2013年05月15日

ハル王子とフォルスタッフ そして 「ヘンリー四世」

henry4th.jpg毎回楽しみにしている蜷川幸雄さん演出の「彩の国シェイクスピア・シリーズ」。
第27弾はシェイクスピア作品の中で史劇に分類される「ヘンリー四世」。二部作を一本にまとめての上演です。


彩の国シェイクスピア・シリーズ第27弾  「ヘンリー四世」
原作: ウィリアム・シェイクスピア   翻訳: 松岡和子
演出: 蜷川幸雄
構成: 河合祥一郎
出演: 吉田鋼太郎  松坂桃李  木場勝己  立石涼子  星智也  矢野聖人  冨樫真  磯部勉  たかお鷹  
辻萬長  瑳川哲朗 ほか

2013年5月11日(土) 1:00pm シアター・ドラマシティ 10列上手


イングランド王・ヘンリー四世(木場勝己)は周辺国、敵対勢力との争いに明け暮れ、不安定な王座についています。そんな父王の悩みをよそに、皇太子ハル(松坂桃李)は飲んだくれの悪友・フォルスタッフ(吉田鋼太郎)たちと放蕩の日々を過ごしています。
このハル王子が、貴族たちの反乱を機に国王軍を率いて闘い、敵の猛将ハリー・パーシー(星智也)を倒し、やがて父にも認められてヘンリー五世として即位するという成長物語。舞台奥からハル王子、続いてフォルスタッフが走り出て来ます。
ほんとに楽しそうにじゃれ合っている二人のこの場面がとってもハッピームード
酔っ払ってご機嫌で上半身裸になって、地面に倒れ込むハル王子。
同じく酔っ払ってふらふらながら、ハル王子の服を拾って一つずつ着せてやるフォルスタッフ。
互いに口汚く罵り合いながら。でも楽しくてたまらないといった風に笑いころげながら。

この最初の場面の二人の仲の良さ、可愛らしさが強く印象に残って、だから、物語の最後、ヘンリー五世となって王位についたハル王子が、訪ねて来たフォルスタッフを、「私はお前など知らない」と冷徹に切り捨てる幕切れの苦さ、切なさが一層際立ちます。
父の跡を継いで王位につく覚悟が現れた、凛とした厳しい表情のヘンリー五世。
それはハル王子にとって、人間としての階段を一つ上がったと同時に、甘やかな青春時代との訣別でもあったのだと。

物語は、フォルスタッフを中心とした猥雑で明るくにぎやかな民衆の世界と、国王ヘンリー四世を頂点とした厳然として陰鬱な王侯貴族の世界が、交互に描かれます。
そしてその両方を行き来するハル王子。

松坂桃李くんはこれが2作目の舞台(デビュー舞台は「銀英伝」のラインハルトだなんて、今さらですが観たかったな)。
いかにも王子然とした美しいビジュアル、声もよく通り口跡さわやか。
戦闘の場面。左頬に血、膝の包帯からも血を滲ませながら、炎のように燃え盛る目をして、「この程度のかすり傷で、皇太子ともあろうものがこの戦場から引き下がれるものかっ!」と言い放つハル王子はほんとに凛々しくてカッコよかった揺れるハート

父王ヘンリー四世が亡くなったと思い込んで、悲しみに耐えながら王家の伝統やその輝かしい足跡、そして王位を継ぐ決意を枕元で語りかける独白もよかったけれど、死を目前にした父と和解し、跡継ぎとして父王から王冠を授けられる場面の静謐な美しさがことさら印象に残りました。
場面自体も、王冠を頭上に戴いて父を真っ直ぐに見つめるハル王子の横顔も。
彼が覚悟を決めて、階段を上がったあの時。

この場面の木場勝己さんがまたとてもすばらしい。
あまり上背があるとは言えない木場さんですが、緋色の王衣を纏った登場の時から、重厚で威厳に満ちた、そして孤独なヘンリー四世そのものでした。
この死の床の場面は鬼気迫る演技。息たえだえに言葉を発していても、一言一句ちゃんと聞き取れる台詞術もさすがです。

そしてもちろんフォルスタッフの吉田鋼太郎さん。
シェイクスピア作品でもそれ以外でも、鋼太郎さんの名演はこれまで数々観てきましたが、このフォルスタッフはベストスリーに入るのではないかしら。
飲んだくれで好色で強欲で嘘つき。だけど愛敬たっぷりで色っぽくて奔放でちょっぴり臆病。
本当に憎めないキャラクターで、居酒屋の女将さんも娼婦のドルも、怒りながらも惹かれるのがよくわかります。
運動会の玉ころがしの大玉のような肉布団。それこそ転がるように走り出てくるフォルスタッフ。
舞台はもちろん、客席も縦横無尽に動きまわり、誰かれ構わず体当たりしたり上に乗ったり。転がっては一人では起き上がれなかったり。観客を立たせてその席に座ったり。実にフリーダム。もう、鋼太郎さん以外の人が演じるフォルスタッフが想像つかないくらいです。
ご本人も楽しそうに演じていらっしゃいましたが、大変だったことでしょう。

