2017年04月27日

楽しく凛々しく賑々しく 「祝祭大狂言会 2017」


shukusai2017.jpg新装なったフェスティバルホールのオープニングシリーズとして2013年に上演された「祝祭大狂言会」。
2015年に第2回が上演されて今回が3回目。
中之島フェスティバルタワーウエストが完成して、ツインタワーのフェスティバルシティ オープン記念の祝祭です。


フェスティバルシティ・オープン記念
祝祭大狂言会 2017
2017年4月22日(土) 3:00pm フェスティバルホール 
1階1列センター  (上演時間 2時間10分)



解説: 野村萬斎

黒紋付袴の正装の野村萬斎さん。
いつものように「こんにちは」で始まる解説トーク。
「こんにちは」と応える客席は私にはそれほど勢いよく聞こえませんでしたが、萬斎さんは「元気ですね」とおっしゃって1回でパス。

三方に橋掛かりのある能舞台について、フェスティバルホールのような大きな劇場の場合、いつもの能舞台だと舞台が片方に寄ってしまってせっかくの広い舞台に死角もできてしまう、ということで、「世田谷パブリックシアターで僕が開発した舞台です」とドヤ顔で胸を張っていらっしゃいました。

演目解説は相変わらずユーモアたっぷりでわかりやすく。
3曲とも初めて観る、聴く演目ばかりでしたので、この解説はとても助かります。

狂言は同じ曲でも家(流派)によって少しずつ違っていて、この後やる「千鳥」は茂山さんの大蔵流の代表的な演目。
僕たちの和泉流でもやっていますが、茂山家のがおもしろくて「狂言 千鳥」と検索すると「大蔵流」と出てくる、チクショウ とおっしゃっていました。


「奈須与市語」は萬斎さんの一人語り。
「千鳥」もそうですが、「奈須与市語」も、今では簡単に動画を見てこんなものか、とわかるところを当時は伝える方も語りや身振り手振りで相手の脳裏に映像を浮かばせないといけなかったし、それを聴く方も自分の想像力を働かせなくてはならなかった、とおっしゃっていて、「そうそう、観る方のイマジネーション大事!」と心で大きくうなづいたのでした。

「こんなにオチャラケてしゃべりませんよ。皆さん、大丈夫ですか。もう意識失ってる人いるけど・・」(笑)
「皆さんは舞台の僕たちを見ていらっしゃるけど、僕たちも皆さんのこと見てるんです」と。

「『唐人相撲』も家によって様々で、唐音(とういん)という架空の中国語を使うのですが、ちゃんと完璧な中国語でやる家もあって・・・何の意味があるのか・・・いや、批判ではないですよ、批判では」←毒舌炸裂(笑)。
日本の相撲取りが・・僕がやるんですけどね・・とおっしゃって、「主人公は唐人です。彼らがどんなふうに戦って負けるのかが見どころです」と。
「いつも弱者の目線で、人間の弱さを笑い飛ばして生きる糧にするのが狂言」とおっしゃっていた言葉が印象的でした。


shukusai3.jpg

1階客席の最後列から見た能舞台はこんな感じ。


「千鳥」
出演: 茂山千作  茂山千五郎  茂山茂


来客があるため支払いが滞っている酒屋(千作)からどうにかして酒を手に入れてくるよう主人(茂)に命じられた太郎冠者(千五郎)は・・・。

流鏑馬や津島祭の山鉾の話をして気を引きながら太郎冠者が何とか酒を持ち帰ろうとするところを酒屋が気づいて「これこれ」と酒樽を取り返す、というのが何回か繰り返されるのですが、このやり取りが何ともおもしろくてよく笑いました。
結局最後には太郎冠者にまんまとやられてしまうものの、千作さん酒屋が太郎冠者の話を聴くのがとても楽しそうで、時として一筋縄ではいかない茶目っ気も見せていて何ともチャーミング。
「ちりちりや~ ちりちりや~」も耳に残りました。


「奈須与市語」
出演: 野村萬斎


屋島での源平の合戦で、那須与一が遠く海に浮かぶ船上の扇を射た逸話を仕方話にしたもの。
語り・奈那須与市・源義経・後藤兵衛実基などを一人で語り分けます。

いやこれ、すごかったです、萬斎さん。
解説で「4人以上を1人でやる」とおっしゃっていましたが、それ知らなくても全員くっきりわかったもん。

語りの部分なんて、船上で波に煽られて浮きつ沈みつ揺れる扇、その扇が与市の矢に射られて夕陽の中をひらひらと波間に舞い落ちていく様など、情景が目に浮かぶよう。
義経と与市と後藤実基、少し位置を変えるだけで瞬時に別人になります、それも声色だけで。

