2015年10月13日

本当のこと知らない方が幸せだってこと、あるよね 「語る室」

katarushitsu.jpgイキウメ主宰の前川知大さんが、「劇団からはみ出したもの」を上演する別館という位置づけのカタルシツ。
前作 「地下室の手記」は安井順平さんのほぼ一人語りでしたので、ずっとその路線で行くのかと思っていたら、今回は普通に劇団公演っぽい感じ。

会場に到着するまでタイトルを知らず、「語る室の何ていうお芝居?」と思ってポスター見たら、「カタルシツの『語る室』」だったという・・(自分でも毎回呆れるけどタイトルぐらい事前に把握しなさい)。


イキウメ別館 カタルシツ 「語る室」
脚本・演出: 前川知大 
ドラマターグ・舞台監督: 谷澤拓巳  美術:土岐研一
出演: 浜田信也  安井順平  盛隆二  大窪人衛  木下あかり  板垣雄亮/中嶋朋子

2015年10月10日(土) 6:00pm ABCホール A列センター


物語の始まりは2005年9月22日。
5年前(2000年)の同日、突然姿を消した幼稚園の送迎バス運転手と3歳の園児は、今も見つからないまま。
園児の母 美和子(中嶋朋子)とその弟の警察官 譲 (安井順平)、バス運転手の兄 宗雄(盛隆二)は毎月22日にバーベキューをしています。
ここに霊媒師 佐久間(板垣雄亮)、未来から来た?男ガルシア(大窪人衛)、父を亡くした兄妹(浜田信也・木下あかり)が加わって、それぞれの“独白”によって、事件の全貌が明らかになっていきます・・・。


「彼ら(劇中の人物)には謎のままだけど、観ている私たちは全部わかった」な終わり方。
新鮮でした。
緻密に張り巡らされたプロットが最後に一気に収束、ではなく、ジクソーパズルのピースを1つずつはめ込むようにじわじわと明らかになっていくところも。

そのピースをはめ込んでいくのは、登場人物たちの会話に挟まれる独白。
そしてそれは、観客だけが全員分聴くことになります。

「口から出まかせ。想像するとは、知らないことを思い出すことだ。」
とコピーがついていましたが、私のような凡人には「知らないことを思い出す」というのが今ひとつピンと来ない・・・。
霊媒師・佐久間の言う「記憶のプールにアクセスする」ということなのかな。彼らの中で唯一この霊媒師だけが真実に一番近いところに辿り着いているように思えます。
その彼が
「本当のことを知らない方が幸せだってこと、あるよね」
と、自分の手にある真実を、息子と兄を捜し続ける家族たちにあえて告げない選択をするところが印象的でした。

これ、よく聞く言葉ですが、本当にそうでしょうか。
非情な真実を知るのはとても辛いことだけれど、動かし難い「真実」だからこそ受け容れて乗り越えられる、ということもまたあるのでは。

失踪した息子がいつか帰ってくると信じて、痛みを持つ者同士で毎月のバーベキューをいつまでも続けることと、現実も絶望も受け止めて、その中で這いつくばりながらまた立ち上がろうとすることとでは、どちらが幸せかなんて本人じゃないとわからないのではないかしら。
いや、もしかしたら本人さえ、時間が経過して初めてわかることかもしれません。

偶然出会ったヒッチハイカーの大輔を、「いつもはそんなことしないのに」ふと魔がさしたように車に乗せて(盗難車だけどわーい(嬉しい顔))送ってやる束の間のドライブこそが、美和子が本当に求めていた、そしてあんなことがなければ実際叶ったかもしれない息子とのひとときだったことを思うと、何も知らない母子の姿が切なかったです。


精緻に構成された物語はさすがにおもしろい。
交番と緑の芝生と1本の大きな木がある公園。
そのワンセットの中でいろいろな場面が時空を超えて行き来し、交錯して、不思議な謎や人間関係がひとつずつほぐれていく展開。
超常現象もSFミステリーな面もありつつ、イキウメの本公演よりメロウで穏やかな印象。

役者さん皆達者で穴がないといった感じですが、特に息子が失踪した後、どんどん壊れていく美和子・中嶋朋子さんの迫真ぶりが際立っていました。

前回のカタルシツでどうしようもない男 独壇場だった安井順平さんが姉思いのわりと普通の人だったのは新鮮(笑)。
子どもがいなくなったことを知った姉の美和子から最初に電話がかかってきた時、安井さんが電話に向かって話しているだけで、その向こうで狼狽し混乱している美和子が目に浮かぶようで、上手いなぁと思いました。


お芝居終わって帰宅したら家人が見ていたドラマに伊勢佳世さんが出ていて驚く。。
劇団外でのご活躍も目立ちますが、次回作「太陽」にはご出演 のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1451 わーい(嬉しい顔) vs 1453 ふらふら)
posted by スキップ at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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