2017年02月17日

ポップでサイケでロマンチック 「お気に召すまま」


asyoulikeit.jpgブロードウェイミュージカルの演出や映画監督として活躍するマイケル・メイヤーさんの日本初演出作品。
シアタークリエ開場10周年記念として挑むのはシェイクスピア。

「お気に召すまま」は数あるシェイクスピアの名作の中でも好きな戯曲の一つ。
これまでにも何度か観ていますが(こちらこちら)、日本人以外の演出家で観るのは初めてでした。

舞台は1967年のアメリカ。
宮廷はワシントンD.C.の上流社会(政界?)に
アーデンの森は当時ヒッピーの聖地と言われたサンフランシスコのヘイト・アシュベリーに、置き換えられています。

「それってどーなん?」と思いつつも、シェイクスピア好きとしては興味シンシン。
周りを取り巻く共演陣も小野武彦さん、橋本さとしさん、横田栄司さんと豪華。
柚希礼音さん主演でなくても観に行っていたと思います。


「お気に召すまま」
作: ウィリアム・シェイクスピア
演出: マイケル・メイヤー
音楽: トム・キャット
翻訳: 小田島雄志
美術: 松井るみ
出演: 柚希礼音  ジュリアン  橋本さとし  横田栄司  伊礼彼方  芋洗坂係長  
平野良  古畑新之  平田薫  入絵加奈子  青山達三  マイコ  小野武彦 ほか

2017年2月8日(水) 6:30pm シアター・ドラマシティ 17列下手/
2月11日(土) 12:30pm 9列センター/2月12日(日) 12:30pm 6列上手



公爵の娘 ロザリンド(柚希礼音)は父(小野武彦)が弟フレデリック(小野武彦二役)により追放された後も、フレデリックの娘 シーリア(マイコ)と仲良くワシントンで暮らしていましたが、ある日突然フレデリックから追放を命じられます。シーリア、タッチストーン(芋洗坂係長)とともに、危険を避けるために男装してギャニミードと名前も変え、父の住むヘイトアシュベリーを目指します。
一方、レスリングの試合見物に来ていたロザリンドとひと目で恋に落ちたオーランドー(ジュリアン)も、兄 オリヴァー(横田栄司)の嫉妬から命の危険が迫り、召使いのアダム(青山達三)とともにヘイトアシュベリーに辿り着きます。そこでギャニミードと出会ったオーランドーは、男装したロザリンドと気づかず、恋の指南を受けることになります・・・。


最初に観終わった時の印象は、「時代や場所の設定は変わっていても中身はまんまシェイクスピアの "As You Like It”だったね」というもの。
プロットはもちろん、翻訳の違いはあるものの、台詞もほぼ原作に忠実のように聞こえました。
だからこそ、「設定を変える必要があったのか」と思ったのが正直なところ。
スーツ着たビジネスマン風の人が「公爵」と名乗っても違和感ありますし、1960年代のヘイト・アシュベリーには羊飼いはいないし、洞窟もなかったのではないかな・・・と。

ですが、マイケル・メイヤーさんは、そんな違和感はもちろん百も承知で、あえて二重構造にすることで、権力闘争も恋のさや当ても、人間の営みはいつの時代も変わらないという普遍性を強調するという意図があったのではないか、と思い直しました。
この作品の中で最も有名な台詞「この世はすべて舞台 男も女もみな役者にすぎない」に込められたメッセージとも重なって。
メイヤーさんご自身がキャスティングにどれくらい関わられたのかわかりませんが、出演する役者さんたちのバラエティに富んだ出自(チャールズ役の武田幸三さんなんて格闘家出身なんですって。知らなかったぁ)にもその狙いが表れているように感じました。


視覚的な部分も含めて、演出は個性的でワタシ的に新鮮でした。

モノトーンのワシントンから一転、ヘイト・アシュベリーはサイケ調で彩り豊か。
ヒッピー風の服装の人たちが生バンド演奏し、歌います(伊礼彼方くん、いい声)。
同じくヒッピー風の服装に着替えたロザリンドたちご一行の荷物はトランクはじめすべてルイ・ヴィトン(全部この舞台のために買い揃えた本物なのだとか)。
羊飼いが連れる羊たちは体育帽をかぶった幼稚園児たちで、天使のように可愛い彼らはラストシーンではホントの天使になったり。

言葉は同じでも、「シェイクスピアの台詞を話している」といった力が入った感は希薄で自然体の台詞まわし。
話すテンポも早くて、その分、「恋とはため息と涙でできてるもんだ・・」というシルヴィアスの台詞で始まる、フィービー、オーランドー、ロザリンドの4人がそれぞれ恋心を独白するシーンは、もう少し詩情というか、情感が欲しいとも思いましたが。

トム・キャットさんのオリジナル曲は素敵だし、ママス&パパスの California Dreamin' はじめ数々の挿入歌も懐かしかったり胸キュンだったり。
カーテンコールでの柚希さんの、歌う「口上」も初めて観る演出。

アメリカ人の演出家だから、というより、マイケル・メイヤーさんならでは、なのかな。


私自身が1960年代のヒッピー文化や当時のアメリカのムーブメントについて、映画や小説の中でしか知らなくて、「ラブ&ピース」の時代というくらいの認識しかないせいもあって、アーデンの森をあえてその時代、その場所に設定したメイヤーさんの考える理想の投影といったものをきちんと受け止めきれたという自信はありません。
フレデリックが解脱することを象徴した場面も、「あれって、あの何とかいう教団(ハレ・クリシュナ教団と後で調べてわかった)を表しているのかな?」と3回目で気づいたくらい。
アメリカ人だったら、あの時代をリアルに知っていたら、もっといろんな思いを感じ取れたのかなとも思いますが、それではあえて日本で、日本人で上演する意味も問われることになると思います。

何より、この戯曲において、アーデンの森はやっぱりアーデンの森であってほしいというのが率直なところ。
蜷川幸雄さん演出の「お気に召すまま」の、緑あふれるアーデンの森の美しさが今も忘れられません(美術: 中越司/照明: 原田保)。 


ただそれでも。
舞台として楽しくなかったかという意味では全くなくて、純粋にシェイクスピア作品として楽しめましたし、先述したように、この作品の普遍性や、そもそもこういうふうにアレンジできるシェイクスピア作品の「懐の深さ」も感じることになりました。

ポップでロマンチック。
一人ひとりがイキイキと活躍する物語は楽しく、明るいハッピーエンドの祝祭劇に毎回幸せな気分で劇場を後にしたのでした。
初めて観る人も含めて、役者さんも皆よかったな。
そのあたりは「キャスト編」へつづく。


posted by スキップ at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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