2016年08月29日

蒼い血を流すトート  宙組 「エリザベート」


elisabeth2016.jpgウィーンで誕生したミュージカル「エリザベート」の日本初演は1996年。
宝塚歌劇団雪組(主演: 一路真輝・花總まり)によるものです。
今年は初演から20周年となるメモリアルイヤー。
さらに宙組公演初日は宝塚の「エリザベート」上演900回目というメモリアルデイでした。

昨年帝劇で東宝版「エリザベート」を観た時、朝夏まなとさんはじめ宙組メンバーも観にいらしていたこともあって、「2016年にエリザやるのは宙組ではないか」と早くから噂にのぼっていました。
今の各組トップコンビや他のスターとのバランスからも、宙組が一番ハマるのではないかな、と私も思っていました。


三井住友VISAカード ミュージカル
「エリザベート -愛と死の輪舞-」
脚本・歌詞: ミヒャエル・クンツェ
音楽: シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション: ウィーン劇場協会
潤色・演出: 小池修一郎 
演出: 小柳奈穂子
出演: 朝夏まなと  実咲凛音  真風涼帆  愛月ひかる  寿つかさ  純矢ちとせ  
澄輝さやと  蒼羽りく  桜木みなと  伶美うらら/悠真倫 ほか

2016年8月13日(土) 3:00pm 宝塚大劇場 1階10列センター/
8月14日(日) 3:00pm 1階21列センター



2014年 花組以来 2年ぶりの宝塚版エリザベート。
私を含めて、客席のほとんどの人がストーリーも曲もよく知っている上に、他組版や東宝版も観ていると思われ、そんな中で名曲難曲を歌い上げ、演じるのはどれほどプレッシャーでしょう。
しかしそこは朝夏まなとさん、実咲凛音さん筆頭に歌えるメンバーが揃い、重層的なコーラスにも元々定評のある宙組。
長身脚長揃いでビジュアルも完璧。
正統派の雰囲気と現代的なシャープさを併せ持つ美しくドラマチックな「エリザベート」の世界を描き出していました。

いや~、やっぱりいいわ、エリザ。


昨年東宝版を観て、実況録音CDをヘビロテでかなり聴き込んでいましたので、東宝版との違いが自分史上最もクリアになりました。

トート主演ということばかりでなく、台詞や歌詞が違っているところ、結構あるのね。
「パパみたいに」でパパが「親戚づきあいがペストみたいに嫌いなんだ」という台詞も違っていることに今さら気づきました。
清く正しく美しいタカラヅカだから、「ペスト」なんて言ったらいかんのか?(笑)

東宝版にはあるけど宝塚版にはない場面もチラホラあって、「ロミオ&ジュリエット」は宝塚版が好き、「1789」は東宝版が好き、「エリザベート」は両方好き・・・な私ですが、一幕終りだけは断然東宝版。
やはりあの扇パシッがないと。ここは譲れないところです。
「私が踊る時」の歌詞もシシィの「勝ったのね」で始まる東宝版の方が好き。

「ミルク」の合唱は宝塚版の方が断然迫力あります。
物量的に人数が多いというのもありますが、民衆を煽るのがトート閣下で、その閣下を中心にエルマーもシュテファンも民衆もみんな銀橋に出てきて、これでもかと客席に向かって歌うミルク。
怒りや苦しみがパワーを漲らせつつダイレクトに伝わってくるよう。

名曲揃いですが宙組は歌唱力にアナのある人がほとんどいないので、とても耳に心地いい。
特に朝夏まなとさんののびやかで力強い歌声はいつまでも聴いていたいくらいです。

朝夏まなとさんのトートは宝塚独特の銀髪ではなく黒髪に紫や青のメッシュが入ったストレート。
衣装もレザーで体にフィットしているのでクールでスタイルのよさが際立ちます。
ほとんど表情を崩さずスックと立っているのに、エリザベートに拒否された時は胸を押さえて顔を歪めたり、悔しそうな表情にもなる結構ナマナマしい面を持つトート。
冷たさと妖しさと不気味さ、それに熱さと色っぽさと人間味を加えた朝夏版オリジナルトートです。
「愛と死の輪舞」の歌詞にあるように、本当に「蒼い血を流す傷口」を持っていそう。
繰り返しになりますが、歌唱はすばらしくて、歌い上げるところも、低音で静かに響かせるビブラートも美しい。
黒天使とともに歌い踊る「最後のダンス」 カッコよかったぁ~。

実咲凛音さんのシシィ。
タイトルロールとはいえ宝塚版では主役をトートに譲った形ですが、やはりこの役がしっかり演じ歌えていないと始まらない演目。
実咲さんは今の各組トップ娘役の中で最もシシィ役にぴったりと誰もが思うところですが、その期待を違えることなく熱演。
歌は安定の巧さで、「私だけに」の高音もすばらしいし、地声とファルセットの切り替えもとても滑らか。

鏡の間は、あの白いドレスでシシィが出てきたところから見とれて、♪お言葉 嬉しく伺いました  陛下と共に歩んで参ります・・に聴き惚れて、トート閣下がオケピから出てくるところを見逃してしまいました。2回観て2回とも

ここ、あの「扇パシッ!がないと・・」と前述しましたが、シシィの歌にかぶせる「お前しか見えない 愛しているエリザベート~~」という朝夏トート閣下の歌声、圧巻でした。
これが一幕の終わりですから、まさに「トート主役のエリザベート」です。

