2017年01月17日

壽新春大歌舞伎 昼の部 「雙生隅田川」


201701futagosumidagawa.jpg「雙生隅田川」の松若丸、梅若丸といえば、1985年 当時七歳の市川亀治郎(現 猿之助)さんが演じて天才子役と大変な評判をとった役柄。
それを六歳の新 右近ちゃんが勤めるとあって、初めて観る演目とともに、とても楽しみにしていました。


新橋演舞場 壽新春大歌舞伎 昼の部
市川右近改め三代目 市川右團次 襲名披露 
二代目 市川右近 初舞台
三代猿之助四十八撰の内 通し狂言 「雙生隅田川」
市川猿之助、市川右團次、市川右近 宙乗り相勤め申し候
作: 近松門左衛門 
脚本・演出: 戸部銀作  奈河彰輔  市川猿翁
補綴・演出: 石川耕士
出演: 市川右團次  市川猿之助  市川中車  市川男女蔵  
中村米吉  大谷廣松  市川右近  市川笑三郎  市川猿弥  
市川笑也  市川門之助  市川海老蔵 ほか

2017年1月8日(日) 11:00am 新橋演舞場 2階左側2列



吉田少将行房(門之助)は比良が嶽の次郎坊天狗(廣松)の恨みをかい、わが子松若丸(右近)をさらわれ、自身も殺されてしまいます。
松若丸の双子の兄弟梅若丸(右近二役)は、お家乗っ取りを企む勘解由兵衛景逸(猿弥)にそそのかされ、朝廷よりお預かりの「鯉魚の一軸」の絵の鯉に目を描き入れたため鯉は絵から抜け出し、梅若丸は出奔。心労が重なった少将の妻班女御前(猿之助)は狂乱してしまいます。
一方、奥家老淡路前司(男女蔵)の子 猿島惣太(右團次)は、かつて吉田家の家臣でしたが、傾城に入れあげ使い込んだ主家の金一万両を償うため人買いを生業とし、都生まれの稚児を折檻して殺してしまいます。その稚児こそ梅若丸と知った惣太は非を悔い、家中に貯めた小判が降りしきるなか腹を斬り壮絶な最期を遂げ、その一念によって天狗となります。
我が子を求めて隅田川のほとりへさまよい来た班女御前は、惣太の女房唐糸(笑也)から梅若丸の死を聞き、川に身を投げようとしますが、松若丸に再会して正気を取り戻します。お家再興のため、七郎天狗となった惣太に送られて、班女御前と松若丸は都へ向かって宙を飛んで行くのでした。


IMG_6545.jpgIMG_7872.jpg


梅若丸が出奔して班女御前が物狂いとなるまでが発端・序幕
猿島惣太の住処で梅若丸とのいきさつから、切腹した惣太が天狗となる二幕
悲しみに狂って舞う班女のもとへ、惣太こと七郎天狗がさらわれた松若丸を救い出して届け、3人で宙乗りしていく三幕
そして大詰は、本水の中で奴軍介が鯉と大立廻りを展開する「鯉つかみ」
という四幕構成。

数奇な運命ありお家騒動あり母子の情愛ありわが身を挺する忠義の家臣ありなドラマチックなストーリーに、早替り、宙乗り、本水、大立廻りといった澤瀉屋さんお得意のケレン味がハマって、猿之助さんの情感あふれる舞も観られるという、まぁ、てんこ盛りで楽しい舞台。
そこに可愛く賢い右近くん大活躍が重なって、客席やんやの盛り上がりでした。


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まずは何をおいてもまずは右近ちゃんです。
昨年六月 初お目見得で演じた「碇知盛」の安徳帝もすばらしかったですが、松若丸・梅若丸の二役、本当にお見事でした。

たくさんの台詞も早替りも宙乗りも、ヘーキな顔でスイスイとこなす右近ちゃん。
揚幕から演舞場のあの長い花道をタッタッタと一人で歩いてきて、七三できちんと止まって台詞を言ったのには、驚くやら感心するやらでした。

二幕で自分を折檻する惣太に必死にしがみついて命ごいするいじらしい梅若丸の姿に胸が締めつけられる思い。
台詞はいずれも感情もこもってとてもしっかり。
安徳帝の台詞を当時右近さんが、「意味・情景を教えながら覚えさせた」とおっしゃっていたのを思い出して、今回もきっとそうしたんだろうな、とウルウル。

