2015年06月25日

日輪降り注ぐ夜空 「戯作者銘々伝」

gesakusha.jpg井上ひさしさんに関係する作品を専門に上演するこまつ座。
井上さんが書かれた戯曲ではない作品の上演は、2013年の「木の上の軍隊」以来2作目なのだとか。

今回の作・演出は、劇団「桟敷童子」主宰の東憲司さんです。


こまつ座第109回公演・紀伊國屋書店提携
「戯作者銘々伝」
原案: 井上ひさし (「戯作者銘々伝」「京伝店の烟草入れ」)
作・演出: 東憲司
音楽: 宮川彬良
出演: 北村有起哉  新妻聖子  玉置玲央  相島一之  阿南健治  山路和弘  西岡徳馬

2015年6月20日(土) 1:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 1階C列下手



登場人物は繋がっているものの、一幕と二幕でずい分趣きが違うな、と思っていたら、
井上ひさしさんの二つの小説を題材としているのだと後で知りました。

一幕は、三途の川で、江戸時代の版元・蔦屋重三郎(西岡徳馬)の元に集うゆかりの亡者の亡霊たち・・・山東京伝、蜀山人、式亭三馬、恋川春町といった戯作者や浮世絵師たちが語る生前のエピソードをオムニバス形式で。

中で一番興味深かったのは、最後の恋川春町の話。
松平定信の寛政の改革で弾圧され、筆を折る戯作者や絵師が多い中、創作を続けたため同藩の人たちに謀殺された春町。
圧力に屈して戯作の道を自ら断った春町の盟友・朋誠堂喜三二。
春町の死後、喜三二を裏切り者と恨み、自分が困った時にはあの世の春町が守ってくれているという、春町の妻・お園。
お園が窮地に陥るたびにタイミングよく差し延べられる助けの手は実は・・・というお話。
お園が去った後、「約束は守ってるぞ」と空の春町に語りかける喜三二の言葉にほろり。山路和弘さんの喜三二が滋味あふれてとてもよかったのですが、山路さんはこの作品の中で、山東京伝の憎々しい弟・京山に始まって、全部で5役と七面六臂の大活躍。
三助の寝たきりのお母さんとか、笑っちゃいました。
いいお声で端正なお顔立ちなのに芸達者。


とはいうものの、この作品の白眉は二幕でしょう。

弾圧による手鎖の刑に処された恐怖と屈辱が忘れられず、筆を折り烟草店を開いた山東京伝(北村有起哉)が両国川開きの花火大会で若い花火師 幸吉(玉置玲央)と出会い、三尺玉を打ち上げるという彼の夢を後押しする物語。
権力に屈してしまった自分の思いを幸吉の夢に重ねる情熱と、それとは裏腹に、最後にはまたお上の力に逆らえない弱さが共存する京伝。
「言うだけのことは言ったんだ。こんなものだろう」と少し醒めた表情でつぶやく京伝の苦さ。

江戸払いになる幸吉に、餞別を渡す京伝。
「京伝店の烟草入れです」
多分そこには幸吉のための路銀が入っていて、受け取った烟草入れの重みからそのことに気づいて思わず京伝を見上げる幸吉。
そんな幸吉に黙って笑顔で頷き返す京伝。
二人の夢の、本当に切ない幕切れ。

・・・と思っていたら

その二人の夢が
三尺玉が
京伝が「夜の日輪」と名づけた大花火が
打ち上がるラストにヤラれました。
キラキラキラキラ降り注いてくる花火を見上げる京伝の幸せそうな顔。
きっとあの時、もう一度筆を執ろうと決心したんだろうな。


自由闊達さと権力におもねる脆さの両方を行き来する京伝の北村有起哉さん、まっすぐな目でひたむきな幸吉の玉置玲央さん、反権力だけどお金儲けにも抜け目ない蔦屋重三郎の西岡徳馬さんはじめ役者さんたちは皆充実。
紅一点の新妻聖子さんは京伝の二人の妻やお園さんなど山路さんに負けじと5役。相変わらずのびやかな歌声も聴かせてくれました。

一幕二幕を通して、権力 vs それに逆らう戯作者、つまり市井の人々という構図が鮮明で、いかにも井上ひさしさんらしい反骨精神が脈々と。
「権力に屈するな」と言葉で言うのは簡単ですが、京伝の苦さ、切なさは時代を今に置き換えても共感できる普遍性を感じました。


カーテンコールでは、作・演出の東憲司さんがご挨拶。
北村有起哉くんの「今日 東京へ帰りますっ!」という笑顔で幕となりました。



一幕は同じようなエピソードが重ねられて些か冗長な印象。
何なら二幕だけでよかったんじゃ。。(暴言) の地獄度 ふらふら (total 1392 わーい(嬉しい顔) vs 1394 ふらふら)
posted by スキップ at 23:26| Comment(2) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こちらにもこんばんは。
役者さんのそれぞれの魅力が楽しいお芝居でしたね。
とはいえ、私もスキップさんの最後の意見に同意です。
2幕の物語をもっと深めても面白かったかなーって。
でも、1幕のオムニバスのような物語も面白かったし、新妻さん綺麗だったし、山路さんかっこよかったしで、結局満足しちゃってるんですが(笑)。
Posted by 恭穂 at 2015年07月06日 19:39
♪恭穂さま

出演者全員これまで舞台で観たことがある役者さんばかりって
結構珍しいですよね。安定の演技でした。

一幕はあれはあれで楽しかったので、二幕とどちらか一方だけで
よかったのでは?(またまた暴言w)
いや、どちらも普通以上にクオリテイは高かったのですけれども。
Posted by スキップ at 2015年07月06日 20:44
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