2017年11月11日

この世に思いを絶って死ね 「リチャード三世」


richardⅢ.jpg物語の終盤 ひとり玉座にすわり、ぶつぶつと何ごとが呟くリチャード。
彼を取り囲む城壁模様の幕がぞわ~っという感じで動き始めゆっくり上がると、いくつもの扉。
この扉から、リチャードに殺された亡霊たちが一斉に現れ、マイクを持って歌うのです。

♪血と罪 罪に目覚め この世に思いを絶って死ね


沈められたバスタブから濡れたまま現れるクラレンスも
ゴミ袋に入った自分の首を下げたヘイスティングスも
ヨーク公とエドワード、2人の小さな王子たちも


今でも 
♪この世に思いを絶って死ね この世に思いを絶って死ね
のリフレインが耳に残っています。

あー、”Despair, and die!” だったのか、と気づいたのは終演後でした。
小田島雄志さん訳だと「絶望して死ね」
「この世に思いを絶って死ね」は木下順二さんの訳ですって。


「リチャード三世」
作: ウィリアム・シェイクスピア 
翻訳: 木下順二
演出・上演台本: シルヴィウ・プルカレーテ
演出補: 谷賢一
出演: 佐々木蔵之介  手塚とおる  今井朋彦  植本純米  長谷川朝晴  山中崇  山口馬木也  河内大和  土屋佑壱  浜田学  櫻井章喜  八十田勇一  阿南健治  有薗芳記  壤晴彦  渡辺美佐子/子役(Wキャスト) 松本拓海  小薬英斗  石田星空 ・ 兒玉拓真  塙智成  福島歩友

2017年11月4日(土) 6:00pm 森ノ宮ピロティホール B列(最前列)センター
(上演時間 2時間35分/休憩 15分)



佐々木蔵之介さんでシェイクスピアといえば、「マクベス」(2015年)が記憶に新しいところですが、あの作品に負けず劣らず、この「リチャード三世」もかなり斬新。
両作品とも外国の演出家+演出補 谷賢一さんという組合せ。


幕があがると城壁模様の垂れ幕に囲まれた部屋。
中央に横長のテーブルがあって、白いシャツ、黒いパンツ、顔には白塗りをほどこした男たちがシャンパングラス片手にホーンセクションの生演奏に合わせて体を揺らしています。
「あ、馬木也さんだ。やっぱ色っぽいな」「今井さん、あんなところにいる」・・と楽しみながら観ていたら、「今やわれらが不満の冬は去り~」といういい声が聞こえてきて、「あ、『リチャード三世』の台詞だ!」と思ったら目の前に蔵之介さんがすっくと立っていました。
そうして、クラレンスが手錠をかけられ連れて行かれるところから物語が始まります。


衣装はずっとこのままかと思っていたら、次のシーンからはちゃんと女性はドレス。
男性も概ね貴族らしい服装だったりしますが、リチャードはシャツ(もしくはタンクトップ)に黒パンツのことが多かったような印象。
背中ばかりでなく、おなかも膨らんでいたり、足の不具合を表すのに右足はピンヒール、左足にはブーツを履いていたり、その時々で杖も違っていたり。
自分の邸にいて食べ物を貪り食っている時はどこも悪くない普通の体で、つまり、リチャードの足や背中はフェイク、人々を欺くためにそのふりをしていただけ、ということでしょうか・・・「髑髏城の七人 Season 花」の成河天魔王思い出したよね。

演出のシルヴィウ・プルカレーテさんが上演台本も書かれたということですが、結構端折ってあるというかカットされている部分や逆転しているところもあって、戯曲知らない人には少しわかり辛いのではないかと思いましたが、後でパンフ買った友人に聞いたところによると、「戯曲の台詞は一切変えないで約1/3をカットした」と書かれていたそうな。

