2017年01月31日

木ノ下裕一 演目レクチャー「娘道成寺/隅田川」


IMG_0051.jpg先週土曜日は京都 アトリエ劇研へ木ノ下歌舞伎「隅田川・娘道成寺」を観に行きました。
本編もさることながら、終演後に行われた木ノ下裕一さんの演目レクチャーがとても楽しかったので(これが聴きたくてこの回にしたのですが)、まずはこちらのレポから。


木ノ下歌舞伎 演目レクチャー「娘道成寺/隅田川」
木ノ下裕一

2017年1月28日(土) 8:00pm アトリエ劇研 3列(全席自由席)
 


アトリエ劇研という劇場へ行くのは初めて。
バスが苦手なので、公式サイトで紹介されていたアクセスの中で地下鉄 松ヶ崎駅から徒歩というのを選択。
書いてあったルートとは明らかに1本違う道を歩いていると思いましたが、「絶対この通り沿いにあるはず」という野生のカン(笑)が働いて、まっすぐ1本道でたどり着きました。
閑静な住宅街の中にあって、二子玉川にある花組芝居の本拠地 セーヌ・フルリを思い出しました。

座席は可動式なのかな。全席自由で最前列も選ぶことができましたが、1列2列はベンチシートで足腰ツラそうでしたので、3列目の椅子席をチョイス。
本編の時には木ノ下さんや杉原邦生さんが近くの席でご覧になっていました。
2時間の公演終演後、木ノ下裕一さん登場です。

ステージの真ん中に机と椅子。
大きな鞄を持って現れた木ノ下さんは「準備するものが多くて・・」と言いながら、鞄からダルマの絵の湯呑みを取り出し、たくさんの本を取り出してスタンバイ。
これはいつものスタイルのようで、「最初にこれは言っておかないと」とご自身の性別ネタを持ち出すところもお約束。

「ちょっとアンケート取っておこう」とおっしゃって、「『義経千本桜』ご覧になった方」「『勧進帳』ご覧になった方」と挙手をつのって、人数を書き留める鉛筆もわざわざ鞄から出したジャンボ鉛筆、という仕込みぶりです。
ナナメ前で聴いていらした杉原さん、大ウケで爆笑されていました。


上演するたびに時間が新しい「娘道成寺」

「いつも1演目だけで軽く1時間オーバーするのに2演目もあって大丈夫かな」と言いながら、まずは「娘道成寺」から。

歌舞伎の「娘道成寺」を話すには能から、その能は「道成寺伝説」が元になっているということからこ安珍清姫の道成寺伝説のお話から。
これ、知っている話なのにすごくおもしろくて、何だか笑いっぱなしで聴きました。

安珍に「帰りに寄ります」と言われて、普通の女性なら「あ、これ脈ないな」と思うけど清姫は田舎娘だから本気にした、とか、安珍が清姫の家に寄らずに帰るところをたまたま清姫が目撃するとか安物のドラマみたい、とか、道成寺の坊主がアホで、他にいっぱい隠す場所あるのに何で鐘に安珍隠すねん、とか(笑)。

清姫が蛇体となる時に、徐々に変化していく説と、一気に蛇になるとあるそうで、「シン・ゴジラとグレムリンみたいなものですね」と。
その蛇が火を噴くのも恨みからではなく、悲しみのあまり、ということで、「そのあたりもシン・ゴジラと共通していますね。あの子が放射能出すのも決して恨んでいる訳ではないので・・」と、この話聴いて、「シン・ゴジラ」観たくなりました。

「これツイッターだったら140字もいらないですよね」ということで、道成寺伝説は、
「ストーカー女 坊主焼き殺す」

なんてことをおっしゃりながら、道成寺までのJRの車窓から見える景色は、特に桜の頃は美しくて、「大和絵を一枚ずつめくるよう」なんて表現もされていて、やはりアーティストだなぁと思いました。
白浜や串本へ向かう車中から遠くに道成寺を見たことがあるだけの私ですが、ぜひ桜の頃に行ってみたいと思いました。


そしてここから能、歌舞伎のお話。

能の「道成寺」は安珍清姫伝説の後日談となっていて、これが秀逸とおっしゃっていました。
道成寺の鐘が焼けてしまって、新しい鐘を建立し、鐘供養をするまで「何年経った」と明確に示されていないので、数年後かもしれないし、もしかしたら現代のことかもしれない。
「上演するたびに時間が新しい」と。

能と歌舞伎の大きな違いは歌舞伎は全体がレビューになっていること。
特に主筋と関係ない踊りのシーンが挟み込まれていて華やかになっているあたり。

「梅とさんさん桜は 何れ兄やら弟やら」というところなどは、「梅と桜はどっちがお兄さんでどっちが弟でしょう」といったどうでもいい(笑)歌詞で、「わきて言われぬ」で締めるのでわきて節と言われている・・・ということから、話はピコ太郎さんのPPAPへ。「あれも一種のわきて節ですよね」と。

木ノ下さんはPPAPがお気に入りで夜ご自宅で一人でやっているそう。
「ちょっとやってみましょうか」と、

I have a 琵琶法師
I have a 三味線
じょうるり~!!

