2012年02月23日

何度観ても楽しい♪ 「大當り伏見の富くじ」

2hanagata.jpgあんまり楽しかったので、観終わった後すぐ「また観た~い」と思って、チケット取っている千秋楽まで待ちきれずに初めての幕見までしちゃいました。
それでも「また観た~い」と思ったのですが、連日大賑わいの今月の松竹座の中でも一番人気の演目。近ごろでは平日でも幕見席は早々に売り切れてしまうのだとか。

二月花形歌舞伎 昼の部 
鳰の浮巣(におのうきす)より 「大當り伏見の富くじ」
脚本・演出: 斎藤雅文
出演: 市川染五郎  片岡愛之助  中村獅童  中村亀鶴  尾上松也  中村壱太郎  中村米吉  上村吉弥  
坂東竹三郎  中村翫雀  中村歌六 ほか

2012年2月3日(金) 1:10pm 松竹座 1階2列センター
     2月11日(土) 1:10pm 松竹座 3階5列上手(幕見席)


明治時代に作られた「鳰の浮巣」という歌舞伎の台本を、染五郎さんが10数年前(「染五郎 関西人化計画」の頃かしら?)に中座の屋上の倉庫で見つけてずっと温めていた作品。その後松竹新喜劇でも上演されていて、このたび歌舞伎へ本家帰りとなったそうです。

もとは大店の質屋の若旦那ながら、ある事件で店がつぶれ今は屑を拾っていつか店を再興することを夢見ている紙屑屋幸次郎(市川染五郎)。ある日、花魁・鳰照太夫(中村翫雀)にひと目ぼれして拾ったお金で島原へ出向きます。そこで渋々買わされた1枚の富くじが、千両の大当たり・・なのに・・・というドタバタ人情コメディ。全編に笑いどころやギャグを散りばめていて、笑いっぱなしの中にほろりとさせられる人情話あり、勧善懲悪あり、最後はお約束のハッピーエンドでとても明るい気分で気持ちよく打ち出されます。
「アドリブを一切用いず、構築された、計算されつくした喜劇をやりたいと思っています。」と開幕前のインタビューで染五郎さんはおっしゃっていましたが、アドリブなのか計算なのかもわからないくらい楽しい♪幕が開くと目の前に綺麗なお顔の染五郎さんが正座していて、これだけですでにテンションアップグッド(上向き矢印)
「わて、紙屑屋の幸次郎いいまんねん。幸四郎ちゃいまっせ。幸四郎さんのことは知ってます。日本中で弁慶やらはった人でっしゃろ。あんなんされると後が大変や。世界中で弁慶やらなあかん。・・せがれ?あれはアホやと思います。着ぐるみ着て人間豹やいうてガオ~とかいうて、凧乗って空飛んでいきよった。アホやと思います。」と自虐ネタ?を披露して、掴みはOKという感じの口上で始まります。

この幸次郎がひと目ぼれする鳰照太夫は中村翫雀さん。最初に配役知った時、見間違いかと思って二度見してしまいました(笑)が、ふんわりしていて風格もあって下品にならない太夫ぶり。心と裏腹の愛想づかしの女心も切なく演じていらっしゃいました。
「もちもち~っとしててまんまるでお月さんのようで、ほっぺた押すとこし餡がぷにゅ~と出てきそうな笑顔」でキラリ~ンと笑って(ほんとに鳰照太夫がに~っと笑うたびにピカッとスポットがあたってシャリ~ンと音が入る)幸次郎を悩殺。歩くと履物が脱げてしまうのがクセで禿の上村吉太朗くんに「また脱げた~」といつもツッコまれています。太夫の時のみならず私服(私着物?)の時も脱げていましたが、あの歩きながらスムーズに下駄が脱げるくだり、「NINAGAWA 十二夜」の安藤英竹でもやってらっしゃいましたね。

花魁道中で幸次郎が鳰照太夫を見初める場面は、「駕籠釣瓶」を思い起こさせます。
そしてこの花魁道中が登場する場面、鳰照太夫を中心に横一列に並んだ艶やかな着物の廓の面々が、大ゼリに乗って盆で回りながらせり上がってくるところは、猿之助さんのスーパー歌舞伎や新感線の舞台を観ているようでゾクゾクしました。

