2011年03月20日

片岡仁左衛門 昼夜の仇討

hikosan.jpg次の週末はまた歌舞伎weekendになる予定なので、それまでにこれだけは書いておかなくちゃ。
二月の松竹座は片岡仁左衛門主演で昼夜 全く趣きの異なった仇討のニ作品の通し上演でした。

二月大歌舞伎 片岡仁左衛門 昼夜の仇討
昼の部 「通し狂言 彦山権現誓助剱」
演出: 奈河彰輔
補綴: 今井豊茂
出演: 片岡仁左衛門  片岡孝太郎  片岡愛之助  坂東竹三郎  尾上松也  坂東薪車  市川猿弥  坂東彌十郎  市川段四郎 ほか

2月6日(日)  11:00am 大阪松竹座 1階3列センター
2月23日(水)  11:00am 大阪松竹座 3階左側バルコニー


見取り上演されることも多い「毛谷村」ですが、これまでご縁がなくて観たことがなく、あらすじも読まず白紙の状態で初見。仁左衛門さんの六助も初役だそうですが、発端から大詰まで上演されるのは大阪では67年ぶりのことなのだとか。

長州藩の剣術指南役吉岡一味斎(坂東彌十郎)は試合の遺恨とその地位を妬む京極内匠(片岡愛之助)の闇討ちにより殺されてしまいます。一味斎の妻お幸(坂東竹三郎)と二人お娘 お園(片岡孝太郎)、お菊(尾上松也)が敵討ちに向かいますが、お菊に横恋慕する内匠によってお菊と許婚の弥三郎(坂東薪車)は無残な返り討ちにあいます。
一方、若党佐五平(市川猿弥)に守られ、毛谷村まで逃れてきたお菊の子弥三松は六助(片岡仁左衛門)に拾われます。六助は百姓ながら武芸にすぐれ、一味斎から極意を授けられたほどの腕前の持ち主。小倉藩は、六助と試合をして勝った者を五百石で召し抱えると高札を立て、これに呼応したのが微塵弾正、その正体は京極内匠でした・・・。

いや、これ、おもしろかったですひらめき
観るまでは、ワタシ的には夜の部がメインだったのですが、この昼の部が見どころたっぷりで楽しくて、元々会社を早退して夜の部を観るはずだった日にチケット追加して会社お休みしてもう1回観ちゃいました。仁左衛門さん六助が登場するのは舞台が毛谷村になってからなので、2回目の幕間が終わるまで舞台には現れません。それまでの登場人物それぞれに見せ場がありますが、まず筆頭は愛之助さんの京極内匠でしょう。
もう、悪い(笑)。最初に観た時の幕間に、「愛之助さん@京極内匠 悪っ。悪ぅ~っ」ってTwitterでつぶやいたくらいです。
悪役だけど白塗りで、端正なお顔に冷酷な表情が映えます。私が愛之助さんを“発見”したのは、5年くらい前、仁左衛門さんが勘平、玉三郎さんがおかるを演じた「仮名手本忠臣蔵」で斧定九郎をやった時。「何、この色悪~?」と驚いたものですが、何となく好青年のイメージの愛之助さん、ほんとは骨太の悪役がよくお似合いです。
お菊と弥三郎を騙して森に連れて行き、そこに埋めたという一巻を二人が信じ切って探す隙に、それまで足が悪くて立てないと弱々しかった内匠が酷薄な表情を浮かべてスックと立ち上がった時には客席からどよめきが起こっていました。ここまで徹底的に悪だと却って小気味いいくらい。まさしく悪の華です。

それにしても人が良すぎ、脇が甘すぎます、お菊ちゃんと弥三郎さん。
松也くんと薪車さんは見た目もバランスよくてお似合いの美男美女カップル。ただ、松也くんはちょっと大きすぎかなぁ。京極内匠に殺される時、伸ばした腕があまりにたくましかったので目を見張りました目
そうそう、2回目に観た時、この場面は3階から見下ろす形だったのですが、舞台に近いバルコニー席だったので、お菊ちゃんがこと切れる刹那の表情まで見えて、なかなか見応えありました。それにしても、左手は懐手のままの京極内匠。「死んでも顔の可愛い奴よのぉ~」って、自分で殺しておいてそんなに好きやったんかい!とツッコミたくなりました。

このお話は女たちの物語でもあって、毅然とした武家の妻・竹三郎さんのお幸、男勝りで武芸の達人、しっかり者の長女の孝太郎さんのお園もとてもステキでした。
仇討に出発する時の、お幸、お菊、お園とそれそれの思いを胸に秘めての花道の引っ込み。
これまで住んで来た屋敷を愛おしそうに眺めて、意を決して前へ進む竹三郎さんお幸の引っ込みの時には哀愁を帯びた胡弓の音が響いていました。
そして一人残って最後に引っ込む孝太郎さんお園。右手に金の扇の上に乗せたお墨付。左手に太刀を持ち、大きく手を広げて、父の死を悲しむ表情を見せ、それを振り払うようにきりりと覚悟の表情を浮かべて前を見据えての引っ込み。立役に勝るとも劣らないカッコよさでした。

四幕目にやっと登場の仁左衛門さん六助。
母思いで人がよく、男気もあるヒーロー。だけどどことなくほんわかしていて可愛いらしい。他の役者さんが演じる六助を観たことがないので、これがスタンダードなのか仁左衛門さんの役づくりの結果がよくわからないのですが、とにかく笑顔のやわらかい、愛すべき人物。
六助の家にお幸、お園と次々と現れて、「母にしてくれ」「許婚じゃわい」と言うのをあっけにとられたように一歩下がって見つめる表情がカワイくてツボでした。
が、微塵弾正が、「耳の聞こえない母に孝行したいので試合にわざと負けてくれ」と言ったのが真っ赤な偽りで、しかもその母は、近所の百姓 斧右衛門の母で用済みになった後は殺していたと解り(こう書いていても、ほんとに悪いな、京極内匠パンチ)、「卑怯未練の微塵弾正!」と怒りの表情を見せると男前度が一気にアップ。やっぱこっちの方がカッコいいです仁左衛門さん。

最後には小さな弥三松も含めて家族全員で仇討を果たし、めでたし、めでたし。
と思いきや、殺されたはずの京極内匠まで起き上って正座して、仁左衛門さんの「昼の部はこれぎり~」の口上で幕。


位置情報 六助の家にお幸が最初に来た時、紙に包んだお金を忍者の手裏剣みたいにピシッと投げて、それを六助が受け取り、また投げ返したものをお幸がキャッチ、というやり取り、楽しかったな。あの間は竹三郎さんならでは。

位置情報 二度目に観たとき、「23日は母者人の四十九日」というセリフがやたら耳に残って(その日が23日だったから)、「あれ?ここって毎日変えてるのかな」と思ったのですが、そんな訳ないよね。


お園さん、臼を軽々と持ち上げていました のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 761 わーい(嬉しい顔) vs 761 ふらふら)
posted by スキップ at 11:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私もどちらかというと夜の部メインな気持ちでしたのにこちらがとても面白く、ハマりました。毛谷村だけではわからない全体の流れがよくわかるし、どうしてこんなに面白いものを通しでやらないんだろうと思いました。
私は2月の半ばに見ましたのでまだ1カ月半しか経っていないのに、色々なことがありすぎてはるか昔だったような気がしていました。
スキップ様のレポ、そうそうまったく感想一緒と頷きながら拝読しました(松也クンの腕、逞しかったですよねえ。ってそんなところ取り上げちゃって  (^-^;)
3月国立をご覧になれなかったのは残念でしたね。私は幸い初日を見ることができましたが、ぜひ同じ配役で再演してほしいと強く願っています。
Posted by SwingingFujisan at 2011年03月30日 09:38
♪SwingingFujisanさま

ざっと書いた感想にコメントありがとうございます。
夜の部も書きかけたままになってしまっていて・・・。

この「彦山権現誓助剱」はほんとにおもしろかったですね。
「毛谷村」以外の部分は主人公の六助が出て来ないから
なかなか通し狂言としてかからないのでしょうか。
通しだとすごくわかりやすいし、ドラマ性も高くなりますよね。

松也くん、博多座では磯之丞をやっていましたが、やっぱり
大きかったです(笑い)。
3月の国立は本当に残念でした。
きっと近いうちに再演していただけるものと心待ちにしています。
Posted by スキップ at 2011年03月31日 06:34
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