背の高い燭台がずらりと並ぶだけで奥行きを感じさせる宮廷の場面。整然とした隊列が舞台を斜めに横切る場面。シンプルな舞台装置の美しさも印象的でした。
最後の場面で次々降ってくる赤い薔薇は、この先起こることになる百年戦争や薔薇戦争を暗示しているのでしょうか。


位置情報 二幕冒頭は、客席通路から馬が出てきたり、いろんな物売りの人たちが現れたり、にぎやかで祝祭劇の雰囲気。
 通路側の席だったので、鋼太郎さんフォルスタッフに握手していただいたり、物売りの人に玉ねぎすすめられたり(笑)、楽しかったムード

位置情報 ハル王子の弟・ランカスター公の矢野聖人くん。私が松坂桃李くんを「発見」した3年前のドラマ「ゴールド」でも桃李くんの弟役だったよなぁ、と懐かしく思い出したり。


「名誉だと? そんなもので腹がふくれるか」 by フォルスタッフ のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 1099 わーい(嬉しい顔) vs 1098 ふらふら)
posted by スキップ at 23:39| Comment(4) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
朗読劇のことも、りえちゃん代役のこともコメントしそこなってますが、とりあえず・・・。
ほんと「ヘンリー四世」楽しかったですね。
桃李くんは、朝ドラの時はフーン、くらいだったのに、これでめちゃくちゃファンになっちゃいました。やんちゃハルの成長物語、という部分もよかったのかしら。
見終わってからも、父ヘンリー王・木場さんの存在感がじわじわ大きくなっていきました。
吉田鋼太郎さん! まさに縦横無尽。私が見た時は通路際の席に六平直政さんがいらしたから、吉田さん、しきりにからんでました。が、そんな陽気なフォルスタッフが、最後にハル王子から「お前など知らない」と言われた時の、鋼太郎さんの目がすごかった。言葉でなく、目が一瞬で、彼の深い絶望を語ってました。このときばかりは、前の方の席(さい芸のF列)だったことを感謝しました。
舞台美術もすごく素敵だったし。今、思い出してるだけでも、私の周囲にハートマークが飛んでるようです。
Posted by きびだんご at 2013年05月17日 02:13
スキップさん、こんばんは!
冒頭のじゃれあうハルとフォルスタッフ、ほんとに微笑ましかったですねv
その分、ラストシーンはとても切なかったですが。
私の場合、松坂くんを認識したのがラインハルト役の時だったのですが、
どんどん成長していくハルを観ながら、
「今の松坂くんならどんなラインハルトになったのかな」と思ってしまいました。
いえ、とても未成熟で可愛らしいラインハルトだったので(笑)。
映像でも大活躍な松坂くんですが、是非また舞台もやってほしいですねv
鋼太郎さんは、もうとにかく凄い!の一言でした。
フォルスタッフと握手されたのですね。
なんて羨ましい!!
Posted by 恭穂 at 2013年05月17日 21:28
♪きびだんごさま

学生時代に原作を読んだことがあるのですが、それより何倍も
楽しかったです「ヘンリー四世」。

私は「梅ちゃん先生」は観ていなかったのですが、松坂桃李くんは
かねてより目をつけていた(笑)イケメンだったので、
舞台でこんなに映えることにうれしいオドロキでした。
映像は元より、これからも舞台やっていただきたいですよね。

そして鋼太郎さんのその目、私、見逃しています(泣)。
あの場面は、桃李くんヘンリー五世にばかり目が行ってしまって。
返す返すも残念です。いつかWOWOWあたりでやっていただけないかしら。
シンプルな舞台美術もステキでしたね。
Posted by スキップ at 2013年05月17日 23:50
♪恭穂さま

そうそう、恭穂さんは桃李くんのラインハルト、ご覧になったのでしたね。
「未熟で可愛らしい」(笑)。
今回、蜷川さんとまわりの蜷川組キャストにずい分鍛えられたのでしょうか。
はい。ぜひまた舞台やっていただきたいです。

鋼太郎さんフォルスタッフ、ほんとにキュートでしたね。
握手していただけてラッキーでした♪
Posted by スキップ at 2013年05月17日 23:53
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