川掃除をする羽目になった幸次郎は川でお財布を拾うのですが、お財布の中に手を入れて、「ごじゅうりょう~」とドスの効いた声で。きゃ~ん、斧定九郎ムードと目がハートになっちゃいました。
染五郎さんの定九郎、まだ観たことないのですが、ぜひ観てみたいな。笑いばかりでなく、こんなふうに歌舞伎のいろんな場面(私が気づいただけでも他にも「封印切」とか「切られ与三」とか「吉田屋」とか)を思い起こさせるのもこの作品の魅力のひとつ。
川には「川のものはワシのもの~」という河童が棲んでいて、水中でのバトルを制した幸次郎は見事五十五両二分一朱入りのお財布をゲットして家に帰ります。
「これで店が再興できる」と喜ぶ妹のお絹(中村壱太郎)をよそに幸次郎は、鳰照太夫に会いに若旦那を装って島原へと行ってしまいます。

廓で遣手のお爪(坂東竹三郎)に富くじを買わされ、花魁の千鳥(澤村宗之助)の身受け金を出してやったり(実は幸次郎が川で拾った財布は千鳥の恋人が落としたものだったらしい)、さらにはお絹に横恋慕する近江水島藩の家老・黒住平馬(中村獅童)がいたり、EXILEふうあったりミタさん出てきたり・・・と見どころいっぱい笑いどころいっぱい。役者さんもベテランから若手に至るまでたくさんの役があってそれぞれに大活躍でどの場面も目が離せません。細かく書いているとキリがなくなっちゃう。

それでもこれだけは書いておきましょう。

其の壱: 小春ちゃん
今回の舞台で人気沸騰中の小春ちゃんは鳰照太夫の飼犬のちんです。
「え?ちんってもうちょっと小さな犬とちゃいますの?」と幸次郎が驚く小春は、ぬいぐるみの時からすでに大きな犬ですが、後の場面でさらに大きくなって登場。しかも二足歩行(笑)。最初誰だかわからなかったのですが演じるのは片岡千壽郎さん。こちらの記事にも採り上げられている通り、幸次郎にタメ口だし、髪(というか耳)かきあげるし、ノリノリで踊るし、楽しいすぎです。
千壽郎さん、冒頭の幸次郎の口上の場面でも伏見稲荷の神主さんに扮して幸次郎がおもしろいことを言うと「コクボくん、座布団一ま~い」なんてやってらして、ほんとに大活躍です。

其の弐: 雛江ちゃん
中村米吉さん扮する雛江ちゃんは鳰照太夫づきの新造さん。米吉くんの可愛らしさはかねてよりウワサに聞いていましたが、関西で私が認識したのは今回初めてかも。博多人形のようにふんわりした可憐な美貌に目がくぎ付けになりました。声もよくてほんとに将来有望な女方さんです。
この米吉くん@雛江ちゃんと壱太郎くん@お絹ちゃんのキレイどころ二人がフィナーレではあやまんJAPANよろしく♪ぽいぽいぽいぽぽいぽぴ~と花道で踊るのですから、盛り上がらない訳がありません。あんまり可愛いかったので踊る雛江ちゃんの舞台写真買っちゃいました。

其の参: やっぱり歌六さん
歌六さんは俳人風の絵描き・雪舟斎。ドタバタの色合いも濃い中、歌六さんが出てくるとほっとします。雪舟斎は最後に、幸次郎の実家の質屋がつぶれる元となった「屏風事件」を解決してくれるのですが、その時は古畑任三郎。あの歌六さんが腕組みして片手を額にあててすっかり任三郎になっていました。この時は下座音楽も古畑任三郎のテーマが演奏されていました。たぶん録音?なのですが、ちゃんと三味線だったりするので「慶安の狼」ほどテープという感じは受けませんでした。

幾重にも連なる朱塗りの鳥居や階段が印象的な伏見稲荷のセット。
フィナーレではその朱塗りの階段が宝塚の大階段みたいになって、愛之助さん、獅童さんがポージングして登場。そして染五郎さんがマツケン(松山ケンイチではなく)風の派手な着物で登場してひと踊り。「におてる太夫~」と叫ぶと花道スッポンから翫雀さん登場。歌六さんも階段降りてきて全員で総踊り。キラキラの紙吹雪が舞って華やかに幕となります。

