2013年05月13日

小さき者も異形の者も Team申番外公演Ⅲ 「朗読劇 お文の影・野槌の墓」

ofumi.jpg「今、僕らが出来ること」とサブタイトルがついた Team 申の番外公演。初回から楽しみに観て(聴いて)いて、
2011年9月
2012年3月
に続いて3回目でした。

Team申番外公演Ⅲ ~今、僕らが出来ること~
「朗読劇 お文の影・野槌の墓」
原作: 宮部みゆき 「ばんば憑き」
構成・演出: 長部聡介
出演: 佐々木蔵之介  市川猿之助  佐藤隆太

2013年5月4日(土) 5:00pm 森ノ宮ピロティホール E列上手


開演前に事前にwebで募集した怪談話を紹介するということは知っていましたので、いつもギリギリの私には珍しく早めに着席していました。
間もなく開演、という時になって、目の前のD列上手端の方に座っていた男性がやおら立ち上がって、「すみませんね」とか言いながら通路の方へ客席を横切って行きます。
「今ごろ?」と思ってお顔を拝見すると、あら、綺麗な顔立ち・・・って、佐藤隆太くんじゃない目
気づいたまわりからも「キャ~揺れるハート」という歓声が上がりました。
と、すぐ左に人の気配が(通路側の席だった)・・・と思えば真横を市川猿之助さんがステージに向かって歩いて行きました。ますますテンション上がるワタシ&客席。
佐藤隆太くんは通路まで来て2列目に空席を見つけて座り、舞台上の蔵之介さんから「早く来い」的に呼ばれていました。寄せられた中から3人それぞれが選んだ怪談話を披露。
応募の際にいつの公演を観るか記載する欄があったらしく、ちゃんとこの回を観ている人の中から選ばれていて、読まれた後、ご本人にお土産や原作「ばんば憑き」がプレゼントされていて、ちょっとうらやましかったな。

その「ばんば憑き」から今回は二話。

長屋で遊ぶこどもが、自分たちの数より影の方が一つ多いことに気づく「お文の影」
娘の加奈に請われ、浪人の源五郎右衛門が化け猫のタマの頼みを聞くことになる「野槌の墓」

「怪談」と分類されているようですが、怖さよりも切なさとか哀しみがより色濃く感じられます。
そこに出てくるこどもや妖かしに、作者が向ける視線が筆致がやさしい。
そして、その物語を語る3人の声と心がまた温かく、小さき者にも異形のものにも息吹を与えているよう。

もう亡くなっていたお文の影を笹舟に乗せて、あの世のお文の元に送ってやる「お文の影」
源五郎右衛門が斬った野槌(になりかけていた木槌)に宿っていた男の子の魂を、亡くなった源五郎右衛門の妻が彼岸へ連れて行く「野槌の墓」
どちらの物語も、行き惑っていたこどもの魂が、心の平安を得て彼岸へ行く・・・成仏するというお話で、これは、東日本大震災で亡くなった方々、心ならずも死を迎えてしまった人々への鎮魂の意味が込められているのかな、と、「今、僕らが出来ること」の思いに心を馳せたりもしました。

「父さまは、よく化ける猫はお嫌いですか」という娘・加奈の問いかけ(←この役、佐藤隆太くん。とってもキュート)で始まる「野槌の墓」が特に印象的でした。
まっとうな道具だった木槌が、こどもを殺すために使われ、こどもの血を吸わされてしまって、だけど道具から化け物になることで一旦は救われたのに、可哀相なこどもの亡骸を見てしまったために自分がこども殺しだということを思い出し、それがあまりに忌まわしく、怒りと悲しみのあまりに人を襲うよう野槌となってしまいます。
一つの道具が人の都合で振り回され、血塗られて心を壊してしまう。その野槌を思いやる猫又や妖かしの仲間たち、そして源五郎右衛門。
その野槌の怒りはつまり殺されたこどもの魂で、
「物の怪に心があったらいけませんか?」と言うお玉に、
「いいや、ちっともおかしくはない。心も、魂も宿るだろうよ」と答える源五郎右衛門。
「私にこどもが斬れるかなぁ」という源五郎右衛門のつぶやきを聞いて、この人は異形の者にもこどもにも、同じ思いを重ねることができる人なのだと、そのやさしさに泣きそうになりました。
ここの蔵之介さん、本当によかったなぁ。

人を襲う化け物は恐ろしい。
だけどその化け物を生み出したのは人間。化け物より恐ろしいのは人の心。
仲間を思いやったり、源五郎右衛門や加奈と心を通わせるタマたち化け物のほうがずっと純粋な心を持っているように感じられます。

猫又のお玉さん。
妖しくて粋で気風がよくて、色っぽいお玉。猿之助さん独壇場です。
表現力豊かな声はもちろん身振り手振りも交えて、佇まいや風情まで、お玉さんが見えるよう。
猿之助さんを襲名されて、立役に比重を置かれるようですが、こんなのを見せられるとやっぱり猿之助さんの女方観たいなぁと思います。

源五郎右衛門の妻、加奈にとっては母親のしのはすでにこの世にありませんが、お玉の「手間賃」で、野槌を彼岸へ送る役目の亡き妻・しのの姿を見ることができた源五郎右衛門。

つつましやかに一日一日を大切に生きている人ならば、あの世に旅立つことも悲劇ではないと感じられるラスト。
「あの世の人びとは帰り、この世の者たちは残される。別れるけれど、消え失せはしない。亡き人々はこの世を離れて、だからこそ永遠のものとなるのだから」
と静かに響く蔵之介さんの声。
大切な人との別れもそんな風に穏やかな気持ちで迎えられるようになりたいと、心から思いました。


どら焼き「お茶る」も3人の直筆サイン入りしおり付原作本も早々と完売でしたあせあせ(飛び散る汗) のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 1098 わーい(嬉しい顔) vs 1098 ふらふら)
posted by スキップ at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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