2017年01月29日

人生は回り巡る輪舞 月組 「グランドホテル」


grandhotel.jpg月組新トップスター 珠城りょうさんお披露目公演。

この1月は宝塚では珠城さんお披露目、東京では紅さんプレお披露目。
歌舞伎は東西で襲名披露興行を観ることができて、いつにも増しておめでたい初春だったなぁ。


宝塚歌劇月組公演
ザ・ミュージカル 「グランドホテル」
脚本: ルーサー・ディヴィス
作曲・作詞: ロバート・ライト  ジョージ・フォレスト
追加作曲・作詞: モーリス・イェストン
オリジナル演出・振付・特別監修: トミー・チューン
演出: 岡田敬二  生田大和
翻訳: 小田島雄志
出演: 珠城りょう  愛希れいか  美弥るりか  憧花ゆりの  緒月せり  宇月颯  紫門ゆりや  早乙女わかば  朝美絢  海乃美月  暁千星/夏美よう  華形ひかる ほか

2017年1月14日(土) 3:00pm 宝塚大劇場 2階1列上手/
1月22日(日) 11:00am 1階3列上手/3:00pm 1階25列下手



トミー・チューンさんの演出・振付で1989年にブロードウェイで初演されたミュージカル「グランドホテル」。
1993年には宝塚歌劇で、当時の月組トップスター涼風真世さんのサヨナラ公演として上演されました。残念ながらその初演は観ていなくて、昨年、トム・サザーランド演出版を観たのが最初です(感想はこちらこちら)。

あの時、梅芸の客席に美弥るりかさんや愛希れいかさんがいらしてて、「月組の人やたら見かけるけど月組でやるのかな?」と思っていたら、ほどなくこの公演が発表されて、とても楽しみにしていました。
宝塚での初演はオットーが主役でしたが、今回は珠城さんのキャラクターに合わせて、フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵が主役。
いや、この物語の主役はいつも、「グランドホテル」ですね。


「こちらグランドホテル ベルリン。ご用件は?」

1928年 ナチスの不穏な影が忍び寄るベルリン。
回転扉が旅客を迎える格式ある豪華ホテル・グランドホテル。

多額の借金を抱え組織から返済を迫られながら見かけは華やかに生きる青年貴族
ピークを過ぎ、引退興行を続けているプリマ・バレリーナと意味深なその付き人
重い病を患い、人生の最期の時間を豪華ホテルで過ごしたいと願うユダヤ人の会計士
倒産寸前の会社を立て直そうと躍起になっている会社社長
ハリウッド女優を夢見るタイピスト
そしてホテルの従業員たち

このホテルを訪れるを訪れる様々な人々がが行き交い、その人生が交錯する1日半の物語。


中央にホテルの回転扉。
このドアから一人、またひとりとホテルに入ってくる登場人物。
そこに重なる重層的なコーラス。
このオープニングから一気にグランドホテルの世界へ。

舞台には多数の椅子が整然と並べられていて、場面が変わるとその椅子を役者さんたちが並べ替えるのですが、まずこの演出が秀逸。
音楽とともにまるでダンスのステップのように、そしてマスゲームのように一糸乱れず椅子を移動させる役者さんたち。
あっという間にフォーメーションが完成し場面が変わる様は観ていて心地いいほど。
時には上手下手の舞台端に2列に並べた椅子に座ってずっと見ていたり。

セリも盆も使いません。
フィナーレで珠城りょうさんが一人で銀橋渡るのを観て、「そういえば銀橋も一度も使わなかった」と気づきました。
宝塚ではあまり観たことのない演出です。


Grand Walts に生田先生がつけた訳詞 

人生は
回り 巡る 輪舞
朝も 昼も 夜も
来ては
帰る
それが 
人生さ

ということが本当に実感できる舞台でした。

国籍も年代も身分も仕事も違う様々な人たちの人生が交錯するグランドホテル。
そこにヒタヒタと迫り来る時代の波も感じさせる重厚感あるドラマ。
愛と友情、出会いと別れ、生と死・・・グランドホテルを舞台に繰り広げられる彼らの物語は、そのまま私たち誰も生きる人生の縮図のように感じられて普遍的です。

「そうよ、彼は真っ赤な薔薇の花束を持って駅で待ってると言ったわ」と笑顔で回転扉を出ていくエリザヴェッタを待ち受ける残酷な真実。
新しい生命の誕生をすばらしいと歓喜で迎えようとするオットーは、その赤ちゃんを見るまで生きていられるか、そもそもフラムシェンはその頃 彼のそばにいるのかどうかもわからない。
そしてそんな彼らのすべてを呑み込んでしまうような1929年の世界恐慌はもうすぐそこに。

「人生は回り舞台」といってもその切なさ、厳しさに涙しそうになった時、最後のカーテンコールで笑顔の出演者を観て、「あぁ、演じてたんだな」と、どこかほっとするような。
本当にステキな演出だったな。


珠城りょうさんの男爵は堂々とした主演っぷり。
フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵はホテルの宿泊費を7ヵ月分も滞納しているほど借金まみれですが、どこか浮世離れしていて、しかも綺麗な女の子にはすぐ声をかけるチャラ男。
それを珠城さんが演じることで、若さと、貴族という育ちのよさ、オットーの財布を返してしまう誠実さや、純粋ゆえの苦悩も感じられる人物になっていました。
タキシードや白いマントの似合いっぷりもハンパなく。
ボレロの場面の大胆なリフトも圧巻でした。

