2015年07月27日

その一歩 「ヒッキー・カンクーントルネード」

hickey.jpgかねてより興味があって観てみたいと思っていたハイバイ。
関西の公演がなかったり、東京でのスケジュールがなかなか合わなかったり。
2012年 主宰の岩井秀人さんが初めてパルコ劇場に進出、これまた私の大好きな役者さんである吹越満さんが主演した「ヒッキー・ソトニデテミターノ」をチケットまで取っていたのに諸般の事情で観に行けなくなってしまって、それがまた後ですこぶる評判のよい舞台だったと知って悔やむことしきり。

あれから苦節3年(笑)。
岩井秀人さん作・演出のハイバイ。
やっと観ることができました。
岩井さんが自らのひきこもり体験をベースに書いたハイバイの旗揚げ作品であり、繰り返し再演されている代表作です。


平成27年度公共ホール演劇ネットワーク事業
ハイバイ 「ヒッキ―・カンクーントルネード」
作・演出: 岩井秀人
出演: 田村健太郎  岡田瑞葉  後藤剛範  平原テツ  チャン・リーメイ

2015年7月19日(日) 7:00pm アイホール 2列センター



物語: プロレスラーに憧れながら自宅から出ることができないひきこもりの登美男(田村健太郎)。妹の綾(岡田瑞葉)が唯一の遊び相手であり理解者です。ある日、母(平原テツ)が自立支援団体の「出張お兄さん」圭一(後藤剛範)を連れてきますが、実は圭一もまた「飛びこもり」という、どんな環境にも過剰適応してその場にこもる患者でした。圭一を迎えに来た支援団体職員の黒木香織(チャン・リーメイ)は・・・。


舞台と客席との区切りもなくフラットなステージ。
そこに何やら立て札らしきもの(後でこれが公衆電話の“セット”だとわかる)を抱えた女装の男性(平原テツさん)が現れて、携帯の電源を切ってとか、飲食禁止だけどお水ぐらいは飲んでいいとか、飴の包み紙のカシャカシャ音は本人は気をつかってじんわりやってるつもりでも案外響くから思い切って一気にやるかワハハとなった時に開けるとか・・といった開演前の諸注意をサクサクやってくれて、その延長で「じゃ、始めます」と言って左手で持っていた立て札からさっと何かを取っていきなり話始める・・・これがもうお芝居で、登美男の母が離れて暮らしているらしき父親と電話で話している、という場面。

この導入が何気ないのだけど今まで観たことない演出で、こんなことにシビれてしまったりする訳です。私の周りにも知り合いにも引きこもりの人はいないのですが、実体験に基づいているだけあって、登美男の繊細さや過剰なまでの自意識からくる心の痛みがひしひしと感じられ、それをほとんどは温かく見守っているのだけど、やっぱり人間だから疲れたリ棘々しくもなったりする家族の生業が、実にリアルに、でも笑いとペーソスを交えて描かれて、笑いながら心が痛かっり辛かったり。

「来客があった時には玄関に出る」ことを母親に課されているらしく、「ピンポーン」という玄関チャイムの音に異常なまでに反応する登美男。
「ハンコを押して宅配便を受け取る」というだけの行為が彼にとってどれだけ苦痛で労苦を伴うことなのか・・・実はこのシーン、配達人の声だけが聞こえてくるのだけど、玄関先でパニックになっている登美男が見えるよう。

25歳にもなってひきこもっている登美男の行末を心配してあれこれ口出したり、外に出すべく行動を起こす母に対して、妹の綾はひたすら登美男を受け容れるやさしい理解者の立場。
兄を気遣い話を合わせ、一緒にプロレスの技をかけ合い・・・綾は登美男にとって唯一心許せる救いではあるけれど、長い将来を考えるとそのやさしさは残酷なのかもしれません。

実際、綾に彼氏ができたと知った登美男は微妙な反応を見せていましたし、「妹が一番悪い」という意見も多い、とアフタートークで岩井さんもおっしゃっていました。
母と妹の言い争いを聞いていると、ひきこもりの登美男も何かと懸命に闘っているけれど、家族にとってもこれは過酷な闘いなのだなということがよく理解できます。

家族3人の閉ざされた生活に圭一が加わることで一石が投じられ、さらにそれがきっかけで黒木の「買い物療法」によって一人街に出て、最悪の結果となってますます引きこもる登美男。
そんな時、友だちからの電話にコーフンして登美男に告げる綾。

「お兄ちゃん!あそこの公園に何が来てるか知ってる?みちのくプロレスだよ!行こうよ!行かないの?先行っちゃうよ!!」
「お前、みちのくプロレスに誰がいるのか知ってるのかよ」
「知らないよ!そんなの、これから知ればいいことでしょうが。先行くよ!」

登美男を残して飛び出す綾。
その綾を追って、玄関を出ようとしてちょっと足がすくんで一歩さがり、また一歩進もうとする登美男。

登美男はその一歩を踏み出せたのか、やっぱり後戻りしちゃったのか。
余白を残すラスト、好きだったな。



この日は終演後に岩井秀人さんのアフタートーがありました。

事前に質問用紙が配られて、その束を持った岩井さんが登場していきなり用紙の質問に答え始めるという方式。
「手をあげて」となるとなかなか質問が出ないからなのですって。
40分くらいだったかな?全部の質問に答えてくれました。

飄々とした雰囲気の岩井さん。トークも楽しかったです。
演出やひきこもりについての質問が多かったのですが、印象に残ったものをいくつか。

・登美男の母役をいつも男優にやらせるのはなぜか

-おばちゃんは好きでわりとよく登場させますが、いつも男にやらせると決めています。
 女性だとナマナマしすぎるというか。実際今日もあそこで鬘が取れた・・・まぁ、あれも演出なんですけどね(笑)・・けど、あれも女優さんだったら、何だか見てはいけないものを見てしまったという感じでいたたまれないと思う。


・実際にひきこもりから出たきっかけは?

-そのあたりは話すと長くなります。本にも詳しく書いたので読んでいただくとして、ひと言でいうと、ひきこもったきっかけは尾崎豊で出たきっかけは前田日明です。


私はお芝居にも引きこもりにも関係ないことを聞いてみたいなぁと思って
・大阪で一番印象的なこと、場所は? と書きました。

-そりゃ何といっても「飛田新地」です、と即答。
 ・・・で、その交渉システムについてわりと細かく解説。
 「あれ?この空気、だいじょうぶですか?」と言いながら(笑)。

 ワタシ、ゲラゲラ大笑いして隣席の男性に怪訝な顔されたのですが、そら、知らん人は聞いても全くわからんわね(笑)。


このトークで岩井さん自身にも興味がわいて少し調べてみたら、
役者さんとしての岩井秀人さんを観ていました。
2013年の「デキルカギリ」
そうかぁ~、あの弁護士さん、岩井さんだったかぁ。



ハイバイの次回公演「新作) 関西公演ないんだって の地獄度 ふらふら (total 1406 わーい(嬉しい顔) vs 1411 ふらふら)
posted by スキップ at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック