2015年02月19日

九州初上陸! 「伊達の十役」


datejyu2015.jpg昨年5月 明治座で観てとてもおもしろかった「伊達の十役」
2回目(何年か前に海老蔵さん版も観ているので正確には3回目)ということもあり、前夜 KABUKI NIGHT で役についていろいろお話を伺ったこともあって、よりよく観え、聴こえ、より深く心に染み渡って、一層楽しく観ることができました。


博多座二月花形歌舞伎
慙紅葉汗顔見勢
三代猿之助四十八撰の内 「伊達の十役」
  市川染五郎十役早替り宙乗り相勤め申し候

発 端 稲村ヶ崎の場
序 幕 鎌倉花水橋の場/大磯廓三浦屋の場/三浦屋奥座敷の場
二幕目 滑川宝蔵寺土橋堤の場
三幕目 足利家奥殿の場/  同  床下の場
四幕目 山名館奥書院の場/問註所門前の場/  同  白洲の場

作: 四世鶴屋南北
脚本・演出: 奈河彰輔
演出: 市川猿翁
出演: 市川染五郎  片岡孝太郎  市川右近  尾上松也  市川笑三郎  大谷廣太郎  
中村隼人  中村米吉  澤村宗之助  松本錦吾  大谷桂三  片岡亀蔵  片岡秀太郎 ほか

2015年2月15日(日) 10:30am  博多座 1階C列センター


染五郎さんの口上で幕開き。
舞台の幕には染五郎さんが演じる十役の扮装写真が「善」と「悪」に分かれて掲げられていて、それらの役をテンポよく説明。

昨年の明治座が初役だった染五郎さん。
博多座でこの演目を演じるのはもちろん初めてですが、「伊達の十役」自体、博多座はもとより、九州初上陸なのだそうです。

お母様が福岡出身でかねてより「福岡は第二のふるさと」と発言していらっしゃる染五郎さんですが、この日の口上でも
「アタシには博多の血が半分流れとうと」と立板に水のごとき博多弁を披露。
これ、KABUKI NIGHTで「93歳のおばあさんに教えてもらったから今の博多弁とは違うと言われる」とおっしゃっていましたが、なかなかどうして。威勢よくて粋な博多弁、かわいかったです。

外題の「慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ)」は、恥も捨てて汗まみれなって演じますという意味なのだとか。
「精一杯汗まみれになってやるけん!」と。


一幕目は怒涛の早替り。
二幕は「伽羅先代萩」の世界をじっくり観せて、
三幕は早替りもありつつ、派手な立ち回りや見得もあり、勧善懲悪の気もちよい幕切れ。

早替りや宙乗りといったケレンの部分に目を奪われがちですが、南北独特の台詞も聴かせてくれ、物語もしっかり観せてくれて、ドラマとして本当におもしろく、すばらしい作品だと改めて思いました。

早替りについてはもう驚かないゾと思っていてもやっぱり驚きます。
ほんっとに早い。
染五郎さんが早替りで出てくるたびにどよめきが起こり、「早か~」「凄か〜」という感嘆の声が周りから漏れ聞こえてきました。

昨年明治座の後、「澤瀉屋ご一門の方々に教えていただいた早替りの技術のレベルの高さに圧倒されました」と染五郎さんはインタビューでおおっしゃっていましたが、、ここでこういうふうに早替りしたらこう出られる、と物語の構成に絡めて可能な早替りを考えた猿翁さんの頭の中っていったいどうなっているのでしょう。

今回、前の場面が終わって、時計まわりに回る盆の下手側に乗って消えていった染五郎さんが、その盆が回転して上手から新しい場面が現れるともうそこに別の役で立っている、ということか二度ほどあって、ほんとに驚きました。
そのうちの1回は道哲だったけど、あと1回は誰だったかな。