幕間に「この『リチャード三世』 何だかこわい~」とツイートしたのですが、最前列だったこともあってか、まず蔵之介さんのイッちゃったように見開いた眼がコワかったです。
人間って、あんなに瞬きしないで眼を見開いていられるもんだと感心することしきり。

それから、人殺しのシーンがかなりダイレクトで怖かったなぁ。
バスタブにだんだん水を貯めていくところから始まって、クラレンスが水の中に顔を押し付けられるとか、チェーンソーとかビニール袋とか、王子たちが閉じ込められる箱とか、スプラッタなみ。
もちろん最後の瞬間は客席には見えないようにされていますが、かなりギリギリの段階まで見せられたり音の演出でかえって想像が掻き立てられて本当に怖くて、多分渋面つくって観ていたと思います、私。


佐々木蔵之介さんのリチャードがすばらしいのはもちろんですが、今回は「女優」さんたちにヤラレタ!
手塚とおるさんのアン、今井朋彦さんのマーガレット、植本純米さんのエリザベス、壤晴彦さんのヨーク公夫人・・・よくもまぁ、キャスティングしたものです。
皆さんドレスは着ていますが、特に女性のメイクはしていないし、ヘアスタイルも地のまま・・・つまり植本さんはスキンヘッドだったり。今井さんはベートーヴェンみたいな髪型でしたが、これがまたカッコいいんだ。
なのにちゃんと皆さん女性としての色香が漂い、激しさも切なさも感じられてすばらしい。
今井さんマーガレットが出てくるたびに目と耳が釘づけになったのですが、笑いながら憐れむような、蔑むような感情が見え隠れしてゾクゾク。
リチャードの隣で脚を大きく組み替えるところなんて、どこの「氷の微笑」ですか、と思いました。

そして脚といえばアンの手塚とおるさん。黒タイツはいているとはいえ、どうしてあんなにほっそりした美脚なの?ひと際小顔だし。
リチャードとアンのシーンはとても官能的でした。息づかいも聞こえてきそう。
リチャードに籠絡されて指輪をはめた長い指を誇らしげにかかげうっとり見つめるアンの、まるで少女のような笑顔。
植本純米さん(まだこの名前に慣れない)はさすがにドレスの裾さばきや所作が綺麗で、カーテンコールでは宝塚の娘役方式で膝を折ってご挨拶されていました。

いつもリチャードに付き従って、人殺しも無表情に淡々とこなすケイツビーとラトクリフ、河内大和さんと浜田学さんがクールでカッコよくてコワかったし、リヴァーズ伯より殺し屋?サー・ジェイムズ・ティレルの方がぴったりだった山口馬木也さん、亡霊の場面でリチャードと踊ってキスしていたバッキンガムの山中崇さんも印象的でした。



そういえば、木下順二さん訳のシェイクスピアって読んだことないなぁ のごくらく地獄度 (total 1837 vs 1839 )




posted by スキップ at 22:28| Comment(2) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最前列でのご観劇! いやー、こわい(笑)。
もちろん殺しのシーンもですが、貪り食らうところが、一番いたたまれないというか、まっすぐ見られない気がします。それこそほんとに生々しいからでしょうか。
亡霊のシーンは、重さの中のちょっとした救いでもあった……かな。木下順二訳(知らなかった!)が、よく合ってましたね。
そういえば、東京芸術劇場さんが「映像は収録しているので」と、放映の可能性を呟いてらっしゃいましたね。その暁には、怖いけども見て、?だったあれこれを考えないと、です。

Posted by きびだんご at 2017年11月16日 01:08
♪きびだんござま

ピロティは舞台と客席がとても近い上にど真ん中の席でしたので
本当に役者さんが近くて、こわかったです、いろいろと(^^ゞ

あの貪り喰らうシーンはナマナマしくて不気味でした。
蔵之介さんの凄みを改めて感じた思いです。
もしオンエアされたら、もう少し俯瞰して観られたらいいな
と思いますが、アップの多用で却ってこわかったりして(笑)。
Posted by スキップ at 2017年11月17日 23:02
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