
映画と同じくリー・ホールが脚本、ダルドリー自身が演出するミュージカル。曲はエルトン・ジョン。
2005年にロンドンで開幕し10年以上のロングランを記録して、2008年に始まったブロードウェイ公演も大成功し、世界各地で上演されているミュージカルの日本初演です。
ミュージカル 「ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~」
脚本・歌詞: リー・ホール
演出: スティーヴン・ダルドリー
音楽: エルトン・ジョン
振付: ピーター・ダーリング
翻訳: 常田景子 訳詞:高橋亜子
出演: 山城力 吉田鋼太郎 柚希礼音 久野綾希子
藤岡正明 小林正寛 大貫勇輔 古賀瑠 ほか
2017年10月18日(水) 5:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階18列センター
(上演時間 2時間55分/休憩 20分)
物語の舞台は1984年。イングランド北部・ダーラムの炭鉱町エヴァリントン。
サッチャー政権による炭鉱の閉山計画に反対する労働者たちがストライキを続けるこの町で暮らすビリーは、母を幼い頃に亡くし、父、兄、祖母の3人暮らし。
父に言われて通っているボクシングジムで偶然、バレエと出会ったビリーは踊る喜びに目覚め、彼の才能を見出したウィルキンソン先生の勧めでロイヤルバレエスクールを目指します。父のジャッキーはじめ周囲は大反対ですが・・・。
映画も、もちろんオリジナルのミュージカルも未見。
7月19日から始まった東京公演の劇評や感想もほとんど目をそらして来ましたのでほぼ白紙の状態で観ました。
辛い現実の中、夢を追い続けたいともがく少年 ビリーに開かれる未来。
その彼の背中を押す周囲の大人たちにとっては、決して現実はバラ色ではありません。
ビリーの父も兄もストライキの失敗でおそらく失業することになり、ビリーをバレエの道に導いたウィルキンソン先生自身はバレエダンサーとして生きることができなかった挫折を引きずっています。
未来がないとわかっていながら闘っている人々の閉塞感。
望んでいた姿に手が届かなかった人々の諦念。
そんな彼らにとってビリーは「希望」であり「未来」そのもの。
ビリーの成長物語でありながら、ただのサクセスストーリーに終始せず、閉塞感や苦さにも満ちていて、だけど後味爽やか。
薄煙りの暗闇の中に、光るビリーのヘルメットのライト。
その光はまるで絶望の町に射し込む一筋の希望のよう。
それに呼応するように炭鉱夫たちののヘルメットのライトが輝き、「さぁ、行け!」とビリーの行く先を照らし出し、そして彼らは地下へ降りて行きます。
トランク一つ抱えて夢をかなえるための未来へと旅立つビリーに心から拍手を贈り応援したいと思えるラスト。
ビリーの姿を通して、子どもの頃の「夢をかなえたい」という気持ちを思い出させてくれるようでもあり。
すばらしかったです。
一幕中盤の「Solidarity 団結を永遠に」。
バレエ教室を間に挟んで、ストライキする炭鉱夫たちと、警官隊男がそれぞれ舞台上手下手に一列に並んで対峙し、彼らの闘争と、バレエ教室でビリーが少しずつ才能を開花させていくレッスンの様子が交錯するシーン。
迫力ある歌とともに、とても劇的でシビれる演出です。
この場面のラスト ウィルキンソン先生の指導のもと、ビリーがとても綺麗なピルエットを見せた時、何とも言えない感情が胸に込み上げてきて涙があふれました。
それからもいろいろなシーンや台詞で心揺さぶられ、何度泣いたことか。
亡き母が遺した手紙をウィルキンソン先生に「読んでいいよ」と渡し、彼女が歌で手紙を読み始めると、そこに重なるビリーと母の声。
成長する姿
笑顔も見れなかった
なきじゃくる顔も
駄々こねて暴れて わめく姿も
でも どうか ビリー
わかっていて ずっとそばにいたことを
いつも ビリー
あなたのすべてを誇りに思ってる
「特別な女性だったのね」と言うウィルキンソン先生に、「ううん、ただの僕の母ちゃん」・・・(涙)
この後の 「We were Born to Boogie 踊るために生まれきた」 は楽しかったな。
縄跳びでタップとか、やっている3人は大変そうでしたが。最後倒れ込んでしまうのもワカル。
一幕終わり 「Angry Dance 怒りのダンス」
ロイヤルバレエスクールのオーディションにいけなくなったビリーがどこにもぶつけられない憤りをダンスで表現するシーン。
あの場所でタップを?という驚きもさることながら、母を亡くし、ストライキでぴりぴりした家庭の中であまり自己主張や感情表現をしないように見えたビリーが一気に感情を迸らせるダンスにまた涙。
ここのダンスに「白鳥の湖」のメロディが入るのですが、「白鳥の湖」といえば、
二幕の「Swan Lake Pas de Deux 白鳥の湖 パ・ド・ドゥ」
ビリーが未来の自分と踊る白鳥の湖。
ビリーがウィルキンソン先生に教わったように椅子をくるくる回すと、同じ洋服のオールダー・ビリーが現れて、同じようにくるくると椅子を回しながら踊り始めます。
シンクロする2人のダンスの美しさ。
少年ビリーが空高くフライングをしてオールダービリーがそれをアシストする夢のようなシーンにまた涙。
一つひとつのシーンや歌やダンスが、どれも愛おしくて、何度でも観たくなる気持ち、わかります。