年をとるごとにどんどん「エリザベート」になっていく実咲さんシシィですが、少女時代は意外にも少し苦戦しているご様子。
これを観ると花總さんシシィってやっぱり奇跡だなと改めて思います。

フランツは真風涼帆さん。
真風さんはどちらかといえばルキーニのイメージでファンもそれを望んでいたようなフシがありますが、宝塚版で二番手の役はやはりフランツ。
この真風さんフランツが青い軍服を着た若い頃の美青年ぶりから年老いるまで、ずーっとカッコよくて、だから妻とも息子とも心に溝ができてしまうのが一層切なくて、こんなにフランツに心を寄せたのは初めてです。
そして真風くん、歌もうまくなったよね~。

ルキーニは愛月ひかるさん。
初日あたりは「硬い」という感想も散見しましたが、私が観たころにはずい分こなれていて、アドリブも軽々こなしていました。
浅黒く野性的につくったビジュアルもお似合い。歌も私はみんなが言うほど悪くないと思っています。
いろんな意味でこの役で一皮も二皮もむけてほしいです、愛ちゃん。

ルドルフは3人の役替りですが、私が観た2回は澄輝さやとさん。
繊細でとてもやさしい心の持ち主だということが感じられるルドルフ。
孤立無援になって、ただ一人頼りにしていたママからも拒絶された時の彼は切なくて痛々しくて、見ているのが辛いくらいでした。
「もう・・これ以上、生きるあてもない」とつぶやく打ちのめされたルドルフに情け容赦なく「死にたいのか」とイケボで言い放つトート閣下って、どーなん?

13日は役替わりAの初日だったのですが、蒼羽りくさんのエルマーがとてもよかったです。
いつもギラギラ燃える強い眼をしていて。髭も精悍で似合ってました。

他に印象的だったのはマダム・ヴォルフの伶美うららさん。
美人揃いのマダム・ヴォルフのコレクションの中でも一番の美人さん。
派手なドレスやメイクに全然負けていない迫力美貌です。
課題の歌も、地声ばかりのナンバーは(アムネリスの時もそうだったけれど)全くOKです。

純矢ちとせさんのゾフィ、悠真倫さんのマックスパパは歌も演技も安定の上手さ。
子ルドの星風まどかちゃんが、聡明そうな美少年で歌声ものびやかで、娘役の時よりむしろ好きかも(笑)。


フィナーレでは「闇が広がる」の男役群舞がとにかくカッコいい。
朝夏さんが去った後、真風くんセンターで踊るのですが、とにかくカッコいい(大切なことだから2回言いました)。
フロントラインに長身イケメンが揃う宙組の男役群舞、やはり華やかで迫力あって、夢を見られます。

その中にあって、決して長身ではないのにキレのあるダンスで目を引く人がいて、オペラあげてみたら和希そらくんでした。
そういえば黒天使の時も同じように感じてオペラあげたらそらくんだった・・・やはりデキる人は目立つのですね。

群舞を抜けた朝夏さんは着替えて実咲さんとデュエットダンス。
銀橋走りながらビュンとジャンプするの、凄い。「え!今飛んだ?」と巻き戻して見てみたかったです。
脚はもちろん、腕も長いのでゆったりした動きもエレガントでとても綺麗。最後のキメポーズの美しさも、あの腕の長さだからなせるワザ。



何度観てもあきない「エリザベート」
役替りBもCも観たかったけれどチケットも時間もない のごくらく地獄度 (total 1621 vs 1624 )



posted by スキップ at 23:33| Comment(2) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
再びこんにちは。

宙組「エリザ」私も拝見しましたし、いろんな方のレポも見ましたが、それぞれ感じ方が違っていて、とても面白かったです。

スキップさんは、確か私の2日後のご観劇だったかと。あっきールドルフ、いい感想が多く、こちらもぜひ見たかったなぁと。
役替わり大変だったと思いますが、今回特に3人ともそれぞれ個性があって、すべて見た方は楽しめたのでは?!

東宝版もご覧になってるスキップさん。その対比の感想も興味深かったです。いつかは私も東宝版を見たいのですが・・・

さて、宝塚版は次はどの組で、どのように進化して再演されるんでしょうね。
Posted by はぎお at 2016年09月04日 13:28
♪はぎおさま

そうそう、はぎおさんがご覧になった2日後でした(^^ゞ
あっきールドルフ、とてもよかったです。

東京のチケットも取っていて、上京する日がまたまた
あっきールドの日で、今回はご縁があったなぁ、と。
(諸般の事情でその観劇は中止になってしまったのですが)
千秋楽ライブ中継も観に行くつもり(まだチケット抽選結果待ちですが)
で、ずんルドかな?と楽しみにしています。

東宝版も宝塚版も複数パターン観ているのですが、
これまでは2つの間隔が結構あいていて、東宝版観た時には
宝塚版の細かいことは忘れてる・・・ということが多かったのに
今回は2014年花組→2015年東宝→2016年宙組と続きましたので、
記憶も鮮明で違いもよくわかりました。

宝塚もそうですが、今の東宝版は本当にチケ難ですので
次回は少し落ち着いてくれたらいいなぁと願っています。
その時にははぎおさんもぜひ!

Posted by スキップ at 2016年09月04日 23:17
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