2016年08月20日

467通目のラヴレター 「ラヴ・レターズ」


lovelettersclimax1.jpg本年8月7日をもって建て替えのため一時閉館したパルコ劇場。
そのラスト1週間を締めくくったのは朗読劇の金字塔とも言われ、パルコ劇場の財産でもある「ラヴ・レターズ」。

1990年8月19日に幕を開けて以来、一つの台本を、年齢も個性も異なった様々なカップルが読み継いできたリーディングドラマ。
オーラスのこの公演で、467回を重ねるそうです。

「ラヴ・レターズ」 2016 The Climax Special
作: A. R. ガーニー
訳・演出: 青井陽治
出演: 渡辺謙  南果歩

2016年8月7日(日) 1:00pm パルコ劇場 L列センター



ラスト公演ということで、劇場の方々が出迎え、関係者らしき人の姿も多く、祝祭ムードが漂います。
あの狭いロビーに、第1回目からのカップルの写真がズラリと並んでいました。
「この人も?」「あら、この人も」・・・と、懐かしい顔ぶれや今さらながら「聴いてみたかった」というカップルがたくさん。 吉右衛門さんと麻実れいさんのカップルなんて、どんなだったでしょう。
記念すべき第1回のカップルは、役所広司さんと大竹しのぶさんでした。

そして演出は初回からずっと変わらず青井陽治さんです。
青井さんの演出は、ストーリーの時代背景や社会情勢を4~5時間かけて解説し、どう読むかは基本的に役者さんにお任せなのだとか。
だからずっと同じストーリーでも役者さんによって、また同じ役者さんでも年齢やその時の状況によって表現が変化して、おもしろさが持続するのでしょう。


ステージには椅子が2脚とテーブル。
2人の役者さんが客席に向かった椅子に横並びで座り、朗読するだけのシンプルな舞台です。
お2人とも若い時代の一幕と、時を経てからの二幕では少し発声を変えていらしたように思います。
衣装もシンプル&ナチュラル。
二幕では謙さんはジャケット着用、果歩さんは眼鏡をかけてワンピースにロングカーディガンを合わせて。あ、靴も違っていたような。


物語は幼なじみの2人の男女の手紙のやり取りで展開します。
真面目で誠実で、手紙を書くことが大好きなアンディー。
芸術家肌で自由奔放、感覚人間のメリッサ。
小学2年生から始まって、思春期を迎え、お互いを意識し始める2人は、
ある夜「その時」を迎えながら友達以上になれない自分たちを発見します。
やがて大学を出てそれぞれの人生を歩む2人。
海軍に入り、除隊後は弁護士として活躍した後、上院議員となるアンディー。
画家となり、行き詰まりから精神的に追い詰められていくメリッサ。
時を経て、求め合うように結ばれた2人ですが・・・。


「ダディ・ロング・レッグス」でも感じましたが、何でもメールという時代の今、
手紙っていいなぁと改めて思いました。

やり取りされた手紙の朗読だけで綴られますがが、聴いていると折々の2人の状況やその時の心情が手に取るように見えてきます。
交互に読むばかりでなく、時にはどちらかに一方通行になったりしますが、そこには、アンディーなりの、メリッサなりのその時の事情や家庭環境や時代が背景にあるのも感じられたり。

「ラヴ」という意味では、よくあるすれ違いの物語なのだけど。
聴いている私たちにはお互いに心を寄せ合っているのはわかるだけに、何度もそうなるチャンスがありながらうまくいかない2人がもどかしい。
お互いが自分の結婚式に堅苦しい言葉の招待状を出し、2人ともが同様に堅苦しい言葉で欠席の返事を出すなんてね(笑)。

どちらかといえば子ども時代から若い頃までは、メリッサの方が自由で、アンディーは片思いっぽい。
メリッサにとってアンディーは、真面目で頭も育ちもよくて、いつも自分のことを好きでいてくれる幼なじみの男の子。
どんな時も、たとえ自分は結婚していても、変わらず自分を守ってくれるに違いないアンディー。
その思いをずっと持ち続けていたのかな。

いつの間にか、幸せな家庭を得て、仕事でも成功し、地位も築いているアンディー。
それでも変わらず温かい心のこもった手紙を届けてくれるアンディー。

辛くて1人ではいられない時、昔から変わらず優しくしてくれるそんな人にすがってしまう
・・・よくドラマにも登場する、こういうタイプの女性が、実は私は大嫌い。
それなのに、この時のメリッサには心を寄せることができました。自分でも何だか不思議な感覚です。

それは一つには、南果歩さんの朗読によるところが大きいと思います。
メリッサの奔放さも、それと表裏一体の脆さも、果歩さんの雰囲気によくハマっていて、とても魅力的にも切なく哀しくも感じられました。
一方の渡辺謙さんは相変わらずいい声で、誠実なアンディーにイメージぴったり。


50年間にもわたってやり取りしたラヴレターの最後の1通は、アンディーからメリッサにではなく、
メリッサのママ宛のものでした。
自殺してしまったメリッサの死を悼む手紙。
「彼女以上の友情を築ける相手はいなかった」と綴るアンディー。
照明がだんだん暗くなっていき、ほの暗い中に浮かび上がる立ち上がったアンディーと
その彼を見守るように立ち上がるメリッサ。
「さようなら」と言うアンディーの耳に
「ありがとう アンディー」というメリッサの声は届いたでしょうか。


渡辺謙さんと南果歩さん。
ともにパルコ劇場に思い入れのあるステキなお2人でこのファイナル公演を締めくくれたことは
パルコ劇場にとっても「ラヴ・レターズ」にとっても幸せなことだったと思います。
さすがに声だけでも芝居心たっぷりで、とても聴き応えがありました。

ただ、お2人は特に最近、「ご夫婦」というイメージが先行して、だから、このすれ違いの切ないラヴレターの物語にはそのイメージが些か邪魔するかなぁと感じました(私の思い込みかもしれませんが)。
カーテンコールのたびに、謙さんが腕を差し出して、仲良く腕を組んではけていく2人は本当に仲良く幸せそう。

そのカーテンコールでは客席で観劇されていた訳・演出の青井陽治さんを舞台に呼び込んで3人で笑顔。客席に向かって拍手もされていました。


IMG_4412.jpg終演後、フジテレビの笠井信輔アナウンサー(客席でご覧になっていました)の進行でパルコ劇場の「手締め会」が開催されて、客席も一緒に手締めできるということでしたが、次の予定があって参加できなくて残念。

ロビーにはこんなハートのメッセージボードにもたくさんの思いがあふれていました。




パルコ劇場 次に会えるのは2019年。しばしお別れです のごくらく地獄度 (total 1616 vs 1620 )



posted by スキップ at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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