
12月10日が大千秋楽でした。
全部で4回観ましたが、観るたびに楽しさが増した舞台。
「私にとって『POB』は、“ミュージカルへのラブレター”のような存在です」とプログラムのプロフィール欄に書いたのは、マリアンド・トーレスさん。
本当にそのとおり。
私にミュージカルの楽しさ、すばらしさを再認識させてくれた作品となりました。
オムニバスのように、ミュージカルのいろんなシーンが次々現れますが、どんなに短い場面でも役に入り込んで、まるで情景が見えるようなすばらしい歌と演技の数々。
という訳でキャスト編。
とは言うものの、私はミュージカルにもミュージカルスターにも全く詳しくなくて、キャストの感想といっても「すっごーい」とか「すばらしいっ!」とかしか出てきません。
ですから、そのキャストの方が演じられた印象的な場面を振り返るという趣向でいきたいと思います。
ワールドプレミア ミュージカル 「プリンス・オブ・ブロードウェイ」
演出: ハロルド・プリンス
共同演出・振付: スーザン・ストローマン
2015年12月3(木) 6:30pm 梅田芸術劇場メインホール 1階13列センター/
12月5日(土) 12:30pm 1階2列下手/12月6日(日) 1階5列センター
11月28日 大阪初日の感想はこちら12/3にロビーで撮ったこのキャスト表の順に。

男性キャスト4人の中 一番細身で、時に少年のような面影も漂わせるジョシュさん。
歌もお上手ですが芝居心もたっぷり。
そんなジョシュさんで印象的なシーンは、
「キャバレー」のMC
「蜘蛛女のキス」のモリーナ
MCは、顔も白塗りして、歌詞も(私のヒアリングする限り)、ドイツ人が発音する英語になっていました。
「蜘蛛女のキス」はずい分昔に映画を観たことがあるのですが、その中でもリーナを演じていたウィリアム・ハートはなかなかガタイがよかったので(笑)、本当のモリーナはこんな感じだったのではないかなと思いました。
ゲイ風の身のこなしとか手の仕草など細かいところまでつくり込んでいました。
歌詞の最後、Thank you very much! のところ、千秋楽は「アリガトウゴザイマス」とおっしゃったとか。

シュラーさんは、「くたばれ!ヤンキース」の監督も楽しかったですが、やはり、
「屋根の上のヴァイオリン弾き」のテヴィエ
「スウィーニー・トッド」のトッド
貧しいけれどいかにも気の良いユダヤ人といった風情の牛乳屋テヴィエ、無実の罪に陥れられた悪徳判事への復讐に燃えるトッドと全くタイプの違う役を見事に演じ分け、歌い分けていらっしゃいました。
公演の終盤、体調を崩されて2日間休演されたそうですが、千秋楽には無事復帰されたそうで何よりでした。

ミュージカル知らずの私でも、その名を知っていたラミンさん。
「オペラ座の怪人」のファントム、そしてブロードウェイの「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャン役として日本でも人気の俳優さんです。
いろんな場面でその美声を響かせてくれていましたが、圧巻は
「ウエストサイト・ストーリー」のトニー そして
「オペラ座の怪人」のファントム
「ウエストサイド・・」のSOMETHING’S COMINGからTONIGHTへの流れは本当にミュージカルのワンシーンを観ているようでした。
そして、ファントム。
初日に「オペラ座の怪人」のあのダーン ダダダダダーンという前奏が流れただけでも背中がゾクッとしました。
シンプルなセットですが、白い仮面をつけマントを纏ったファントムが登場すると一気にオペラ座の世界へ。
THE PHANTOM OF THE OPERA を歌い上げるラミンさんファントム。
この曲、私が記憶しているメロディよりかなりアレンジ加えられている印象ですが、もうすっかりラミンさんの歌声に塗り替えられてしまいました。
THE MUSIC OF THE NIGHTはもう圧巻。
力強さと哀切がこもっていて、クリスティーヌでなくても聴き惚れて陶酔してしまいます。
あと、短い出番ですが、「エビータ」のチェの髭面、そしてもちろん映画から抜け出てきたような「スーパーマン」もかなり印象的。

ナンシーさんは、「スウィーニー・トッド」のミセス・ラヴェットも印象的ですが、もうひとつ。
「キャバレー」のシュナイダー夫人。
最初はキュートなゴリラで登場してMCとダンス。
着ぐるみを脱ぐとナンシーさんで、SO WHAT?を切々と。
~ Sun rise, Sun set~ という歌声が今も耳に響いてきます。

迫力のヴォーカルをたくさんの場面で聴かせてくださるブリヨーナさん。
圧巻はやはり「キャバレー」のCABARET
Life is Cabaret~ という歌声を聴いて、そうそう、「キャバレー」ってこんなミュージカルだったよなぁとアリアリと目に浮かんできました。
「シー・ラヴズ・ミー」では初めてのデートに不安を隠せない内気なアメリア。
「ショウ・ボート」では肝っ玉母さん風の使用人クィーニー(ちょっと「風と共に去りぬ」のマミーみたい)。
歌唱の音域同様、演技の幅も広いブリヨーナさんでした。

