2017年08月13日

どうやって彼を見つけよう 「OTHER DESERT CITIES」


otherdesert.jpg寺島しのぶさん、麻実れいさん、佐藤オリエさんの共演というだけで観たくなる舞台。
そこに中嶋しゅうさんが加わって・・・と楽しみにしていたのに、あんなことになるなんて。


「OTHER DESERT CITIES」
作: ジョン・ロビン・ベイツ 
台本: 早船歌江子 
演出: 熊林弘高 
美術: 島次郎
出演: 寺島しのぶ  中村蒼  麻実れい  斎藤歩  佐藤オリエ

2017年7月31日(月) 1:00pm シアター・ドラマシティ 1列下手
(上演時間 2時間30分)



物語: 2004年のクリスマスイブ。カリフォルニア州パームスプリングスのワイエス家に娘のブルック(寺島しのぶ)が帰郷し、久しぶりに出版する予定の自らの作品について、「これは小説じゃない。回想録なの」と宣言します。
ブルックは、敬愛する兄ヘンリーが自殺した原因は両親(斎藤歩・ 佐藤オリエ)にあると考え、それを告発しようとしているのでした。それを阻止しようとする両親と激しく対立するブルック。弟トリップ(中村蒼)、アル中の叔母シルダ(麻実れい・・こんな役多いよね~。そして上手い!)を巻き込みながら、やがて語られる真実は・・・。


本箱だったりテーブルや暖炉など見立てられた白い箱がいくつか積み重ねられたり並べられたりするだけのシンプルでスタイリッシュな舞台装置。
客席最前列の真ん中の席が空席になっていて、そこにブルックが、物語の終盤にはトリップが座り、舞台を見つめるという演出。
ブルックの寺島しのぶさんが時折舞台下手に立ち、また客席で台本のト書きを読んだりも。

2004年といえばイラク戦争真っ最中で、9.11(2001年)の記憶も新しく、父親のライマンは共和党の実力者という設定。
政治的な台詞も数多く出てきますが、基本的には病んだ家族の再生の物語。
しかも結末はちょっと寓話っぽい・・と感じたのは私だけかな。映画「ゴールデンスランバー」が心に浮かびました。


「兄を見捨てた」とひたすら両親を責めるブルック。
隠し続けてきた真実を言うことができない両親。
無関心なようでいて双方に温かい目を向けるトリップ。
ブルックの心に寄り添う風情で、ヘンリーが助けを求めて電話をかけてきたときに泥酔していて出られなかったことは隠していたシルダ。

それらのすべてが、「両親がヘンリーを自殺に見せかけて逃がした」という真実ひとつで溶解してしまうのは、やはり家族のファンタジーだなぁと思いました。
家族って温かいばかりではなく、家族だから遠慮なく感情をぶつけ合い、亀裂も入ってバラバラにもなるけれど、それでもどこかで繋がっていて、一つのきっかけで元に戻ることができる・・・それが他人とは違うところ、と見せられた思いです。


3人の女優さんはもちろんすばらしかったですが、弟のトリップを演じた中村蒼くんを失礼ながら見直しました。
「真田十勇士」(2014年版)に出てた子だよね~くらいの印象しかなかったのですが、家族の中の潤滑油的な役割で、温厚で誰にも優しく接し、風に逆らうことなく調子よく生きているように見えて、屈折もジレンマも抱えているというところがちゃんと感じられるトリップ。どことなく色っぽさあって、ステキでした。

すべてが明らかになり、ブルックの寺島しのぶさんが舞台上でナマ着替えして、シアトルでの彼女の講演会へと場面が変わります。
ブルックのスピーチを客席で見守るトリップ。
シアトルは、二人の兄 ヘンリーが自殺した場所・・・つまり、両親がヘンリーを逃がした場所です。
背筋を伸ばし、凛とした表情のブルックが、「どうやって彼を見つけよう」と言った時、聴いている人たちの中でその意味がわかったのは多分トリップただ一人だけだったのでしょう。


東京公演初日(7月6日)に舞台上で倒れ帰らぬ人となられたライマン役の中嶋しゅうさん。
千穐楽のこの日、急遽代役を勤められた斎藤歩さんはもとより、共演の役者さんたち、スタッフ、関係者の皆さまがどれほどのものを乗り越えてこの舞台をつくりあげ、この日を迎えられたのだろうと思うと胸がいっぱいでしあが、寺島しのぶさんはじめ皆さんのやりきった感あふれる笑顔に救われる思いでした。



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ロビーには中嶋しゅうさんへの追悼のお花が
改めまして、心よりご冥福をお祈り申しあげます。


posted by スキップ at 22:44| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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