2017年09月28日

秀山祭九月大歌舞伎 夜の部


秀山祭九月大歌舞伎 夜の部はいかにも”秀山祭”な義太夫狂言と吉右衛門さんの手による復活狂言の彩り豊かな二本です。


秀山祭九月大歌舞伎 夜の部
2017年9月21日(木) 4:30pm 歌舞伎座 1階1列下手
(上演時間 4時間26分/幕間 30分・10分)



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一、ひらかな盛衰記  逆櫓
出演: 中村吉右衛門  中村歌六  中村雀右衛門  中村又五郎  
中村錦之助  中村東蔵  市川左團次 ほか


漁師権四郎(歌六)の娘およし(東蔵)の入り婿となって「逆櫓」という技術を習得し船頭に身をやつして暮らす松右衛門(中村吉右衛門)。実は木曽義仲の遺臣樋口次郎兼光で、義仲を滅ぼした源義経に一矢報いようとしていました。およしの亡くなった先夫との間の息子槌松を取り違えた者だというお筆(雀右衛門)という女がやってきます。およしが育てている子は木曽義仲の遺児駒若丸だったのです・・・。


歌舞伎でも文楽でも観たことのある演目ですが、確か以前秀山祭でも観たはず・・と検索してみたら、2008年9月に観ていました。もう9年も前なのね。

とても、とてもよかったです。
今まで「逆櫓」の何を観ていたんだろう、と自分にツッコミたいくらい。


観劇を重ねて理解が深まること、観た時に興味をもったことを書籍などで後から追体験してきたこと、演じる役者さんの違い、同じ役者さんでも年齢の積み重ね、そして自分がそれを観る時の心情・・・諸々の要因が複合されて、同じ演目でも観る時によって印象が違っているのも舞台のおもしろさ。特に歌舞伎の場合は、演目やその背景へ自分の理解が以前はかなり表面的だったなぁとしみじみ。私がこのブログによく書く「昔はものを思はざりけり」というヤツです。

花道を出てきただけで大きな人物だということがわかる吉右衛門さんの松右衛門。
町人である船頭松右衛門から武将の樋口次郎への変化の鮮やかさ。
「権四郎、頭が高い」という台詞の圧倒的な迫力。
一つひとつ決まる見得の大きさ、美しさ。
昼の部の幡随長兵衛もそうでしたが、まるで吉右衛門さんのための役のよう。

樋口の主君への思いに隠れたもう一つの物語-権四郎が孫を、およしがわが子を思う心にも打たれました。
特に歌六さんの気骨ある権四郎。
取り違えられた孫が帰ってくると喜ぶ嬉々とした表情。一転してその死を知らされた時の悲嘆、そして怒り・・・一つひとつが胸に迫ってきて、権四郎の心情に寄り添うことができました。
「あなたの孫は死んだけど、代わりに育ててくれた若君は返して」って、何てデリカシーのない勝手な言い分なんだろう、と雀右衛門さんが憎たらしく見えましたもの。


最前列でしたので、ラストの樋口次郎と捕り方の船頭たちとの立ち廻りも見応えたっぷり。
名題下さんたちが目の前でトンボ切る迫力ったら。




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二、再桜遇清水 (さいかいざくらみそめのきよみず)
  桜にまよふ破戒清玄
    新清水花見の場/雪の下桂庵宿の場/六浦庵室の場
「遇曽我中村」より
作: 松貫四
監修: 中村吉右衛門
補綴: 戸部和久
出演: 市川染五郎  中村雀右衛門  中村歌昇  中村種之助  
中村米吉  中村児太郎  中村錦之助  中村魁春 ほか


北条時政の娘桜姫(雀右衛門)千葉之助清玄(きよはる/錦之助)は恋仲ですが、桜姫に思いを寄せる荏柄平太胤長(宗之助)は桜姫が清玄に宛てた恋文を拾い、庵室にいた二人を不義の罪で引っ立てます。ところが、桜姫の腰元山路(魁春)が不義の相手は寺僧清玄(せいげん/染五郎)であると強弁し、清玄(せいげん)は驚きながらも人助けと自分が不義の相手だと名乗り、破戒僧の汚名を着せられ寺を去ります。新清水の舞台から身を投げた桜姫を助けた清玄はただならぬ感情を抱くようになり・・・。

「清玄桜姫物」をもとに吉右衛門さんが32年前に四国こんぴら歌舞伎のために作(松貫四名)、主演された作品。
コメディのちホラー。
これ、本当に吉右衛門さんが書いたの?と思わないでもありませんが、おもしろかったです。
破壊とか衆道とか妄念とか執着とか、清玄桜姫物の代表的な演目「桜姫東文章」の要素が散りばめられていました。
二役早替りあり連理引きあり最後は四谷怪談風でもあり。

清水法師清玄(染五郎)が桜姫への執着からどんどん堕ちていくところが主題なのですが、周りも豪華。
清玄(きよはる)家の奴 浪平(染五郎)、桜姫家の奴 磯平(歌昇)、荏柄家の奴 灘平(種之助)と、善悪とりまぜて三奴は男前揃いだし、清玄(せいげん)に献身的に使えるお弟子さん二人(米吉・児太郎)は美形だし(そのうち一人は清玄の衆道の餌食になるし)、と若手の活躍でワタクシ的にかなり眼福でございました。


染五郎さんの清玄は品がよくていかにも人が好さそうな高僧も、破戒僧となってどんどん人が変わっていく堕落っぷりも、その落差含めてどちらもよかったです。
登場した時のあんなに綺麗で品のいいお坊さん、なかなかいませんよね。
多分仏門一筋で高潔な人生を送ってきたので、恋というものに免疫がなく、一途に突っ走ってしまった結果が破戒僧ということでしょう。
破戒したとはいえ女犯は桜姫だけと決めているからお弟子さんに衆道の相手をさせるとか、どんだけ純粋なんだか←
歌舞伎のいろいろな要素やパロディが織り込まれている演目ですが、染五郎さんの「五十両~」を聞くことができたのはご馳走でした。
浪平は打って変わってイナセな男っぷり。

桜姫は「東文章」とは違ってこの物語の中では恋に一途ではあるけれどかなり受け身でいつもヨヨと泣いているようなお姫様でした。
雀右衛門さんに不満はありませんが、菊之助くんとか七之助くんあたりの若い綺麗どころだと清玄はじめ周りの男たちがあそこまで執着する説得力があったかなぁ、と思いました。

山路の魁春さん、よかったです。
いかにもしっかり者の忠臣で老練な感じもあって。
二幕で染五郎さん奴浪平と結婚していたのには少し驚きましたが。


いろいろツッコミどころはありつつも最後まで楽しく拝見。
たくさんの役があるし、娯楽的な要素も多いので浅草歌舞伎あたりでもできそう(吉右衛門さんがお許しになれば)。



やっぱリかぶりつきは何かと発見があって楽しい のごくらく度 (total 1816 vs 1823 )


posted by スキップ at 23:46| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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