2017年01月19日

壽初春大歌舞伎 夜の部


hatsuharu201701.jpg初春のお江戸は四座で歌舞伎興行が打たれていて、あれも観たいこれも観たいとなります。
が、そうとばかりもいかず、浅草は、二月松竹座の花形歌舞伎の情報を早目にいただいていましたので今年はパスするとして、昨年観てとても楽しかった菊五郎劇団の国立劇場と迷った結果、高麗屋贔屓としてはやはりこちらでしょう、と歌舞伎座に。

チケット取った後でこの日が染五郎さんのお誕生日とわかり(すっかり忘れてた ^^; )、今回の遠征で3つ目のおめでたいお祝いとなりました。


壽初春大歌舞伎 夜の部
2017年1月8日(日) 4:30pm 歌舞伎座 3階1列センター

一、井伊大老
作・演出: 北條秀司
出演: 松本幸四郎  中村歌六  市川染五郎  片岡愛之助  
上村吉弥  中村雀右衛門  坂東玉三郎 ほか


安政七年(1860)三月三日 桜田門外の変で暗殺された大老 井伊直弼の、暗殺前夜の様子を側室お静の方の語らいの時とともに描いた物語。

動きの少ない台詞劇というイメージの新歌舞伎はあまり得意ではない私ですが、2014年11月 歌舞伎座の吉例顔見世大歌舞伎(染五郎さんが初役で弁慶やった時ね)で初めて観た時、意外にもおもしろく拝見した作品。
その時は吉右衛門さんが井伊直弼役で、「今度は幸四郎さんね」と年末京都で会った友人とも確認したにもかかわらず、またすっかり吉右衛門さんと思い込み、幸四郎さんが登場して驚くという・・・。


吉右衛門さんももちろんよかったですが、幸四郎さんの直弼が思いのほか(・・と言っては失礼ながら)よくて、ワタシ的にはこのカップルは珍しいなと思った玉三郎さんとの並びもお芝居も馴染んで、よい幕となっていました。
少し涙もろい人情家という人間味あふれる造形の井伊直弼。
鬼畜と呼ばれるほど敵も多く、断固として開国を推し進めたコワモテのイメージとは異なり、「彦根へ帰りたい」 「生まれ変わっても大名にはなりたくない」とお静の前だけで吐露する本音が切ない。
人物の大きさとともに、親しみやすい面も表しながら、直弼の苦悩も無念も、そして覚悟も滲ませる幸四郎さんの直弼、素敵でした。

玉三郎さんのお静は、華やかさを抑えながらにじみ出る可愛らしさ。
側室という立場をきちんとわきまえつつ、ひたすら直弼を思ういじらしい女性でした。
賢いのに甘え上手だし可愛くやきもち焼いたりもして、あの美貌だし(笑)、直弼でなくても好きになるよね~と納得です。

前回、お静の方を演じた雀右衛門(当時 芝雀)さんが今回は直弼の正室 昌子。
娘の病を理由に直弼に下屋敷に来てくれるよう書状を書いてきたお静の方を本気で心配する昌子に、侍女たちが「奥方様はほんとうにおひいさまでいらっしゃいますねぇ」と言われるのがそのままあてはまるような鷹揚なお姫様ぶり。
多分政略結婚した奥方様なのかな。
「昌子は嫉妬しない」と直弼は言っていましたが、心が醒めているということではなくて、そんなふうにわきまえて育ったお姫様なのだと、少し寂しそうな表情が物語っているようでした。

前回は、桜田門外の降りしきる雪の中、直弼が「大義を忘れるな」と斬りかかる浪士たちを諌めながら倒れていく場面までありましたが、今回カットされていたのはお正月だからかしら。



tomijurosan.jpg二、五世中村富十郎七回忌追善狂言

上 越後獅子
出演: 中村鷹之資
下 傾城
出演: 坂東玉三郎


幕間のロビーで富十郎さんの遺影を拝見して、七回忌追善狂言と知りました。もう七回忌・・・。

花道に登場した角兵衛獅子に「天王寺屋っ!」の大向う。
鷹之資くんが歌舞伎座のあの広い舞台で一人で踊っているのを観ているだけで胸がいっぱいになってウルウル。
お父様を思い起こさせる面立ち、お父様譲りの達者な踊り。
指先まで神経の行き届いたきっちりとお行儀のよい踊りの中に柔らかみもあって。
「布晒し」も美しく流れていました。

