2015年12月08日

なぁ 善次郎 私はええ買い物したなぁ  雪組 「銀二貫」


gin2.jpg注目の若手スターがきら星のごとく集まる宝塚歌劇団95期生。
各組すべてにバウホール主演者がいます。
雪組はこの人 月城かなと。
得意の日本もので勝負です。


宝塚歌劇雪組公演 
浪華人情物語  「銀二貫」 
—梅が枝の花かんざし—

原作: 髙田郁
脚本・演出: 谷正純
出演: 月城かなと  有沙瞳   奏乃はると  
香綾しずる  久城あす/英真なおき  華形ひかる ほか  

2015年11月23日(月) 2:30pm 宝塚バウホール 12列下手



物語: 舞台は江戸時代の大坂。
天満の寒天問屋「井川屋」の主人・和助(華形ひかる)は、武士の仇討の場面に出くわし、切りつけられ瀕死の父をかばう少年の姿に、持っていた銀二貫を差し出し、「わてにこの仇討ち、買わせてください」と申し出ます。
その銀二貫は、大火で焼失した天満宮再建のために寄進するために貯めたものでした。助けられた少年・彦坂鶴之輔は、武士の身分を捨て、松吉(月城かなと)と名を改めて井川屋の丁稚として生きていくことになります・・・。


原作は「みをつくし料理帖シリーズ」でも有名な高田郁さんの作品ですが、読んでいなくて、昨年、林遣都くん主演でNHKでドラマ化されたことも知っていましたが、見ておらず、今回初見。

武士の息子でありながら、身分を捨て商人として生きていく松吉が、情け深い周囲の人々に支えられ、色々な困難に立ち向かいながら成長していく姿が、料理屋の娘・真帆との恋もまじえながら描かれます。

とてもよかったです。
いかにもバウホールらしい佳作で、丁寧につくられた印象。
大火に見舞われたり、真帆さんの行方がわからなくなったり、寒天が手に入らないピンチに陥ったり・・・様々な事件が起こりながら、そのたびごとに人の情けや温かさが感じられ、悪人がいないというか、相手のことを思いやる人ばかりで、天満宮に梅の花が満開になる中のハッピーエンドも心温まる思いでした。


月城かなとさん筆頭に雪組の若いチカラはもちろんのこと、英真なおきさん、華形ひかるさんの番頭はん旦さんんコンビがすばらし過ぎます。
原作を読んでいないのでどれくらい脚色されているかわからないのですが、松吉とともに、和助、善次郎はもう一方の柱だな、と。

お店を切り盛りする番頭の善次郎さんは、和助が天満宮へ寄進するための銀二貫を松吉のために使ってしまったことにやり切れない思いを感じていて、店の経営状態からも丁稚を一人増やすことも気が進んでいない様子。
武士のくせがいつまでも抜けない松吉に厳しく当たったり、真帆にもそれほどよい感情を抱いていないようにも感じられますが、大火で行方不明となっていた真帆が現れ、これからはおてつとして生きていくから真帆のことは忘れてほしいと言って去って行こうとした時、きっちり正座して両手をつき、
「こいさん よう生きていてくれはりました」と頭を下げる姿にたまらず涙こぼれました。
善次郎もまた、火事にまつわる辛い過去を背負っていたことがこの言葉と所作だけで感じられる演技。
英真なおきさん、絶品です。

そんなすべてを受け容れて立つ井川屋和助。
経営者としての厳しさも度量の大きさも、浪花商人の茶目っ気も持ち合わせていて人情味たっぷり、その上オトコマエで色っぽい。
華形ひかるさんがここまで年配の役をされるのは初めて観ますが、代表作の一つになるのではないかしら。

「曽根崎で心中した徳兵衛はんが返されへんかったんはいくらか知ってるか?」
という善次郎さんの台詞を聞いて、「はっ!『銀二貫』じゃん!!」と、そこでやっと「曽根崎心中」に思い至った歌舞伎ファンにあるまじき不肖スキップですが(原作者の高田郁さんは、「曽根崎心中」の「銀二貫」からこの物語を着想されたのだとか)、そこから「曽根崎心中」の人形浄瑠璃へと入っていく演出もよかったな。
お初の桃花ひなさんが綺麗で人形振りがとてもお上手でした。
月城かなとさんの徳兵衛も憂いがあって、いつか本役でも観てみたいと思いました。

こんな演出、前にも観たよなぁ と思って自分のブログ検索したら、2012年花組の「近松・恋の道行」でした。あの時も「曽根崎心中」だったのね。


月城かなとさんは歌も繊細なお芝居もとても安定。
華やかなビジュアルなので、丁稚ってどうなの?と思いましたが、元は武家の子で、「背筋が伸びた言葉づかいも丁寧な変わった丁稚さん」がよくお似合いでした。
松吉はどちらかといえば受けのお芝居が多くて、戸惑っていたり、悩んでいたりしますが、そのあたりも丁寧に演じていて上手いなぁ。

真帆の有沙瞳さんも歌、芝居とも定評のある娘役さんですが、ちょっとチカラ入り過ぎてたかなぁ。
台詞がとても明瞭で上手いのですが、ハキハキし過ぎというか・・もう少し緩急が欲しいところ。
特に火事で火傷をおってしまった後の真帆/おてつはもう少し弱々しい部分もあっていいんじゃないかな、と思いました。

松吉の先輩丁稚の梅吉が、山城屋さんから婿養子にと乞われた話を一度断っておきながら、山城屋が立ち行かなくなってからご恩返しをする時とばかり養子となることを決めるあたりの逸話はサラリと流れていて、原作だともっと丹念に描かれているのかなぁとも思いますが、梅吉を演じた久城あすさんの好演もあって、「松吉、お別れや」という別れのシーンはとても印象的でした。

山城屋さんといえば山城屋惣右衛門の和城るなさん。
奥方様とお嬢様連れて井川屋にやって来て寒天を注文し、「これから人形浄瑠璃観に行くねん」「あんな心中もの何がおもしろいんやろなぁ」というのがいかにも裕福な大店の旦那さんっぽくてよかったです。


いろんなことがあって、年月が流れ、和助と善次郎の悲願ともいえる天満宮への銀二貫の寄進を三度目の正直で叶えた時、晴れて祝言の日を迎える松吉と真帆。
満開の梅に祝福された黒紋付の花婿さんに白無垢の花嫁さん。絵になります。
「このままで(火傷の跡を隠さずに)松吉さんのお嫁さんになりたい」と言う真帆に
「そのまんまがよろし」と応える松吉の包容力にあふれたやさしい笑顔。惚れるよね。

そんな二人を涙を浮かべて見守る和助と善次郎。
「なぁ 善次郎 私はええ買い物したなぁ」
「へぇ 旦那はん ほんまに安うて、ええ買い物でおました」

ここで幕が降りるのもとてもよかったです。



月城かなとくん カーテンコール最後は 「本日はおおきに。ありがとさんでした」とおっしゃっていました のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 1482 わーい(嬉しい顔) vs 1484 ふらふら)


posted by スキップ at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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