2016年12月21日

ピュアな心で 十二月大歌舞伎 「あらしのよるに」


arashinoyoruni201612.jpg昨年9月 京都南座で初演された新作歌舞伎。
原作は1994年に出版された累計300万部を超えたベストセラー絵本です。
南座公演では、日を追うごとに評判が高まって、後半は連日完売が続くようになりました。

松也くんが今年3月、NHK文化センターの花形トークで「今年中の再演決まりました」
とおっしゃっていましたので、演舞場あたりかなと思っていたら歌舞伎座の本興行で、獅童さんのお母様がご存命ならどれほどお喜びだったかと思います。


歌舞伎座 十二月大歌舞伎 第一部
新作歌舞伎 「あらしのよるに」
原作: きむらゆういち 
脚本: 今井豊茂 
演出・振付: 藤間勘十郎
衣装: ひびのこずえ
出演: 中村獅童  尾上松也  市川中車  中村梅枝  中村萬太郎  
市村竹松  市村橘太郎  河原崎権十郎  市村萬次郎 ほか

2016年12月18日(日) 11:00am 歌舞伎座 3階3列センター


2015年9月南座で観た感想はこちら


今回の再演にあたって
ぎろ: 市川月乃助 → 市川中車
ばりい: 片岡千壽 → 市川猿弥
という配役変更がありましたが、他の主な配役は初演のまま。
脚本、演出も大きな変更点は見られないようでした。


ある嵐の夜、真っ暗闇の山小屋で偶然出会ったオオカミのがぶ(獅童)とヤギのめい(松也)。
喰う側であるオオカミと喰われる側のヤギ。
二匹は、お互いの素性に気づかぬまま夜通し語り合い、心を通じ合わせて友だちとなりました。「あらしのよるに」を合言葉に再会し、互いの姿に驚きながらも、それぞれの仲間たちに内緒で友情を育んでいきます。
しかし、それはついに仲間たちの知ることとなり・・・というストーリー。

オオカミやヤギといった動物の世界のお話ながら、そこに描かれる友情や親子の情、いじめや権力争い、裏切りといった内容は、そのまま人間社会にもあてはまって普遍的。
とんぼを切るオオカミたち、立廻りやだんまり、六方といった歌舞伎の様式美。
♪ 腹へった 喰いてぇな 腹へった 喰いてぇな とがぶを挑発したり、メリーさんの羊を演奏したりと遊び心たっぷりの義太夫と下座音楽。
ダークな色と白い色にシンボライズされた凝った衣装。
白い布と紙吹雪を使って、すべて人力で表現する雪崩の演出。
そしてもちろん、役者さんたちの熱演。
すべてがピタリとキマって、とても楽しく見応えのある舞台でした。


最初に観たのが南座で、しかも最前列かぶりつきの席でしたので、歌舞伎座の3階から観ると、全体を見渡すことができる反面、歌舞伎座の大きさにハマりきれていないかなと感じる部分がなきにしもあらずかな(あの吹雪の場面なんて南座で観た時はもっと迫力あrように感じた)、とか
猿弥さんのばりいもいいけれど、他の二人(・・というか二頭?)が関西弁なので(じぐの松十郎さんとざくの千次郎さん)、やっぱりばりいも関西弁でお願いしたかったな、とか
ぎろは月乃助さんが抜群に色っぽくてカッコよかったよな、とか
細かい点はいろいろありますが、やはり楽しい演目です。


獅童さんはさすが思い入れのある作品の2演目ということで、がぶをすっかり自分のものにしている印象。
気が弱いがぶのやさしい語り口と、雪崩で記憶をなくした後の捕食者としての本能とむきだしの太い声との切り替えも鮮やか。
竹本さんに「うるさいよっ!」と言って竹本さんが「プイッ」と横をむく、なんてあたりもすっかり手の内です。
めいと客席を降りて歩く時、「こんなところに綺麗なお花が」と最前列の女の子の頭を撫でていらっしゃいました。

松也くんのめいも盤石。
男なのか女なのかわからない中性的な感じが、綺麗なお顔にハマっています。
南座のころより少しほっそりしたかな?

中車さんのぎろ。
演技力には元より定評がありますが、見得をしたり、花道の引っ込みやだんまりといった歌舞伎の所作が一番多い役だったのではないかしら。
中車さん、大奮闘だと思います。

そしてやはり、みい姫の梅枝くんが印象的。
動物たちの中で(みい姫もヤギではあるのですが)、あくまで正統派の歌舞伎の姫君。
声もよくて、いつも本当に何でもできるなぁと感心してしまいます。

あと、はくの竹松くんが1年観ない間に大きくなっていて、たぷの萬太郎くんとほとんど変わらない背丈でした(笑)。

みい姫といえば、私のお隣の席が幼稚園の年長さんという6歳の男の子だったのですが、みい姫がめいと月を見上げる場面で、しきりと後方を振り向くので、何が気になっているんだろうと思っていたら、みい姫の視線の先に月があると思ったのかな。
それはすなわち、そこに本当に月があるように視線を送る梅枝くんの上手さでもある訳ですが。

この隣の男の子は雷がコワイらしく、あらしの雷鳴轟く場面ではママにしがみついてダウンコート頭からかぶっていましたが、クライマックスのオオカミとヤギの乱闘シーンでは前の席に身を乗り出さんばかりにして観入っていました。
いや~、心がピュアなお子さんは反応がダイレクトで楽しい。
お母様が終演後、前の席の人に謝りながら、「絵本で知っている話なので」とおっしゃっていました。
この観劇が彼にとって、「歌舞伎を好きになる」とまではいかなくても、ナマの舞台のおもしろさを知るきっかけになってくれたらすばらしいなと思います。


gabmay.jpg

がぶ&めい with Christmas tree



あんなピュアな目と心、忘れちまったな のごくらく地獄度 (total 1677 vs 1682 )




posted by スキップ at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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