2017年10月29日

体の翼を心に返すから 「人間風車」


ningenfusha.jpg「大阪は20年前にこの作品が初演された場所。その大阪で公演できることをとてもうれしく思います」と成河くんがアフタートークでおっしゃった通り、「人間風車」は1997年 後藤ひろひとさんが劇団 遊気舎に書きおろして演出・上演した作品。
その後、2000年、2003年とPARCOプロデュース作品としてG2さんの演出で再演されましたが、これは結末が救いがある内容に改訂されたと聞いています。

今回は、2003年版でサムを演じた河原雅彦さんで「よりダークさを増した」新演出版なのだとか。
オリジナルに近くなったということかな。


PARCO & CUBE 20th present 「人間風車」
作; 後藤ひろひと
演出: 河原雅彦
出演: 成河  ミムラ  加藤諒  矢崎広  松田凌  今野浩喜  菊池明明  
川村紗也  山本圭祐  小松利昌  佐藤真弓  堀部圭亮  良知真次

2017年10月20日(金) 7:00pm 森ノ宮ピロティホール L列下手
(上演時間 2時間25分)



物語: 売れない童話作家の平川(成河)はいつも近所の怪獣公園で子供たち相手に自作の童話を語って聞かせていました。彼のつくる童話は、「三流大学出身より高卒の方がまし」といったひねくれた内容ばかりで親たちは疎ましく思っています。
ある日、サム(加藤諒)と名乗る青年が子供たちと一緒に童話を聞くようになりますが、彼は聞くとすぐにその話を覚えて童話の登場人物になりきる不思議な青年でした。
その頃、平川はテレビタレントのアキラ(ミムラ)と知り合い、恋をするようになって、その作風にも変化が現れます。大きな童話賞に応募しようと自作を親友の童話作家 国尾(良知真次)に読んでもらいます・・・。


遊気舎で上演された時、「恐ろしく悲しく救いのない物語」という謳い文句におそれをなして観に行かなかったというおぼろげな記憶がありまして。

平川が子供たちに語って聞かせる童話が実際に演じられる、どこか牧歌的な前半と、その平川が親友に裏切られ、アキラにも去られて絶望と憎悪の中で狂気の物語をサムに語り、それが現実となって展開していく後半との落差が大きくて、ほんっとっ、怖かったです。
平川が語る物語の中の殺し方・・・どう殺すか、どう死んでいくか、が聞いているだけで耳をふさぎたくなるような残忍さなのに、それが目の前で展開する恐ろしさ。
最初に小杉が殺されて、次は子供が、国尾が、そしてアキラが、と、観ている私たちはどう殺されるかということを先に知らされている訳で、それがリアルに再現されるに至ってさっき聞いた描写がよりリアルに蘇り・・・って、この悪魔のような脚本、後藤ひろひと大王の真骨頂です。


やはり、コワイのは人の心、人間の想像力、ということかな。
自分の作品を横取りされた上に盗作の汚名まで着せられた平川が、国尾や小杉に向ける怒りはもっともだとしても、アキラとはボタンの掛け違いのような誤解だったり、子供たちにも毛頭悪意はなくて子供なりの純粋さで感じたままを口にしただけで、それなのに冷静さを失ってそれらすべてひっくるめて憎悪、報復の対象としてしまい、その心の闇が生み出す「怪物」の恐ろしさ。

それだけに、自分を取り戻した次に語る物語が際立ちます。
世にも残酷な物語と、その後に続く、美しく哀しい物語。
人は皆、心に翼を持っていること、間違って体につけてしまった翼も、心に返すことができると信じられるような物語。

で、ちょっと救われた気分になって終わるかと思えば、ラストあれだもんね。
ほんと、大王、やってくれます。
わざとギャグっぽく入れたネタが結構古くて苦笑いしたり(群馬水産大学にはマジ笑いしたけれど)、多分私がプロレス知らないから面白さがわからないのであろうネタもあって、そんなあれこれ含めて大王だなぁと思いました。


成河くんは、声を張った時のあの甲高い声がやはり些か苦手なのはさておき、本当にうまい。
ちょっと頼りな気で人のいい平川が復讐鬼へと、振り幅広いのにシームレスに転換する感じとか。
中には台詞聴き取り難い役者さんもいましたが、成河くんはどんな時でもきちんと客席に届く台詞。怒りに燃えたり、絶望に沈んだり、悲しみを湛えたりする瞳の表情。
ちなみに、アフタートークでは終始落ち着いた静かな語り口で、あの甲高い声はどこへ?という感じでした。

キャラクター的にはぴったりだと思う加藤諒くんのサム。
まだそのキャラクター、資質でやっているという感じでしょうか。
サムはサム自身でいることは少なくて、いろんな「登場人物」になるのですが、サンマルチノの可愛らしさ、ビルの凶悪さ、そしてダニーの哀しさ、そんな落差がもう少しあればなぁと思いました。


加藤諒くんといえば、アフタートークで大阪の印象を聞かれ、「大阪の人って笑いにうるさいって言うじゃないですかぁ」と言い放って、隣の成河くんが「きびしい、きびしい」と横から客席に聞こえないよう小声で訂正促す場面も。
成河くん、加藤くんのほどけた靴ひもを何も言わずに結んであげたりもしていて、気遣いの人?(笑)
それを見ておもむろに自分の靴ひもほどく良知真次くん、ナイスでした。



休憩なしの2時間25分 全然長く感じなかった・・けど後味はワルイ(笑) のごくらく地獄度 (total 1831 vs 1833 )


posted by スキップ at 22:00| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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