与市が矢を射る時にダンダンダンダンダンッと袴を引きずりながら膝だけで斜め前へ進み出る所作の迫力・・・膝行(しっこう)というそうです。

フェスティバルホール満員の2,700人の観衆がただ一人、萬斎さんの声だけを聴き、萬斎さんの一挙手一投足だけを見つめているような凝縮された時間。
本当はこんな大きなホールでやるような曲ではないのかもしれないのですが、これってすごい挑戦であり、また役者冥利にもつきることではないかしら。
「すっくと立っただけ、一声発しただけで、皆が集中するのが役者としての基本だと思う」とインタビューで語っていらした萬斎さん。
まさしくそういう役者であることを自ら証明してくださった形です。

余談ですが、中学生のころ、国語の授業で「平家物語」をやって「自分の好きな場面を絵に描く」という課題が出された時、私は「那須与一が矢を射る前に馬上で目を閉じて『南無八幡大菩薩』と祈っているところ」を描いて先生に大そう褒められ、教室に貼り出されたことを思い出しました。


「能楽囃子」
 笛:一噌隆之  小鼓:成田達志  大鼓:守家由訓  太鼓:中田弘美


こうして能楽囃子だけを聴く機会はそんなにある訳ではないので、興味シンシンで楽しく拝聴しました。
それも目の前にズラリ4人並んで。

とはいうものの、邦楽や能楽にはとんと疎いので、最初に「ピ~ッ」と第一声を出す笛の一噌さんは緊張するだろうな、だとか、小鼓と大鼓は全然音が違うな、とか、能楽だから三味線ないのね、といった感想しか出てこない自分が情けないのですが。


「唐人相撲」
出演: 野村万作  野村萬斎  石田幸雄  深田博治  高野和憲  月崎晴夫  
     万作の会一門 ほか


唐に滞在していた日本の相撲取り(萬斎)が皇帝(万作)に帰国を願い出たところ、名残にもう一度相撲を見せてほしいと所望され、通辞(石田幸雄)の行司で臣下の者たちが次々に相撲取りに挑みますが・・・。

現在上演されている狂言の中で最も人数を要する演目だとか。
なるほど、こんなにたくさんの人が出てくる狂言は初めて観ました。
中国のお話なので衣装も色鮮やかで可愛いし、アクロバティックな相撲の対戦、そして萬斎さんが解説でもおっしゃっていた「唐音」もおもしろくて、祝祭感にあふれたとても楽しい一曲でした。

冒頭、いかにもその時代の中国といった帽子や衣装をつけた唐人たちが一列になって歩く姿がホリゾントのスクリーンにシルエットで映し出されて、それがいかにも中国の影絵で、この時点ですでにかなり楽しい。
その中の一人だけ、佇まい、歩の進め方が何だか他の人と違う・・と思っていたら、その人の影だけがどんどん大きくなって、やがてスクリーン一杯になったところでご本人登場、というのが、いかにも皇帝の偉大さ、その権力の大きさを象徴していて秀逸な演出(演出は野村萬斎さん)。

次々と相撲取りと対戦する唐人たち。
手を変え品を変え、という感じで、いろんなフォーメーションやアクロバティックな技を繰り出すのですが歯が立たず。
これ、一人で受け止めて勝ち続ける萬斎さんも大変そうです。
唐人の中には子供さんも4人。後で聞いたところによると、狂言方ではない方たちもたくさんいらしたそうです。

皇帝や通辞、唐人たちが話す唐音も楽しかったな。
ときどき怪し気な関西弁や「ハルカス」など大阪の固有名詞が入っていて関西バージョンだった模様。

あまりにも負け続けるので、つい唐人たちを応援したくなって、笑いながらも拍手する私たち。
多分このあたり、萬斎さんの思うツボなのでしょう。
ついには通辞に促されて、客席の私たちも一緒になって「ほぉーちゃー ほおぉーちゃ~」と声を出して応援。
まるでお祭りのような盛り上がりで、このあたりの高揚感もとても楽しかったです。

最後は、皇帝も参戦してケリがつき(?)、帰国の許可が出て日本に帰る相撲取りを見送る唐人たち。
ここもシルエットで、夕陽の温かいオレンジ色の光に包まれて見送る唐人たちの影がやさしく、そしてちょっぴり切なさも漂うエンデイング。

いわゆるオーソドックスな「狂言」とは少し違っているのかもしれませんが、今回のような大ホール向きで、「フェスティバルシティ オープン記念」と銘打った公演にぴったりの祝祭狂言。
観ることができて本当によかったです。


趣きの異なった3曲-フライヤーに書かれていたように「楽しく凛々しく賑々しい」大狂言フェスティバルでした。
狂言って、本当にいろんな顔があるんだなぁと。
そして改めて「萬斎さん好きだぁ」と思いました。



4回目も5回目もありますように。そしていつか「MANSAIボレロ」も観られますように のごくらく地獄度 (total 1742 vs 1744 )


posted by スキップ at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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