鷹之資くんといえば、2009年6月 松本金太郎くん初舞台の「三人連獅子」の時の思い出が。
富十郎さんとご一緒に観に来ていて、幕間に受付に立っていらした金太郎くんのお母様(染五郎夫人)のところにやって来て、「観てきた~。すごく上手だった~」と無邪気に話しかけていました。
その様子をニコニコ笑って見守る富十郎さん。その後、染五郎夫人と穏やかな笑顔でお話していらっしゃいました。

今月の舞台を富十郎さんがご覧になったらどれほどお喜びのことかと思いますが、空の上で目を細めて笑っていらっしゃる姿が目に浮かぶようです。


後半はザ・玉三郎ショーな「傾城」
花魁道中に始まって、豪華な衣装をお披露目したり、ピタリとキメた時の美しさはまるで一幅の絵のよう。
玉三郎さんの美しさをこれでもかというくらい堪能できますが、踊りとしては動きが少なくて、もう少し観たい、という感じでしょうか。

最後の方で坂東守若さんが出ていらしてお元気そうなお姿を拝見できてうれしかったです。

この舞踊二題は傳左衛門さんが鼓で、「あれ?演舞場にも出ていらしたのに」と思ったのですが、やっぱり玉三郎さんだものね。
傳次郎さんもいらしてご兄弟共演を観るのは何だか久しぶりでした。



三、秀山十種の内 松浦の太鼓
出演: 市川染五郎  片岡愛之助  中村壱太郎  市川左團次 ほか


「年の瀬や水の流れと人の身は あした待たるるその宝船」という大高源吾の句にからめて、吉良邸の隣家に住みながら心で赤穂浪士を応援している松浦鎮信侯の物語。

昨年7月 巡業の金沢で観ましたので、感想はこちらに。


赤穂浪士がいつまでも主君の仇討ちをしないことにイライラ→松浦家に奉公している大高源吾の妹・お縫にプリプリ怒って暇を出す→吉良邸から陣太鼓が鳴り響き討ち入りを知るとハイテンションで馬に乗って助太刀に出向こうとする→源吾が報告にやって来ると超ゴキゲンでお縫を大事にすると言い放つ

・・・という感情の起伏の激しい愛すべきお殿様を染五郎さんが気持ちよさそうに演じていて、観ているこちらまで楽しくなります。
金沢で観た時にも感じたのですが、リスペクトする吉右衛門さんの松浦侯写しで、高い声のあたりが本来の染五郎さんの声とは別物のようにも感じました。
本当の意味で「染五郎さんの松浦の太鼓」になるのはもう少し先のお楽しみかな。

お縫は巡業と同じ壱太郎くん(浅草歌舞伎とかけもち。お疲れさまです)でしたが、宝井其角と大高源吾が変更。

宝井其角は左團次さん。
飄々とした中に酸いも甘いも噛み分けた風情と、源吾兄妹を温かく見守っている感じがとてもよかったです。
左團次さんご自身のちょっと茶目っ気ある雰囲気もこの役に合っていると思いました。

愛之助さんの大高源吾は雪の中の笹竹売りの風情も、キリリとした討ち入り装束もとてもお似合い。
相変わらず口跡よくて台詞聴き取りやすいし、芝居心あるし、ヘンなミュージカルとかやらずにもっと歌舞伎に精出してくれればいいのに(小声)。



めでたしめでたしで明るく打ち出される一幕・・・だけど昼の部含めて初春公演にこの演目の並びってどうでしょう のごくらく地獄度 (total 1695 vs 1696 )



posted by スキップ at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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