お人よしでちょっと間抜けだけどどこか憎めず愛敬たっぷり。大店のぼんらしい品も色気も持ち合わせている幸次郎。染五郎さん、独壇場です。
かつては住みたいと思っていたこともあるくらい大阪を愛してくださっているだけあってはんなり関西弁もお手のもの(たまにイントネーション微妙なところもあるけどご愛敬)。「ほんまは江戸のお人ちゃうか」と言われて、「なんでやねーん」と返すわざとたどたどしい関西弁の発音もマル。
役者としての力量はもちろんのこと、常に新しいものを求め発見する進取の気性やそれを実現する実行力、プロデュース力。千壽郎さん@小春ちゃんのような若手の才能を見出すセンス。そして舞台の中心にいて輝きを放つカリスマ性。改めてパフォーマーでありアーティストでもある市川染五郎さんの底力を知った思いでした。

「これは歌舞伎じゃない」とか「悪ふざけが過ぎる」と評する向きもあるようですが(事実、2/3にお隣の席だったご年配の男性は終始苦虫噛みつぶしたようなお顔でした)、私はほんとに楽しかったし、何よりも客席を楽しませようという役者さんたちの熱い姿勢に心から拍手を贈りたいと思います。

2/3終演後の楽しかった節分豆まきのレポはこちら

kojiro1.jpgこの日は手ぬぐいを買ったのですが、後日夜の部を観た時にガマンできずに若旦那のポスターを買ってしまいました。
劇場で会ったお知り合いと一緒に出待ちしてそのポスターにサインしてもらっちゃったひらめき

「こりゃ乾かねぇかもしれねぇな」って幸次郎さんとは打って変わって江戸っ子弁でつぶやきながらサインしてくださいました。
一緒にポスターを広げて持ってくださったまわりの染五郎さんご贔屓の皆さまのご協力に感謝かわいい



周囲が笑いに流れる中、男気たっぷりの任侠道をいく信濃屋傳七・愛之助さんもカッコよかったのぉ のごくらく度 (total 893 わーい(嬉しい顔) vs 894 ふらふら)
posted by スキップ at 23:34| Comment(4) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
スキップ様

本当に楽しかったです。
弾丸トラベラーしてよかった。見方に個人差はあるでしょうが、花形らしいパワーあふれる作品だったと思います。恋は盲目、惚れてしまえばアバタもエクボ的配役も、振り返れば喜劇らしく良かったと思います。

個人的に下座音楽が、元某バンドの「師匠」だったこともツボでした。

若旦那の定九郎、何年前になるのかしら、素敵でしたよぉ。
Posted by ファザコンサリー at 2012年02月24日 22:03
♪ファザコンサリーさま

弾丸「セレブ」トラベラー、お疲れさまでした。
贅沢な旅をなさいましたが、好きな役者さんと舞台で楽しい時間を
過ごせるのは何ものにも替え難い幸せですね。

そうそう、あの下座音楽の人、仙波社中の所縁の方だと教えていただいて
興味シンシンで調べたりしました(笑)。

若旦那はどちらかといえば勘平役者?(四月は由良之助だけど)なので
もう定九郎は観られないかも・・・観たかったなぁ。
Posted by スキップ at 2012年02月24日 23:04
こういう舞台を東京でも是非やって欲しいです。
4月の演舞場は花形による仮名手本忠臣蔵の通し上演ということですが、○×?△▼??的なキャスティングですねぇ。まぁ、なんだかんだいっても修行モードで毎月観ているので、4月も観ますが・・・・・・。
Posted by ぴかちゅう at 2012年02月29日 01:11
♪ぴかちゅうさま

染五郎さんがやりたいことをやりたいようにやったという舞台でした(笑)。
大阪ならでは、という感じもしますが、別の企画でもよいので東京でも
よりたくさんの方々に観ていただきたいですよね。

4月の仮名手本は、染五郎さんと「亀治郎」さんの最後の共演が観られると
楽しみにしていたのにちょっと拍子抜けでした。
5月の演舞場も楽しみにしているのですが、染五郎さんは夜の部だけなので
お昼は中村座かなぁ、と。
Posted by スキップ at 2012年02月29日 23:43
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