2014年11月18日

吉例顔見世大歌舞伎 昼の部

IMG_7805.jpg感動とコーフンの夜の部から一夜明けて、昼の部を観ました。

吉例顔見世大歌舞伎 昼の
初世松本白鸚三十三回忌追善
2014年11月2日(日) 11:00am 歌舞伎座 3階1列センター



一、寿式三番叟
出演: 市川染五郎  尾上松緑  坂東亀寿  中村歌昇  
中村米吉  片岡我當


華やかでおめでたい「寿式三番叟」。
先に夜の部を観たので順番が逆になってしまいましたが、幕開きにふさわしい演目です。
松羽目の舞台に中央の大セリから翁の我當さん、千歳の亀寿さん、歌昇くん、米吉くんが迫り上がって登場。
我當さんはお足がかなりお悪いようにお見受けしましたが、ゆったりとした動きでとても丁寧に舞っていらっしゃった印象。7月に観た「天守物語」でも感じましたが、我當さんってどこか神性を帯びた雰囲気を醸し出す方なのです。

若々しく清々しい千歳。
米吉くんの珍しい立役の拵えがご馳走でした。美少年揺れるハート

四人が舞台下手に去り、背景が松と梅に変わると三番叟登場。
染五郎さんが上手、松緑さんは下手から。
染五郎さんはまるで駆け出すように舞台に出てきました。
二人とも踊り巧者ですが、こうして広い舞台に二人だけだと踊りに疎い私でも二人の踊りのタイプの違いが見えて面白かったです。
躍動的で華やかな染五郎さん。
三番叟になり切って忠実に踊る松緑さん。
花と実、という感じ。ステキなコントラストだったな。

天下泰平や五穀豊穣を祈る三番叟。
こちらまで神事にあやかれるような幸せな気分になる三番叟でした。二、井伊大老
井伊大老邸の奥書院より桜田門外まで
作: 北条秀司
出演: 中村吉右衛門  中村芝雀  尾上菊之助  中村歌昇  中村種之助  中村隼人  中村錦之助  中村又五郎  中村歌六 ほか


初世松本白鸚さん最期の舞台となった演目なのだとか。
安政七年三月三日 桜田門外の変で暗殺された大老 井伊直弼の、暗殺前夜の様子を側室お静の方の語らいの時とともに描いた物語。

プチ歴女としては井伊直弼のことは開国派、攘夷派それぞれの見方があることも含めて史実としては大体知っていて、多分北大路欣也さん主演のドラマも観たことがあるような記憶がありますが、歌舞伎でこの演目は初見でした。
観る前は、「将軍江戸を去る」や「大石最後の一日」といった真山青果さんの一連の作品をイメージしていて、些か苦手感あったのですが、とてもおもしろく拝見しました。

宵節句に井伊直弼がお静の方のもとを訪ね、亡き娘のために飾った雛飾りの前で酒を酌み交わしてしみじみ語り合う場面は、赤い毛氈を敷いた華やかなひな壇とともに特に印象的。

雛祭りを無邪気に喜んだり、お静と出会った時のことを思い返したり、亡き娘をしんみりと偲んだり、自由だった故郷の時代を遠く懐かしんだり。
「自分は国のために幸せも捨ててわが身を砕いているのに、鬼畜と呼ばれ後世にも理解してもらえぬ」という嘆き・・・こんな人間味あふれる姿は、お静の前だけで見せることができたのだろうなと思いました。

「生まれ変わってもお前と一緒にいたい」
「生まれ変わっても大名にはなりたくない」
この言葉を聞いて、お静の方への深い愛情と、直弼の覚悟を知りました。

直弼の大きさも信念も、悲嘆も切なさも無念も、静かな語り口の中に余すところなく表現していて、吉右衛門さんすばらしい。
降りしきる雪の中、浪士たちに囲まれながら「大義を忘れるな」と、明日の日本を祈るように倒れていく直弼が哀しくも美しかったです。

お静の方の芝雀さんは、詐欺じゃない?と思うくらい(笑)初々しくて可愛らしい。
しかも控えめなのに色っぽいって、直弼じゃなくても惚れるよね。

衝立に書かれた直弼の書からその運命を見通しながら、「一期一会」と書いた笠だけを残して去る仙英禅師の歌六さんも、いかにもという人物像で印象に残りました。


三、一谷嫩軍記 熊谷陣屋
出演: 松本幸四郎  中村魁春  尾上松緑  大谷廣太郎  中村種之助  大谷廣松  
市川高麗蔵  市川左團次  尾上菊五郎 ほか


幸四郎さんの「熊谷陣屋」は昭和56年(1981)年の襲名披露で演じられた演目ということで、高麗屋さんを代表する演目の一つに数えられると思いますが、私は幸四郎さんで拝見するのは今回が初めて・・・だよね、と思って調べて観たら、これまで観た熊谷直実は、吉右衛門さんが複数回、あとは仁左衛門さん、染五郎さん、橋之助さんでした。

幸四郎さんの直実は、隈取(というのか?両眉から上に出てるやつ)が、いつも見慣れていたものよりあっさり目で赤い色も入っていなかったのが印象的でした(そこ?)
敦盛の最期を妻・相模(魁春)と敦盛の母である藤の方(高麗蔵)に物語る場面で、武将の顔と実はわが子を手にかけてしまいながらそれを隠さなければならない父としての苦しい胸の内が交錯していてさすがに台詞の人です。
幕外の引込み、「十六年はひと昔」のつぶやきも、あまり力を入れすぎない感じが却ってわが子を失った悲哀と戦乱の無常が染みわたる悲劇を感じさせました。

特筆すべきは菊五郎さんの義経。
品格があって、情も色気もあり、何より「義経」としてそこに存在していてオーラ全開でした。
夜の部の「すし屋」で幸四郎さんが梶原景高を演じたのと同様、この演目でこの役に菊五郎さんを配することができるのは、さすがに顔見世興行です。

義経に従う四天王のうち、亀井六郎は廣太郎くん。
夜の部「勧進帳」ではお父様の友右衛門さんが演じたのと同じ役で、演目的にも役者さん的にも繋がっているのが興味深かったです。
駿河次郎の隼人くんが四人の一番下手側で、凛々しい姿でじっと座し、目だけ真ん中の芝居をガン見していたのが印象的でした。
(ほかの三人はずっと正面向いていたから目立ったのよわーい(嬉しい顔)



IMG_5257.jpgロビーには白鸚さんの遺影。
残念ながら舞台を拝見したことがありませんが、
私にとっては初代「鬼平犯科帳」。
二人の息子さん、お孫さんと曾孫ちゃんまで揃ったよい追善興行で、きっと空の上で安心されていることでしょう。



でも昼も夜も切りの演目は切なくてちょっぴりあと味悪し のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1284 わーい(嬉しい顔) vs 1287 ふらふら)
posted by スキップ at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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