌舞伎が歌舞伎の力となることを信じまして、天に向かって舞台に立ち続ける所存にございます」

染五郎さん 「祖父、父とともに染五郎を襲名し、勧進帳の義経という身に余る大役を勤められますことはこの上ない慶びにございます。この後はなお一層芸道に精進いたしまするゆえ、皆さまにはご贔屓、ご支援のほどをお願い申しあげます」


重厚で堂々した白鸚さん
凛々しい中、精悍さも増した幸四郎さん
気品ある御曹司 染五郎さん

舞台上でも客席からも、たくさんの温かいお祝いの気持ちがあふれていて、高麗屋新三代 船出です。



kanjincho201801.jpg三、歌舞伎十八番の内 勧進帳
出演: 市川染五郎改め松本幸四郎  松本金太郎改め市川染五郎  中村鴈治郎  中村芝翫  片岡愛之助  中村歌六  中村吉右衛門 ほか
(上演時間: 1時間13分)



新 幸四郎さんがずっとやりたかった「勧進帳」の弁慶を初めて演じたのは41歳の時。2014年の11月でした。
その初日に観て以来(感想はこちら)、幸四郎さんの弁慶を観るのは二度目です。


初役の時から完成度の高い弁慶でしたが、それがより力強さと重厚さを増して私たちの目の前に再び現れました。

花道に出た瞬間の万雷の拍手。
重く低く発する第一声。
錦絵のように美しい立ち姿。
キレのよい動き、鋭い目ヂカラ。
ダンッと所作板を踏み鳴らす音の力強さ。
躍動感があって表情豊かな舞。

最後に一人残った花道。
「陸奥の国へぞ 下りける~」という義太夫でキッと前を見据える弁慶に涙がぶわっとあふれました。
その視線の先には、命をかけて守る義経一行がいるのはもちろん、主従がこの先辿る過酷な運命に立ち向かう決意も込められているようで、それが、高麗屋を松本幸四郎として背負っていく覚悟とも重なって見えました。

1日経って録画していた「こいつぁ 春から」の初日映像を観たのですが、飛び六方で引っ込んだ鳥屋で息も切れ切れに周りのお弟子さんたちに支えられてやっと立っている姿にまた涙。
その後のインタビューでは穏やかな表情ながら少し照れたように「明日はもっとできるようがんばります」とおっしゃっていましたので、ご本人としてはまだ満足できる出来ではなかったのかもしれませんが、私には最高の、「十代目松本幸四郎の弁慶」でした。


吉右衛門さんの富樫は、これまで観たどんな富樫とも違っていました。
何と言ったらいいのか、すごく「熱い」富樫でした。
最初の切戸口への引っ込み。
去ろうとして一瞬弁慶を振り返った後、意を決したように向きを変えた時、パッと翻る裾の美しさ。
一つひとつの動きや台詞に細かく心情が伴っていて、富樫が弁慶に共感し、それがひいては富樫がこの後切腹する覚悟に繋がっていく・・・というように、「富樫の物語」としても観ることのできる「勧進帳」でした。
これが口上でおっしゃっていた「実父 初代白鸚に習った富樫」なのかと。

圧倒的な存在感と力量で攻めてくる吉右衛門富樫に、一歩も譲るまいと全身全霊で力を出し切る幸四郎弁慶。
あのヒリヒリするような緊張感の山伏問答は今のこの2人ならばこそ。
もう二度と観ることができないような気がしてなりません。

染五郎くんの義経。
声や台詞まわしはまだこれからといったところですが、いかにも貴公子然とした気品はそこにいるだけで義経。あ~、義経ってきっとこんな雰囲気だったんだろうという説得力ハンパない。
判官御手の神々しいまでの美しさ、静謐さに見惚れました。

鴈治郎・芝翫・愛之助・歌六という史上最強じゃない?という豪華四天王も襲名披露興行ならでは。



四、上 相生獅子/下 三人形
出演: 中村扇雀  片岡孝太郎/中村雀右衛門  中村鴈治郎  中村又五郎
(上演時間: 45分)


舞踊二題。
「勧進帳」で昂った心も体もクールダウンしてくれるような演目でした。
とはいえ、いつもなら切りの演目は若手中心となることが多いのに、熟練ベテラン勢が華やかに並ぶのも襲名披露ならでは。

絵面も美しく華やかで、楽しく打ち出されました。
にしても、若衆だれ?と思ったら鴈治郎さんって(暴言)。



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一月のSNOOPYクリアファイルは「口上」と「七福神」 めでたい。




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posted by スキップ at 22:57| Comment(2) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
スキップさま

嬉しく拝読しました。ありがとうございます。

吉右衛門さんの口上のご挨拶を教えていただき、シアワセです。テレビ中継ながら、富樫には胸がふるえました。

弁慶の美しいこと。関西で、是非、お願いしたいです。やはり、生で観たいですもんね。
Posted by おまさぼう at 2018年01月12日 18:39
♪おまさぼうさま

拙いレポではお伝えきれないと思いますが、本当に
すばらしい「勧進帳」でした。
吉右衛門さんの富樫はちょっと言葉では言い表せないほどです。
幸四郎さんの弁慶もぜひご覧になっていただきたいです。
南座顔見世あたりでお願いしたいものですね。

そして、染五郎くんの弁慶も楽しみに待ちたいです。
(15歳でやりたいとおっしゃっていますので、私が生きている間
に観られると思うのですが。)
Posted by スキップ at 2018年01月13日 23:12
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