2017年11月03日

時を超え 性を超越し 「オーランドー」


orlando.jpgヴァージニア・ウルフが恋人であった詩人 ヴィタ・サックヴィル ウェストをモデルにして書いたとされる物語。
後にヴィタのご子息が「文学における、最も長く魅力的な恋文」と評しているとか。


KAAT×PARCO 「オーランドー」
原作: ヴァージニア・ウルフ 
翻案・脚本: サラ・ルール 
翻訳: 小田島恒志  小田島則子
演出: 白井晃 
美術: 松井るみ 
音楽: 林正樹 
出演: 多部未華子  小芝風花  戸次重幸  
池田鉄洋  野間口徹  小日向文世

2017年10月22日(日) 12:00pm 兵庫県立芸術文化センター 
阪急中ホール 1階A列センター
(上演時間 2時間15分/休憩 20分)



物語の始まりは16世紀のイングランド。
美しい少年貴族オーランドー(多部未華子)は、エリザベス女王(小日向文世)の寵愛を受け、小姓となって宮殿に入ると他の貴婦人たちにもモテモテです。しかし初めて恋に落ちたロシアの美姫サーシャ(小芝風花)に手ひどく裏切られ、傷心のオーランドーは自ら望んでトルコ大使となります。とある出来事からこん睡状態に陥った彼は7日目に目覚めた時、女性に変身していました。女性となったオーランドーはその後も18世紀、19世紀と時を超えて生き続け・・・。


セピア色に曇った空と雲、打ち寄せる波が映し出されたホリゾントのスクリーン。
無粋な開演前の諸注意アナウンスもブザーもなく、開演時間になるとスクリーンの雲が静かに流れ始め、波の音が聞こえてきて、やがて生演奏のミュージシャンが位置に着くという幕開き。
このオープニングはじめ、いかにも白井晃さんらしい美意識やこだわりが感じられる演出が随所に見られました。


時代が動くたびに、17th Century, 18th Century とスクリーンに世紀が映し出され、その時代を表す音楽が流れます。
桟橋のように細長く低いキャスター付きの台を役者さんたちが自在に動かしての場面転換。
それは宮廷の食卓になったり、オーランドーとサーシャがスケートするテムズ川になったり。
このテムズ川のシーン、2人は並んで足を動かしているだけで、周りのキャストがその台を回して、というシンプルな演出なのに疾走感もあって、よかったな。

舞台いっぱいに広がる大きな樫の木のシルエット、氷河を表す舞台を幾重にも横切るビニール、男女の象徴のように登場するトルソ・・・小道具大道具までとても印象的。
音楽も照明も衣装も、すべてが美しい絵本を見ているような舞台でした。
そういえば、場面ごとに位置が置き換えられていた白い三角の旗は何を表していたのでしょう。


いつものことながら、全く予備知識なしで観たものだから、16世紀から17世紀、18世紀とスクリーンに映し出されるたびに「大河ドラマみたいだな」とぼんやり観ていて、ある瞬間「え?!オーランドー、ずっと歳とってないけど?」と気づく(遅っ!)
そして、この物語はどんなふうに収束するのだろうと思っていたら、今度はオーランドーが女になる、という・・・。

長い眠りから目覚めたオーランドー 多部未華子ちゃんの裸の背中がまぶしいくらいに綺麗でした。
裸にシーツだけを纏い、不安そうに振り返る瞳。揺れる長い髪。

ドレスに身を包み、イギリスへ帰る船の上で「男であった時はなんて自由だったんだろう」と感じるオーランドー。
このあたりがウルフの原作がジェンダー論として研究されている所以かな。
その後も女性として数100年の時代生き抜いていくオーランドー。
その中で、男であっても女であっても、人間の本質的な部分=心は変わりがないことが語られていきます。

やがて愛する人と結婚し、車をかっ飛ばし、少年の頃から挑んでいた故郷の大きな樫の木を称える詩を完成させるオーランドー。
赤いミニのドレスを着てピンヒールを履き、手にはiPadかタブレットらしきものを持ってまっすぐ前を見据えて詩を詠みあげます。

この部分は今回付け加えられたのでしょうか・・・ウルフがこの作品を発表した1928年にはミニスカートもiPadもなかったはずなので。
ここだけ別物のように感じられて、訴えるものもすこしブレちゃった印象で、エンディングとしては少し残念だったかなぁ。


全編ほぼ出ずっぱりのオーランドーは多部未華子さん。
凛とした強い瞳、チャーミングな笑顔、よく通る声、口跡よい台詞。
16歳の美少年に違和感もなければレディになったコケティッシュな魅力もたっぷり。
時代ごとのどの衣装も髪型も似合っていて、よくぞまぁこの役を多部ちゃんにキャスティングしたものだと思います。

多部ちゃん以外の役者さんは何役も兼ねていて、時にはコロスや大道具さん(!)の役目も果たしていました。

小日向文世さんの代表的な役はエリザベス女王。
かなりカリカチュアライズした拵えですが、ちゃんとエリザベス一世に見えちゃう不思議。
オーランドーに首ったけの様子もとても可愛いかったです。
かと思えば荒くれ者のロシアの水夫とか、女になったオーランドーと恋に落ちるシェルマーダインとか(台をぐるぐる回して大変そうだった)、
ラストシーンでオーランドーを舞台端から見つめる男も小日向さん。その背中のカッコよさに惚れ惚れしました。
劇中劇でデフォルメされているとはいえ、小日向さんのあの声で「オセロ」の台詞が聴けたこともご馳走でした(デズデモーナはなーんと野間口さん)。

その野間口さんはじめ池田鉄洋さん、戸次重幸さんの3人は男女問わずめまぐるしくいろんな役を演じながらコロスの役割も、というとても贅沢な布陣。
鉄洋さんなんて、男性時代のオーランドーの婚約者であって、女性になったオーランドーに迫る役だったり・・・オモシロ過ぎる。

サーシャの怜悧で透明感ある美しさが印象的だった小柴風花さんは弱冠20歳でこれが二度目の舞台と後で知ってびっくり。
多部ちゃんや芸達者な男優さんを向こうにまわして引けを取らず、ロシア語やフランス語の台詞もしっかり。




カーテンコールで両隣の小日向さん、野間口さんに促されて何とも頼りなげな声で「ありがとうございました」と多部未華子ちゃん。劇場中にビンビン響くよく通る台詞の声とまるで別人で可愛いかった のごくらく地獄度 (total 1833 vs 1835 )



posted by スキップ at 22:28| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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