2017年08月10日

松竹座 七月大歌舞伎 昼の部


shochikuza201707.jpg七月の松竹座は昼夜ともどっしりした戯曲と舞踊が1本ずつという組合せ。
どちらも2回ずつ拝見。とても見応えありました。

大阪松竹座新築開場二十周年記念
関西・歌舞伎を愛する会 第二十六回
七月大歌舞伎 昼の部

2017年7月7日(金) 11:00am 松竹座 1階1列下手/
7月27日(木) 11:00am 1階3列下手
(上演時間 3時間40分)



一、夏祭浪花鑑
   序  幕  住吉鳥居前の場
   二幕目  難波三婦内の場
   大  詰  長町裏の場
作: 並木千柳  三好松洛
出演: 市川染五郎  片岡孝太郎  尾上松也  中村萬太郎  中村壱太郎  
嵐橘三郎  坂東竹三郎  中村鴈治郎  中村時蔵 ほか

      

「夏祭浪花鑑」を初めて観たのは2002年11月 扇町公園の平成中村座です。
団七はもちろん、勘九郎時代の勘三郎さん。
あの時、開け放たれた舞台から公園の緑の中へ駈け出して行く団七と徳兵衛、だんじり囃子とともになだれ込んで来る御神輿と祭連中にとにかく圧倒されて、以来、大好きで大切な演目です。
その団七を染五郎さんが初役で、しかも大阪で勤められる、こんなうれしいことはありません。

これまで、勘三郎さんを筆頭に、 勘九郎(勘太郎時代)さん、藤十郎さん(襲名披露興行で仁左衛門さんの徳兵衛、お辰は菊五郎さんと超豪華)、吉右衛門さん、愛之助さん、海老蔵さんの団七を観てきました。
今回染五郎さんは団七をお父様の幸四郎さんに教えていただいたということで、「高麗屋型」の夏祭ということになりましょうか。

とはいうものの、先日、シネマ歌舞伎「阿弖流為」の舞台挨拶でもおっしゃっていた通り、幸四郎さんの団七は十七世勘三郎さんから習われたもので、染五郎さんご自身も勘三郎さんのコクーン歌舞伎に磯之丞で出演されたこともあり、「お客様にも『中村屋の夏祭良かったよね』と思い出していただけるような団七にしたいと思っています」ということでしたので、中村屋さんテイストも感じられる夏祭を目指されたのではないでしょうか。
大好きな役、大好きな演目である分、染五郎さんがどのように演じてくださるか、楽しみでもあり、同時に不安もちょっぴり感じていました。


結論からいうと、染五郎さんの団七、とてもよかったです。


床屋から登場した時の目の覚めるような男前っぷり。
徳兵衛との見得と男の意地の張り合い。
朱色の団七格子の浴衣で右足を一歩前に出して低く決まる姿。
長町裏の闇の中に浮かび上がる刺青。
・・・そのどれもが錦絵のように美しく、匂い立つような色気があって、どこか刹那的な哀しさを漂わせていて。

私は関西弁のイントネーションには敏感な方だと思っていますが、染五郎さんの浪花言葉は、完璧とは言えないまでも聴いていてストレスがありません(これは以前「女殺油地獄」を観た時にも感じました)。
もちろん“音”の面ばかりでなく、浪花言葉のやわらかい響き、その中に厳然と存在する“上方の心意気”が感じられる団七だったと思います。

ただ、「長町裏」の演出についてはいささか意義あり。
「ええ~っ!だんじり囃子ないの?!」という感じ。
これ、関西の歌舞伎ファン、みんな思ったのではないかしら。これが高麗屋型?
なんとなく静か~な調子の祭囃子だけが聞こえてもねぇ。
あの耳触りなくらいに響き続けるだんじり囃子と鉦の音がまるで追い立たてるように、うだるような暑さとそこへ向けて暴発していく団七の狂気に、より拍車をかけると思うのですが。
忠義に絡んでやむにやまれず舅殺しに走ってしまう団七の心情を染五郎さんが熱演されていただけに、あの演出は少し残念だったなぁ。

拝見するのはもう何度目かになる橘三郎さんの義平次が相変わらずとてもいいです。
スキップ的 best 義平次。強欲ぶりや性根の悪さをそこだけ取り立ててデフォルメし過ぎず、憎たらしいのだけどそこには義平次なりの生き様も言い分もある、といった趣きです。
駕籠を帰した後、団七にお金をねだる感じもとても好き。

いかにも気骨ある浪花の侠客といった風情の鴈治郎さんの三婦、その女房らしく腹が据わって、でも焼きもちもやく可愛い竹三郎さんのおつぎは盤石。
松也くんの徳兵衛、萬太郎くんの磯之丞、壱太郎くんの琴浦と、まわりの若い役者さんたちも奮闘。
特に萬太郎くんの磯之丞は、わりとポーカーフェイスなのだけど、あんなふにゃふにゃした感じの女好きの二枚目もできるんだと意外な発見でした。

お辰は時蔵さん。
結構さらりと演じていらっしゃる印象でしたが、さり気ない中に女伊達の風情も芯の強さも見せてカッコいいお辰でした。


言いたいことは多少ありつつもとても楽しめた「夏祭浪花鑑」。
「悪い人でも舅は親。親父っどん、許してくだんせ」という染団七の声の哀しい響き、忘れられません。



二、二人道成寺
出演: 中村時蔵  片岡孝太郎


「京鹿子娘道成寺」を二人の女方で踊る舞踊。
二人で踊る道成寺といえば、何と言っても坂東玉三郎さん、尾上菊之助さんの「京鹿子娘二人道成寺」ですが、あれは白拍子花子を二人で分けて踊るもので、こちらの白拍子は花子と桜子という別人(?)。初見でした。

冠の舞や手踊り花笠、と道成寺の踊りの要素はきちんと入っていて、二人で踊るといえどもどちらかといえば花子(時蔵)中心で一人で踊る時間が長く、恋の手習いも時蔵花子単独でした。

踊りのことはよくわからないのでどちらがどうとはうまく言えませんが、二人の踊りのタイプが違うことだけはわかりました(笑)。
途中、二人揃って引き抜きが2回あるのですが、7月7日に観た時、後見さんと準備終わって正面向いた孝太郎さんの上の着物の襟合わせあたりがグダグダで手で押さえていらしたので(時蔵さんは涼しい顔してキリリ)、「大丈夫かいな。まだ初日開いて間もないから?」と思っていたら、千穐楽の27日にも同じ状態でした



image1 (6).jpg  image2.jpg

道成寺といえば手ぬぐい撒き。
時蔵さん花子が後ろ向きにパパッと手ぬぐい投げた後、所化さんたちがワラワラ出てきたところで、7月7日は最前列だったので目の前に立った松十郎さんに思いっきり笑顔向けたらポイと私めがけて投げてくださってダイレクトキャッチ。
松十郎さんは普通の結び方の他によく飛ぶよう五角形にしたものも何本かお持ちで、三階にまでお得意の遠投されていました。

千穐楽は千次郎さんが投げてくださった手ぬぐいが私のひざの上にぽとり。
ひと公演で二本も手ぬぐいいただいたの初めてで、テンションあがった七月大歌舞伎 昼の部でございました。




終わりよければすべてよし のごくらく度 (total 1257 vs 1261 )


posted by スキップ at 19:38| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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