右團次さんは大詰の鯉つかみも迫力のスペクタクルでしたが、やはり二幕がよかったです。
梅若丸を折檻する時の冷酷非常な憎々しさ。
そうして殺してしまった稚児が主家の若君だと知らされ、絶望して慟哭する姿。
自分が溜め込んだ小判が降り注ぐ中、自ら斬った腹から臓物を引き出して虚空に投げる凄まじさ。
(「それで天狗になるって・・・」とこの幕終わった後、お隣の人と顔見合わせてしまいましたが)

この場面、梅若丸のことを知らせる吉田家の家臣 県権正武国 海老蔵さんの抑えた演技も光りました。

惣太が七郎天狗となって登場する花道の踊りとその後の四人の小天狗(猿四郎・喜猿・猿紫・蔦之助)の踊りが三味線の演奏も含めてすごくカッコイイ!
・・・と思っていたら、この場面 1985年 歌舞伎座 先代猿之助さんのキレッキレの七郎天狗の動画をTwitterにあげてくださっている方がいらして、何度も見入ってしまいました(こちら)。



猿之助さんの見せ場は三幕。
狂った班女の前が隅田川で舞う姿には、子を亡くした母の哀しさが滲んでいてとても切ない。
多分、班女の前の心が見たのであろう梅若丸の亡霊がふっと現れて消えたと思ったら、入れ替わりに七郎天狗が松若丸を連れてきて・・という早替り。
ここで班女の前が正気に戻るのは、子を思う母の気持ちの強さがよく出ていて、松若丸ほんとによく無事で、と思わずにはいられませんでした。

そして三人の宙乗り。
右近ちゃん松若丸を真ん中に、下手側に右團次さん七郎天狗、上手側に猿之助さん班女の前。
ここで右近ちゃんがちょっとした小技を披露して場内湧き上がりました。
落下しそうになって慌てるところでも、右團次さん、猿之助さんと同じようにアセる素振りを見せて、ほんと、できる子っぷりハンパない。
それから、猿之助さんが両足揃えて指先までピーンと伸びているのが最後まで崩れず、すごいなぁと感心。

大詰。
通力を封じ込まれた次郎坊天狗があっさり退散した後、笑三郎さん長尾局と米吉くん小布施主税が、「右團次さんお得意の鯉つかみをご覧に入れます・・」といった口上。

この前の幕間に前方席にビニールシート配られたわりには、鯉つかみは本水ちょっとショボいな、と思っていたのですが、勘解由兵衛景逸(猿弥)たち(「襲名だからと遠慮はいらぬ」とか言ってた  笑  )との立廻りになると後ろの滝が倒れて水がザァーザァー流れてなかなかの迫力でした。

最後は松若丸が大江匡房(中車)とともに現れ、父の仇である景逸を討ち、その右近ちゃん松若丸を中心に、両側に右團次さん、中車さんの三人が決まって幕。
めでたしめでたし。

めずらしく立役の米吉くん小布施主税。水も滴る美しさの若衆。
一幕終わった時点で、「あの天狗だれ?」となって、消去法で「廣松くんだ」とわかった次郎坊天狗。
いつも紫色の病鉢巻してるイメージの門之助さん吉田少将行房。
お父さまの左團次さんを彷彿とさせる男女蔵さん淡路前司兼成。
しっかり忠臣お局の笑三郎さんに傾城あがりのあだっぽさを見せる笑也さん唐糸。
もうすっかり歌舞伎役者な中車さん大江匡房。
最後まで悪を貫き通す、存在感バツクンの猿弥さん勘解由兵衛景逸。
役者も揃って、とても楽しい演舞場 昼の部でした。




enno.jpgこちらは先日TVでオンエアされた右團次さんの楽屋に飾ってあった猿翁さんからの色紙。

私、これ見た時泣いてしまいました。
猿翁さんが、多分万全ではない手で書かれたこの書にこめた思いに。



右近ちゃん この先どんな役を見せてくれるかこれからも楽しみ のごくらく度 (total 1694 vs 1695 )



posted by スキップ at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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