2015年11月10日

諸君 喝采を! 「No.9 -不滅の旋律-」

No.9.jpg一幕終り。
酒場でさっきまでラ・マルセイエーズを高らかに歌っていたフランス兵たちがウィーンの民衆と一緒になって
♪Freude, schöner Götterfunken, Tochter aus Elysium ~
と「歓喜の歌」を合唱するシーンに感動。
あの場面だけでもこの舞台観た甲斐あったなと思いました。


「No.9 -不滅の旋律-」
脚本: 中島かずき
演出: 白井晃
音楽監督: 三宅純
出演: 稲垣吾郎  大島優子  片桐仁  マイコ  加藤和樹  山中崇  高岡早紀  長谷川初範  田山涼成 ほか
ピアノ: 日下譲二  末永匡  佐藤文雄

2015年10月31日(土) 6:00pm オリックス劇場 1階14列センター



舞台は1800年のウィーン。
ベートーヴェン(稲垣吾郎)は聴覚障害という音楽家として致命的な障害に犯さていました。
幼い頃、父から暴力を伴う厳しい教育を受けてきたという心の闇を抱え、天才であるがゆえの傍若無人なふるまいは、時に奇行と捉えられていました。
そんな中、ピアノ職人ナネッテ(マイコ)の工房で、彼女の妹マリア(大島優子)と出会います。彼の横柄な態度に憤慨するマリアでしたが、衝突しながらもベートーヴェンの豊かな才能に惹かれ、やがて有能な片腕となって献身的に彼を支えていくのでした・・・。

「鳴らせ。私の頭の中の完璧な音楽。」というコピーがつけられた作品。
ベートーヴェンが最後の交響曲となった第9番を生み出すまでを、二人の弟、マリアやナネッテなど彼を取り巻く人々とともに、当時のヨーロッパ情勢をまじえながら描いています。


舞台上方左右に並ぶ大きなハンマーとそこから下がるピアノ線。
ステージ全体をピアノに見立てたような舞台。
上手袖に1台、下手に2台置かれたアップライトピアノで3人のピアニストが生演奏。
このピアノから奏でられるベートーヴェンの名曲たち。
ピアノの上前板が外されていて、より音がストレートに聞こえるとともに、ハンマーの動きも見えて、それが舞台上のハンマーとも共鳴しているように感じられる素敵な舞台装置でした。
(美術: 松井るみ)。

暗闇の中から現れたベートーヴェンが指揮するように手を動かすと、それまで不協和音的に聞こえていた音が音楽へと、ベートーヴェンの最初の交響曲第1番へと変わっている冒頭をはじめ、場面場面に散りばめられたベートーヴェンの名曲は白井晃さんの選曲なのだとか。もちろん私の知らない曲もあるのですが、「悲壮」「月光」「告別」「レオノーレ」と数々の名曲が奏でられる中、第九と並んで最も有名な「運命」を選ばなかったのも何だか白井さんらしいです。
私が大好きな第九の第三楽章が、一幕と二幕でⅠ回ずつ、心の動きを伝えるような場面で、ピアノで静かに奏でられたのもうれしかったな。

一杯のコーヒーに入れる豆の数にも神経質なこだわりを見せ、いつも苛立って大声で怒鳴り散らし、気に入らない人間は口汚く罵る・・・だけどそこには常人には量り知れないような苦悩や葛藤があり、繊細で研ぎ澄まされた感性を持ち、父親のトラウマを抱える愛おしくて切ないベートーヴェン像。そこにはそれを書いた中島かずきさんと演出した白井晃さんのオマージュや敬愛が込められているように感じます。そしてそんなベートーヴェンを渾身の演技で見事に描き出した稲垣吾郎さん、すばらしかったです。

幕間にはロビーで白井さんをお見かけしました。「演出家」として劇場にいる白井さん。
白井さんこだわりの演出も随所に見られましたが、ベートーヴェンが部屋で怒って投げ散らかした楽譜を、次の場面では、街の人々が「号外だ!」と拾って読みながら去って行く、なんて鮮やかさにはほほ~っと感心しました。

ナポレオンのアルプス越えの肖像画とか、♪ロシア遠征失敗~ のシーンとか、メッテルニヒとか、主ストーリー以外にもワタシ的にいろいろツボでした(笑)。


稲垣吾郎さんの舞台はこれまで何本か観てきましたが、ワタシ的に今回がベストアクトです。
今までどんな役を演じても何となくゴローちゃんが見え隠れしていましたが(それはそれで好きだけど)、この日オリックス劇場のウィーンにいたのは、凄味と脆さを併せ持つ狂気の天才音楽家 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンその人でした。
いろんなことに疲れたベートーヴェンが、ぽつんとピアノの前の椅子に座り、鍵盤に触れながら、「ピアノはいいな。弾けば必ず音がでる」とつぶやくシーン、とても切なくて、よかったな。
そんな切なさも心に秘めながら、父の影から逃れられず、それをそのまま甥のカールに投影させてしまうベートーヴェンがまた哀しくもあり。

これが初舞台という大島優子さんのマリアもとてもよかったです。
よい耳を持った勝気な少女が、ベートーヴェンの代理人として、意志の強い冷静な大人の女性に変貌していく姿を自然に見せてくれました。
その転機となる場面。
もうメイドをやめようとしていたマリアが散乱したベートーヴェンの楽譜を見て、
「ずるい。今日でやめようと思ってたのに何でこんな曲書くんですか?」
「あなたは最低の男です。でもあなたの音楽は最高です。それが自滅するのは許せない」と代理人となることを宣言するシーン、印象的でした。

そのマリアの姉・マイコさんもこう言っては失礼ながら見直しました。
マイコさんといえば、「龍馬伝」の岩崎弥太郎の妹役というイメージしかなく、可愛らしいお嬢さんという印象だったのですが、自分の仕事に誇りを持ったあんなに毅然とした強い女性を演じられるとは。


ラストはベートーヴェンの指揮で「歓喜の歌」の大合唱。
「第九を原語で歌えること」を特技の欄に書いていたこともある不肖スキップ、エア合唱しちゃいましたよ。まだ歌詞全部覚えてるし、また歌いたくなりました、第九。


「諸君、喝采を。喜劇は終わった」
というのがベートーヴェンの最期の言葉として知られていますが、
世間を驚かせた、最後を合唱で締めるという独創的な交響曲第9番への大喝采が、
ベートーヴェンの心の耳に届いたと信じたい。



IMG_0093.jpg   IMG_8702.jpg
 
さすがSMAPと元AKB ロビーは華やか




できればもう少し小規模の、音響のいいホールで観たかったです のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1466 わーい(嬉しい顔) vs 1467 ふらふら)
posted by スキップ at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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