柚希礼音さんがこの作品に出演しなければおそらく観ることはなかったであろうことを思うと、ちえちゃんに感謝の気持ちでいっぱい。
子供もいるバレエの先生役?と最初は驚きましたが、口は悪いけれど愛情深く、ビリーの才能を見抜く目を持っていて、心に挫折を抱えながらも華やかさを失っていない魅力にあふれたウィルキンソン先生。
柚希さんが退団後に演じた役の中でもひときわ印象に残る大好きな役になりました。
カーテンコールの輝くようなチュチュ姿も綺麗で可愛かったな

ビリー役はオーディションで選ばれた5人の中からこの日は山城力くん。
ビリー役がやりたくてシンガポールから1人でオーディション受けに来た11歳。
昨年末、合格発表では4人の中に入らなかったものの「今後の成長次第ではできる可能性がある」というスタッフの判断から4人のビリーたちと一緒にレッスンを受け、後からビリーの仲間入りしたドリームボーイです。
他のビリーを観ていないのですが、バレエ、タップ、器械体操、コンテンポラリーダンス、演技、歌・・・何の経験もなかった子が1年ほどのレッスンでこんなにできるようになるなんて。
バレエやコンテンポラリーダンスは経験者の子もいますが、タップは全員初めてだったとか。
いやもう、すごいんだから、タップ。ほんと、一度観て、と声を大にして言いたい。
少年たちのポテンシャル、計り知れない。
できる可能性を持つ子、育つ子を選んだということ、それは踊りを見なくてもわかるということ、そのままビリーのロイヤルバレエスクールのオーディションシーンにも繋がります。
今日は水曜日で宝塚歌劇休演日だったので、客席には星組や月組のジェンヌさんがたくさん。
梅芸へ向かう途中でも何人かお見かけしてテンションあがりました。
星組の某スターさん、終演後涙をぬぐいながら通路歩いていらっしゃってますます好感。
千秋楽のチケット持っているけどそれまで我慢できそうにないと、一幕終わった時点でリピーターチケット買いに走るも予定が合わずすごすごと退散 のごくらく地獄度




「ビリー・エリオット」、本当に素晴らしい舞台でしたね。
私も見ながら何度泣いたことか!
スキップさんのレポを読ませていただいて、また泣いてしまいました(^^;)
山城くんと柚希さんは残念ながら観ることができなかったので、
こちらで観た気分にさせていただきましたv
ありがとうございました。
なかなか再演も難しい舞台とは思いますが、またぜひ新しいビリーを発掘して欲しいですね。
その時は大阪まで行ってしまうかもしれません(笑)。
「いい」とは聞いていたのですが、こんなに胸が震える作品だなんて。
実は私も自分でブログ書きながら何度も泣きそうになりました(^^ゞ
5人のビリー全員観たいし、島田歌穂さんのウィルキンソン先生も
益岡さんのお父さんも、と思うのですが、時間もあまりなくて
あとは千秋楽に観るだけなのが悔しいです。
未来和樹くんの降板で、ビリー役は歌やダンス、演技といったものに
高いクオリティが要求されるばかりでなく、年齢という大きな壁も
立ちはだかっているのだなぁと改めて感じました。
再演はなかなかキビしそうですが、もし再演されたら、その時は最優先で
スケジュール組みたいと思いますし、恭穂さんともたっぷり語り合いたいです!