2017年12月11日

ドラマチックに非ず 「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」


rosencrantz.jpgトム・ストッパードが1966年に発表した戯曲。
彼の戯曲の中で最も有名な作品の一つと言われています。

学生時代に原書、翻訳取りまぜてシェイクスピアの全作品を読んだことは以前にも書きましたが、その頃、「ハムレット」とともにこの戯曲も読んだことがあります。
ですが、正直のところとても読み辛くて、全くおもしろさがわかりませんでした。

だから、ずいぶん前(調べたら1997年でした)、鵜山仁さん演出、ローゼンクランツ: 古田新太、ギルデンスターン: 生瀬勝久、旅芸人一座の座長: 加納幸和という豪華キャストで上演された時も何となく尻込みしてしまって観に行かなかったことを今でも後悔しています。


シスカンパニー公演 「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」
作: トム・ストッパード
翻訳・演出: 小川絵梨子
出演: 生田斗真  菅田将暉  林遣都  半海一晃  
安西慎太郎   松澤一之  立石涼子  小野武彦  ほか

2017年11月23日(木) 7:00pm 世田谷パブリックシアター 1階C列(最前列)センター
(上演時間 2時間30分/休憩 10分・10分)



開演前。
舞台上で大道具さんがあちこちで何やら作業している風。
「この人たちも出演者なのかしらね」と思っていると、やがて彼らが中央にある衝立を運び去るとその陰から現れたのはローゼンクランツとギルデンスターン。
地面に座り込んでコインゲームに興じています。

これが何度やっても表が出て、ずっとローゼンクランツが勝ち続けるあたりからすでに不条理の香りが・・・。

デンマーク王子 ハムレット(林遣都)が正気を失ったらしいと、彼の義父である国王クローディアス(小野武彦)から呼び出され、真偽を探るよう言い渡される学友のローゼンクランツとギルデンスターン。
その使命は果たせず、訳もわからないままハムレットと共に船で英国に向かうことになりますが、「ハムレットを殺せ」と記されたイングランド王への手紙はすり替えられていました・・・。


「ハムレットのスピンオフ」と言われることもありますが、スピンオフというより、端役2人の立場から、つまり別の切り口で、「ハムレット」を見直す、といった趣き。
物語の大半が何とも捉えどころのない2人の会話で構成されています。
ローゼンクランツとギルデンスターンは何のために呼び出され、何をすればいいのかよくわからないまま、暇を持て余すようにコインゲームを繰り返し、特に何かを導き出すでもない会話を延々と続けているのでした。
まるで彼らの存在など関係ないように「ハムレット」の物語は粛々と進行していきますが、それでも2人はまぎれもなく「ハムレット」の世界の中にいて、そこから逃げ出すことはできないのでしょう。
なぜなら、彼らの運命はすべて「ハムレット」の中に書かれているのですから。

「ハムレット」の中で、「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」というひと言で語られる彼らの死は、「あとは沈黙・・」という言葉を遺して死ぬドラマチックなハムレットと比べたら、理不尽で、世間からは全く注目もされず記憶にも記録にも残らないものだったと思うと哀しい。
そしてそんな全くドラマチックではない彼らの姿が、大半の市井の人たち、つまり客席で観ている私たちの姿なのだということにより切なさも感じます。


とはいえ、2人の会話はコミカルな部分も多くてたくさん笑いました。
ローゼンクランツにいきなり「ねぇ」とか言われてドッキリしちゃうことも。
活字で読むとあんなに退屈だった戯曲も、2人の活き活きとした掛け合いで繰り広げられるととても楽しくて、やっぱりナマの舞台はいいなと改めて感じた次第です。

自分たちに起こる事象に対して真面目に思い悩み、苛立つギルデンスターンに菅田将暉、彼に鋭く突っ込まれても暖簾に腕押しという感じでぽわんと受け止めるローゼンクランツに生田斗真という配役。
生田斗真くんが髪型含めて今イチ情けなくてイケてない茫洋とした役をさらりと演じていて好感。こんな役もできるのね~。
一方、菅田将暉くんの機関銃のように台詞を放つギルもすばらしかったです。早口でも台詞はしっかり。役柄上とはいえ、もう少し緩急があるとなおよかったかなぁ。
1ヵ所だけ、はっきりわかる関西弁イントネーションだったのはご愛嬌です。

今や映像で大活躍している菅田将暉くんを初めて舞台で観たのは2012年の「ロミオ&ジュリエット」
「ロミオのまわりの若者群の中ではマキューシオの菅田将暉くんがお気に入り。一人金髪なのも目立っていました」と感想に書いていました。
あの頃とは比べようもない人気スターになりましたが、「なかなか見る目あったじゃん、ワタシ」とご満悦。

ハムレットの林遣都くんも素敵でした。
佇まいが美しいし、ローゼンクランツとギルデンスターンに対する冷たさ、容赦なさにゾクッ。
「ハムレット」の世界と「ロズギル」の世界を行き来してちょっとシニカルな視線で語る旅一座の座長の半海一晃さん、オフィーリアとホレイショーの2役を演じた安西慎太郎くんも印象的でした。



38分 → 休憩10分 → 50分 → 休憩10分 → 42分 というのはちょっとせわしない のごくらく地獄度 (total 1848 vs 1851 )


posted by スキップ at 23:50| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください