2017年02月08日

求め合う孤独な魂 「フランケンシュタイン」


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ゴシック小説の傑作と言われる「フランケンシュタイン」が、韓国で大ヒットミュージカルとなっていることなんて、全く知りませんでした。

今回の日本初演版では、主要2役がどちらもダブルキャスト。
あっきーがいいけどカッキーも観てみたい・・と思っていたところ、あっきー ビクター、カッキー ジャック というスペシャルバージョンがあることを知り、「一粒で二度おいしいじゃん!」と迷わずこの回に。

しかーし
そもそも「フランケンシュタイン」の物語自体、ぼんやりとしか覚えていなくて、一幕観終わった時点では、「ひぃ~、こんなキビしい話・・」と少し凹んだりもしたのでした。


ミュージカル 「フランケンシュタイン」
音楽: イ・ソンジュン
脚本・歌詞: ワン・ヨンボム
潤色・演出: 板垣恭一
訳詞: 森雪之丞
音楽監督: 島 健
振付: 森川次朗 / 黒田育世
出演: 中川晃教  柿澤勇人  小西遼生  音月桂  
鈴木壮麻  相島一之  濱田めぐみ ほか

2017年2月3日(金) 梅田芸術劇場メインホール 1階9列上手



物語の舞台は19世紀ヨーロッパ。
死んだ人間を蘇らせる研究をしているビクター・フランケンシュタイン(中川晃教)は戦場で射殺されようとしていたアンリ・デュプレ(小西遼生)の命を助けます。ビクターの研究を神への冒涜だと反発していたアンリですが、そのゆるぎない信念に感銘を受け、研究を手伝うことになります。固い友情で結ばれた2人はビクターの故郷で研究を続けましたが、殺人事件に巻き込まれたビクターを救うために、アンリは身代わりとなって無実の罪で処刑されてしまいます。ビクターはアンリを生き返らせようと研究の成果を注ぎ込むみますが、誕生したのはアンリの記憶を失った"怪物"でした。悲惨な生き方を余儀なくされた怪物は、自らの”創造主”であるビクターに復讐を誓います。


一幕の冒頭、ビクターが裸の人間を担いて手術台のようなものに載せます。
ドアを叩き、「やめて、ビクター」「おやめください」と止める男女の声。
ビクターがそちらに向かうと一人取り残された裸の人間は台から落ち、痙攣のようなものを起こして苦しみます。

これがビクターが"創造”したアンリ(怪物)だということがわかるのは一幕の終わりに同じシーンが再び繰り返された時。
ここまでに、ビクターとアンリの出会いや、2人の友情、ビクターがどうして生命創造という研究に取り組むようになったのか、アンリが死に至るまでのビクターの苦悩などが描かれます。


「ビクター・フランケンシュタイン博士が、禁断の研究の末に怪物をつくり出してしまう」という「フランケンシュタイン」のストーリーに、その怪物は元はといえばビクターにとってかけがけのない友 アンリであったということを加えたのが、このミュージカルのオリジナル。
その効果もあって、ゴシックホラーというより、愛と友情、そして憎しみのヒューマンドラマといった様相。

ビクターへの思いから彼の罪をかぶって断頭台の露と消えたアンリ
アンリをもう一度蘇らせたい一心で怪物を生み出してしまったビクター
友情の記憶もなくし、ビクターに憎悪をつのらせる怪物

それぞれの思いがとても切ないです。

復讐のため、ビクターの周りの人々を一人、また一人と殺していく怪物に
「僕を殺してくれ」と訴えるビクター。
最後に2人きりで対峙する場面で、怪物がアンリに銃口を向けた時、まるでそれが神様からの贈り物でもあるかのように、歓喜の表情を見せたアンリ。

それは、これで苦しみから逃れられる、というより、ビクター自身のアンリへの贖罪のようにも見えました。
孤独な少年時代を過ごしたビクターにとって、アンリは唯一無二の存在。
意図した訳ではないにしても、彼を”怪物”にしてしまったことは、痛恨の極みだったのでは。

一方、誕生した当初、記憶もなく言葉も持たず、ビクターの執事のルンゲ(鈴木壮麻)を殺してしまうほど凶暴さを見せた怪物。
3年後ビクターの前に現れた怪物は言葉はもちろん、計画的にビクターを追い詰める理性もあるように思えました。

そこで疑問に感じたこと。
怪物はアンリとしての記憶を全く持っていなかったのか?
-否、と私は思いました。

どこかの時点で怪物はアンリの記憶を取り戻したのではないか、と。
それはカトリーヌと心が触れ合った時かもしれないし、森で出会った少年に自分のことを語った時かもしれません。少年の首をしめようとしてやめた時、あるいはビクターと対峙した時かもしれません。
アンリとしての記憶が蘇っているけれども憎悪が強すぎてもう自分の行動を止めることができず、自分がこれまで味わってきた「孤独」をビクターに与えることでしかその思いを昇華させることができない・・・怪物=アンリもまた切なすぎる存在です。

ビクターとアンリ
ビクターと怪物
孤独な魂がひかれ合い、求め合うふたつの形。
「友情」と「憎悪」で。


中川晃教さんのビクター。
繊細な心と理想のためには信念を曲げない強い心を持った孤高の天才がとてもよく似合っていました。
歌は圧巻のひと言。
難曲ばかりという印象ですが、いずれもドラマチックに歌い上げて、聴き応えたっぷり。
あっきーの舞台を初めて観たのは初演の「モーツアルト!」ですが、なぜか今回「SHIROH」のあっきーが幾度となく頭をよぎりました。

アンリ/怪物は加藤和樹さんとのダブルキャストで、この日は小西遼生さん。
端正な二枚目というイメージ通りの穏やかで知性的なアンリと、これが遼生さん?と思うほど猛々しく凄みある怪物との演じ分け、お見事でした。
ビクターへの憎悪の中に悲しみが滲むような表情が印象的でした。
闘技場で絶望して歌う「俺は怪物」は迫力たっぷりでしたが、歌唱に限ればビクターとの「対決」がいささか分が悪く感じたのがザンネン(・・あっきーの歌がうますぎるせいでもある)。

主要キャストは一幕と二幕でそれぞれ二役を演じているのも見どころで、ビクター役は二幕では闘技場の主人 ジャックとなるのですが、この日はスペシャルバージョンだったので、もう一人のキャスト 柿澤勇人さんがジャック。
妖しげでちょっと変態?チックなジャック。とても楽しそうに演じていらっしゃいました。
つくり込んだメイクや派手で奇抜な衣装もお似合い。
関西弁で台詞を言って、相島さんに「何で関西弁なんだ?」とツッコまれて答えられず、「答えられないなら言うな!」と怒られていました。

ストーリーを知らず、ジャックはビクターの別人格のような存在と思っていたのですが、全く別の役で、これならあっきーのジャックも観てみたいし、カッキーのビクターも観たくなるというジレンマ。

音月桂さんはビクターの従姉妹で幼なじみで妻となるジュリアと闘技場の下女 カトリーヌ。
一幕でジュリアの歌を聴いて、「音月桂はこんなものではないはず」という印象を持ったのですが、カトリーヌでは本領発揮。
力強い迫力の歌唱で、カトリーヌの生きることへ執着やしたたかさ、そして悲壮感がとてもよく表れていたと思います。
ジュリアとカトリーヌは、「人を信じる」「自分しか信じない」、イノセントとギルティ、で表裏一体みたいなキャラクターになっていて、それぞれがビクター、アンリの心に寄り添う存在。
この二人を一人の役者さんに演じさせるって、よく考えられた奥深い配役だなぁと思いました。

濱田めぐみさんが演じたのはビクターの姉 エレンと闘技場の女主人 エヴァ。
初めて観た四季時代の「アイーダ」以来、私の中で濱田めぐみさんといえば強い女性というイメージ。
配役をチェックしていなかったせいもあって、一幕で「ビクターのお姉さん役の人、すっごく歌うまいけど誰っ?」と思っていて、幕間に確認したら濱田さんだった・・・そりゃうまいはずだわね・・・というくらい、イメージ違った聖母のような役。
逆にエヴァは、何だか既視感アリアリ(笑)。

2人きりの姉弟で、弱さ、はかなさもありつつ、いつもビクターを見守る姿がとても温かいエレン。
ビクターを思って歌う「その日に私が」 すばらしかったな。
そのエレンが怪物の策略で処刑されてしまった時、悲しみにくれるビクターが歌う場面で舞台の上手、下手に咲く薔薇にライトが当たったのが印象的でした。
それまで、そこに薔薇があることに気づいていなくて、あれ?と思ったのですが、弟を見守る愛はいつもそこにあって、だけどそれは失って初めて気づくということを表していたのでしょうか。


SPバージョンでしたのでカーテンコールは中川晃教さん 柿澤勇人さん 手をつないで登場。
カッキー真ん中に挟んであっきーと小西遼生さんが両側からハグしたり、センター譲り合ってわちゃわちゃ走り回る3人が可愛いかったです。
ラストはカッキージャックが股の間から差し出したステッキに、まずはあっきービクターがマントをたくしあげて小さくたたんでまたがり、さらにその後ろに遼生さんが乗ろうとしたものの短すぎて乗り切れず、何度も転げ落ちながら最後には3人乗ってはけて行きました。



柿澤くんバージョン リピしようにも大阪公演短かすぎ の地獄度 (total 1702 vs 1705 )



posted by スキップ at 23:40| Comment(4) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も同じ時間の公演を見ました。
ジャックの衣装が奇抜で格好いいのでカッキーのジャックは時計じかけのオレンジを思い出しました。
韓国版は見たことごないのですが、はまった友人に聞いてみたところ、日本版はBL 度が薄くて萌えないと言っていました(笑)
同性愛の匂いはプンプンしましたが、韓国版はもっと体格のいい人がアンリとビクターをやっているので、そうなるのでしょうね。
Posted by りんこ at 2017年02月09日 05:50
skipさん、こんばんは!
感想、お待ちしておりましたv
読ませていただきながら、そうそう、そうなの!と何度も頷いてしまいました。
私も怪物はアンリの記憶を取り戻していたのではないかと思います。
あと、あの薔薇の花、気になりますよね?
ああ、skipさんとお話ししたい!!
主役のW×2は、是非全組み合わせを観ていただきたかったです。でも、アッキーのビクターを観ていただけて良かった(*^^*)
Posted by 恭穂 at 2017年02月09日 19:28
♪りんこさま

「時計じかけのオレンジ」!
そうそう、それです!
カッキーのジャック、ほんとそんな感じでした。

なるほど、BL度が・・。
確かにこの日本版は、ビクターとアンリの結びつきが「友情以上」
であることは感じさせますが、人間的、精神的な繋がりに重点を
置いているようにも感じました。
役者さんの個性であり、板垣恭一さんの潤色の方向性でしょうか。

りんこさんに教えていただいて、俄然韓国版も観てみたくなりました(笑)。
Posted by スキップ at 2017年02月09日 23:36
♪恭穂さま

こんばんは。
私も恭穂さんと語り合いたい!

柿澤くんのビクターはもちろん、組み合わせによって
印象が変わるというアンリも両方、4パターン観たかったです。
恭穂さんの印象もぜひお聴きしたいです。

怪物がアンリの記憶を取り戻しているように感じられる演出は
日本版独自のもののようですが、観る側にイマジネーション
・・・というか妄想?(笑)する余白を残してくれる演出って
いいですよね。

あの薔薇も、私、それまで全く気づいていなくて、あの曲の時
急に出てきたのかと思ったくらいです。

あ~、やっぱり恭穂さんとまだまだお話したい(^^ゞ
Posted by スキップ at 2017年02月09日 23:45
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