エミリーさんで最も印象的な場面は「リトル・ナイト・ミュージック」のSEND IN THE CLOWNS
はっきりと心を決めない恋人(不倫相手)に
「私は地上にいるのに、あなたはまだ空に浮かんでいる。
道化を呼んでちょうだい。ああ、やっぱりいいわ。ここにいるから。」
と静かに歌うデジレ。
何もない舞台で、ひとりただ椅子に座って、あの歌を聴かせるってすごいなぁと思いました。

マリアンドさんの登場シーンで最も印象に残ったのは「エビータ」です。
今回POBに出てきた作品で、私が観たことのないミュージカルで一番観てみたいと思ったのがこれ。
貧しい村を出てブエノスアイレスについたエヴァが歌う BUENOS AIRES
のパンチの利いた躍動感あふれる歌唱。
ファーストレディとなって、ドレスアップして民衆の前で歌う DON’T CRY FOR ME ARGENTINA
雰囲気も歌唱もガラリと変わっています。
どちらも耳覚えのある曲で、「エビータ」の曲だったのか、と今更ながら(笑)。

幕開き
たった一人で舞台に立ち、ALL I NEED IS ONE GOOD BREAKを歌い始めるケイリーさん。
人ってあんなに伸びやかで透明感のある声で歌えるんだ、と思いました。
しかも高音になっても歌詞がしっかり聴き取れてすごい。
さすがにブロードウェイ最年少クリスティーヌに抜擢されただけのことはあります。
そんなケイリーさん、もちろん「オペラ座の怪人」のクリスティーヌもすばらしかったですが、何といっても「ウエストサイド・ストーリー」のマリアがとてもよかったです。ラミンさんトニーとのあのバルコニーのシーンはまんまミュージカルの一場面でした。
「ローマで起こった奇妙な出来事」の美しく可愛らしくいることだけ教えられて育って、計算もできず人の名前も覚えられないフィリアもとても可愛かったです。

柚希さんの2つのダンスシーンのパートナー トニーさん。
今までリフトする側の柚希さんしか観たことがなかったので、トニーさんに軽々とリフトされる柚希さんを最初に観た時は感激でした。
トニーさんのおかげで柚希さんのダンスも一層映えて、トニーさん、柚希さんと組んでくれて本当にありがとう、という気持ちだったのに、
プログラムにこんなこと書いてくださっていて、感涙
「ダンスシーンで組む礼音は、優雅で美しくて、努力家で挑戦を厭わないし、ダンスで自分らしさを表現できる。すべてを備えたスターですね。人としても温かくて、最高のパートナーです。」
そんなトニーさん、他にも数々の場面でご活躍ですが、何と言っても圧巻だったのは、
「フォーリーズ」の THE RIGHT GIRL
かつての恋人 マージのことを思いながらうまく愛せなかったという心の葛藤を歌と迫力のタップダンスで表現。
このタップダンスが超絶過ぎて、今まで私が観てきたタップって何だったの?と思うくらいです。
拍手も忘れて見入っていました。
これ、もし映像化されたらエンドレスでリピートしてしまいそう。
タップ終盤でターンする時にパッ パッ と飛び散る汗までカッコよかったな。

ハロルド・プリンスさんの指名でハロルドさん役のナレーションを担当した市村さん。
いかにも市村さんでした(笑)。
市村さんはまだ無名だった劇団四季時代、「オペラ座の怪人」で別の役のオーディションを受けたのに、ハロルドさんにファントムのパート歌ってみて、と言われて、それが認められて抜擢されたというドリームストーリーの持ち主。ハロルドさんとはそれ以来の長年のお付き合いということですが、「人生は運で決まるのか?」というハロルドさんがこの作品に掲げたテーマも体現する一人ですね。
そして


柚希さんの出演シーンについては初日の感想に書きましたので繰り返しませんが、回を追うごとによりのびのび、舞台を楽しんでいる様子が感じられてうれしかったです。
それと同時に、柚希さんがあの舞台に立つまでに、その舞台を楽しむまでに、どれほどの努力があったのだろうと、胸が熱くなる思いです。
柚希さんがこの舞台に出演しなければ、私はこのすばらしいキャストの方々を知ることも、ミュージカルのすばらしさを改めて知ることもなかったはず。
そんなことも含めて、柚希さんのこの舞台への挑戦に、心からの拍手と感謝を贈りたいと思います。
千秋楽の場所にいられなかったのは残念でしたが、ステージ、客席ともに盛り上がった様子をTwitterで楽しく読ませていただきました。
そして、キャストの皆様がそれぞれ、Thank you, Japan!! You are wonderful! とか、Thanks for a wonderful experience, Japan. とか、
口々にgratitudeと喜びの言葉をTwitter, Instagram, Facebookなどにアップされているのを読んでまた感動したり。
そう。
今回の舞台はミュージカルの素晴らしさを再認識させてくれたのはもちろんですが、来日中 キャストの皆様が InstagramやTwitterを通じていろいろな情報を発信してくださっていて、その愛すべきお人柄に触れて一層親近感が高まったという意味でも、私にとってとりわけ印象的な公演となりました。
Arigato & WAIT ‘TIL YOU SEE WHAT’S NEXT のごくらく度