愛希れいかさんのエリザヴェッタもすばらしかったです。
最初の声があまりにも低くて、「ほんとにちゃぴちゃんなの?」と驚いたのですが、細やかな役づくりで39歳と39ヵ月のプライド高いスターバレリーナそのものになっていました。
ヒステリックに騒いだり傲慢だったり、でも繊細で悲しみに満ちていたり、すべてを諦めたように横たわったり、とても表情豊か。
男爵と出会って、恋をして、輝くような笑顔で「私、踊りたいの」と自分の気持ちを取り戻したエリザヴェッタの、この先を思うと心が痛みます。
ダンスは元々お上手ですが、歌唱にもますます磨きがかったよう。

オットーは美弥るりかさん。
憧れていた涼風真世さんがやった役ということで気合入っていたようですが、さすがの出来栄え。
弱弱しく陰気な雰囲気だったオットーが男爵と出会って友情のようなものを感じ、フラムシェンを好ましく思って活き活きと変わっていく姿が微笑ましい。
バーカウンターに見立てたポールに体を二つ折にしてぶら下がったり、ステップだけでダンスしたり、やがて前へ出てきて男爵より高く脚を上げるシーン、楽しかったです。

今回の公演はダブルキャストが二役あって、

ラファエラ/エリック: 朝美絢/暁千星
フラムシェン:     早乙女わかば/海乃美月

朝美絢さんと暁千星くんは両役観ましたが、ラファエラ:朝美  エリック:暁
というパターンが収まりがいいように思いました。
劇団としては暁千星くんラファエラが本役っぽい感じですが、少し硬かったかな。
それに比べて、もうすぐ子どもが生まれる若いホテルマンは等身大でニンに合っている印象。
朝美さんはどちらの役もよかったですが、女役も違和感ないし、あのクールな美貌が謎めいたラファエラともよく合っていて。

観劇日の関係で残念ながらわかばちゃんの日は観ていなくてフラムシェンは海乃さんのみ。
歌もダンスもお芝居も穴がない娘役さんです。
表情(メイクかな?)にもう少し若さが欲しいことと、脚線美があまり綺麗でなかったのがザンネン。

この他の主要な役・・・ヘルマン・プライジングとオッテルンシュラーグ博士は専科のお2人(華形ひかる・夏美よう)が勤められましたので、月組の下級生はあまり大きな役がなくて気の毒でしたが、中では宇月颯さんの運転手(実は男爵の借金の取立屋)が光っていました。
胡散臭いちょっとヤクザな雰囲気でくわえ煙草もよく似合って、悪役フェチの私のハートをワシづかみです。


・・・という訳で「グランドホテル」だけで長く語ってしまったので、ショーは次回につづく



posted by スキップ at 20:51| Comment(4) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先週土曜日に観劇しました。
スキップ様のブログを心待ちにしていましたので会社の昼休みでも何度も読み返しておりました😀
読みながら又感動が蘇りました。
月組が暫くご無沙汰ぶりなのもあって色々嬉しい発見も多々ありました。
まだまだコメントしたい事いっぱいあったのですがブログの感想の素晴らしさに指が動きません。
今年も又楽しい舞台を観てステキなブログを拝見できる!幸せな一年のスタートです‼️
Posted by sissy at 2017年01月30日 21:09
こんにちは。
エリックを2パターンともご覧になったのですね。
私もどちらかといえば朝美さんの方があってるのかなと思っていましたが、やはりそうですか。ぜひ拝見したかったです・・・


初演の衝撃は、忘れられません。それまでは、定番の宝塚のお芝居ばかり夢中になってみていたわけですから。

エンディング。何も知らずに期待に胸膨らませて旅立つエリザベッタ。あの時は「可哀そうだなあ」という程度でしたが、年月を経て改めて見ると、あれだけ哀しいシーンはなく、思わず涙してしまいました。ちゃぴちゃんは本当に素晴らしい娘役になったとつくづく思いました。


月組はいい作品でスタートを切ったと思います。しばらく、月組とは縁がなかったのですが、今後とても期待しています!
Posted by はぎお at 2017年01月30日 21:21
♪sissyさま

いつも読んでいただいてありがとうございます。
すばらしい舞台で私などの言葉ではとても表現しきれず、
まだまだ書き足りないのですが^^;

新生月組、上々の滑り出しですね。
華やかなレビューや夢見るような恋愛もの、そして
このような重厚なドラマ、と宝塚って本当にすばらしいですね。
これからもいろんな作品、楽しみです。
Posted by スキップ at 2017年01月31日 00:11
♪はぎおさま

初演をご覧になっているのがうらやましいです。
とにかく演出が洗練されていて、トミー・チューンさんの
意向がかなり反映されているものと思いますが、
岡田先生の手腕もすばらしいな、と。

ラファエラ/エリックは、多分、ありちゃん強化プログラムかな?(笑)
朝美絢さん、さすがの力量を見せてくれました。

そして何といってもちゃぴちゃん。
この舞台成功の立役者ですよね。
ちょっと”宝塚の娘役”の域を超えてしまった感があって、
それだけが少し心配です。
Posted by スキップ at 2017年01月31日 00:17
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