I have a 浄瑠璃
I have a からくり人形
ぶんら~く!!

・・・「朝までできます」ですって(^^)


「恋の手習い」のパートは中島みゆきみたいな世界で女性図鑑みたいな感じ、とおっしゃっていました。
ここは踊りが中心ですが、歌舞伎舞踊の振りは

・あて振り (こん・にち・は と音で割り振る)
・意味で振りをつける
・全く言葉に関係ない振り

の3つに分けられるそうで、ここはこうきたか、と思いながら観るとおもしろい、とおっしゃっていましたが、私にはまだその道のりは遠そうです。


物狂いの「隅田川」

伝説→能→歌舞伎 という流れが「道成寺」と同じ。
「母 墓の前で泣く」 で、それほどおもしろい演目でもないのに歌舞伎ではよくかかるのは、どこにも行き場所がない、協調性のない(登場人物2人なので)大御所俳優の演目なのではないか、と(毒舌?)。

ここで話題はポケモンGOへ。
木ノ下さんはポケモンGOにはハマらなかったそうですが、「あれって能ですよね。その土地にいるもののけを捕まえる話」
「奈良の葛城山のあたりにツチグモン、下関の海辺にはアントくん、とか能バージョンあればいいのに」って、ウマいなぁ。

隅田川という川は江戸の人々にとって特別な川で、ここから派生した「隅田川もの」という演目は多く、「法界坊」しかり、「桜姫東文章」しかり、そして今月新橋演舞場で上演されていた「雙生隅田川」しかり(←この筋書を手にして「三代目 市川右團次襲名披露 二代目 市川右近初舞台・・・ふーん」と棒読みしていらっしゃいました。あまり興味ないのかな?)

班女の前(演舞場では猿之助さんが演じていらっしゃいました)の「物狂い」について、
「物狂いは、精神疾患やノイローゼと解釈されることが多いけど、『何かについて思い詰めすぎて、周りからはおかしく見えるけど本人は大真面目』というもの。あと、神様とも繋がっている」
「僕も歌舞伎のことばかり思い詰めているので物狂いです」と。


完コピ

「木ノ下歌舞伎は、歌舞伎の完コピからお稽古が始まるそうですが、今回のような踊りの演目も完コピするのですか?」という客席からの質問。

これはYES。
白神さんは歌右衛門さんの「隅田川」のDVDを何度もご覧になったそうです。
「泣く振り(片手を横にして手のひらを顔の前にかざすような仕草)の時、同じようにやっても全然悲しくならなくて、よくよくDVD見直したら小指だけを少し顔の方に近づけるように内側に入れていて、それをすると悲しい気持ちがわいてきた」と白神さんがおっしゃっていて、「それってダンサー独特の感性だなぁと思いました」と木ノ下さん。


日の本は 女ならでは夜の明けぬ国

「隅田川」も「娘道成寺」も女性が主役ということから、話はフェミニズムへ。
「源氏物語」も「平家物語」も女性が魅力的に描かれているのでおもしろい、と。

「古事記」のイザナミとイザナギの最期の会話の話がとても印象的でした。
黄泉国と現世との結界である岩を挟んで言葉をかわず2人。
「お前の国の人間を1日1000人殺す」とイザナミ。
「それならば私は1日1500人つくろう」とイザナギ。
それから死者が出るたびにイザナギはイザナミが元気でいると思い、新しい人間が黄泉国にやってくるごとにイザナミはイザナギを思い続けるのです、と。

「古事記は非常に繊細な恋愛ドラマ」だとおっしゃっていました。
部分的にしか読んだことない「古事記」 読みたくなります。


日本古来からの女性観は、「女は何かあった時に超人的な力を発揮する」というもの。
最後は木ノ下裕一さんがお好きだという狂歌で締め。

日の本は岩戸神楽の始より 女ならでは夜の明けぬ国


1時間あっという間でした。
能や歌舞伎、古典芸能に造詣が深いのはもちろん、31歳とお若いのでもちろん現代的な感覚も兼ね備えていらして、シン・ゴジラやPPAPなど今ふうネタの採り入れ方も巧み。豊富な知識に裏付けられた話術にも長けていらして、本当に楽しかったです。



できることなら歌舞伎の全演目 木ノ下さんのレクチャー聴きたい のごくらく度 (total 1701 vs 1702 )



posted by スキップ at 23:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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