衣装や拵えばかりでなく、役の演じ分けもより鮮明になっていて、時に今回は声色の違いが際立っていたのが印象的でした。
たとえば道哲で粗野な太い声を出したすぐ後に高尾太夫の声、って切り替えが大変だと思いますがとても自然に聴こえました。

そして一つひとつの役がどれも深みを増していたようにも感じました。
前回若干ニンではないように感じた仁木弾正もスケールアップしていて力強さを増し、悪の華という印象がより強く出ていました。
あのゆら~りと空中浮遊しながら去っていく「人外のもの」感もハンパなく。

それにしても仁木弾正、大詰めでは派手な立ち回りも見せてくれますが、ほぼ4時間くらい出ずっぱり、早替りっぱりで演じた最後にあの立ち回りだし、板の上全速力で走ってるし、って、ほんと歌舞伎役者さんの体力って尋常ではありませんあせあせ(飛び散る汗)

もうひと役を挙げると、乳人政岡がとても心に染みました。
泣いちゃったよ。
他の人たちのいる前ではほとんど表情を動かさない政岡。
千松の亡骸を前に「でかしゃった、でかしゃった」と何度も繰り返す政岡。
その「でかしゃった」という声に深い悲しみの淵に沈んでいて。

この政岡がとても心に響いたのは、二人の子役ちゃんも含めて、この場面に出ていた人たちが皆すばらしかったということもあります。
前夜、染五郎さんが「最高の栄御前」とおっしゃっていた秀太郎さんの存在感はもちろん、市川右近さんの八汐がまた憎々しくてね。

實川延若さんの型、と右近さんがおっしゃっていた八汐。
毒に苦しむ千松を膝の上に寝かせ、首筋に懐剣を突き立てながら懐から折りたたみの手鏡を取り出し、「これでもか」と言いながら懐剣の柄の頭を手鏡で叩きます。ノミの頭を木槌で叩くような感じで、懐剣を食い込ませるように。
そうしておいてその手鏡を開いて、自分の背後に立つ政岡を鏡に映して顔色を覗き見るでした。
ほんっと残虐で冷酷非道なのですが、右近さんはどこか悪を楽しむような面も残しておかないといけないような役、といったニュアンスのことをおっしゃっていました。



datejyu20152.jpg


十役を染五郎さんが演じるのですから、それ以外の役は出番が短かったり、もったいなく感じることもありますが、若手花形の皆さんも実力派のベテランの皆さんもそれぞれ持ち場をしっかり。

3分しか出番はないけれど(笑)凛々しい若武者ぶりの笹野才蔵・中村隼人くん、染五郎さんに「理想の卵型」と言われた可憐な赤姫・京潟姫の中村米吉くんは、その容姿の愛らしさばかりでなく、声もよくて台詞もしっかり。

きっちりとした楷書の演技がそのまま役の山中鹿之助と重なる大谷廣太郎くん。KABUKI NIGHTでは染五郎さんにかなりいじられていましたが、昨年染五郎さんが初役で弁慶を務めた時には後見、今回は足利頼兼の用心役。染五郎さんが廣太郎さんに寄せる信頼の高さが伺えます。

そして松也くんの渡辺民部之助。
十役以外では一番台詞も多く、十役のいろいろな人と絡む大きな役への抜擢に十分応えていました。
前夜のKABUKI NIGHTでは声が少しハスキーで嗄らしてるのかな?とも思ったのですが、本番ではいつものよく通る松也くんの声でした。
海老蔵さん版の伊達十にも出演経験のある松也くん。、今回はまたいろんな意味で勉強にも刺激にもなったのではないかしら。


染五郎さんが口上でおっしゃっていたように「飛んだりもぐったり、生きたり死んだり」いろいろあって、
「ま~ずは昼の部 こ~れぎり~」というイケメン細川勝元の切り口上で打ち出し。
本当に楽しかった「伊達の十役」幕でございました。



笑三郎さんも勿体ないような一役だったけどきりり存在感 のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 1329 わーい(嬉しい顔) vs 1330 ふらふら)


posted by スキップ at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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