2010年10月03日

裏もオモテも人間社会-「シダの群れ」

sida.jpgシアターコクーン・オンレパートリー2010   「シダの群れ」
作・演出: 岩松了 
出演: 阿部サダヲ  風間杜夫  伊藤蘭  江口洋介  
小出恵介  江口のりこ  黒川芽以  近藤公園  尾上寛之  
裵ジョンミョン

9月25日(土) 7:00pm  シアターコクーン 1階B列下手

ストーリー: 近隣の組との抗争の渦中にいる某組。病に伏している組長に代わって組を仕切っているのは古参の組員・水野(風間杜夫)。そこへ刑期を終えて帰って来たタカヒロ(江口洋介)。タカヒロは組長の愛人・真知(伊藤蘭)の息子で組員からの信望も厚い、男気のある人物です。一方、組長と本妻との息子ツヨシ(小出恵介)には妻(江口のりこ)と子がいますが、愛人(黒川芽衣)もお腹に子を宿しています。タカヒロとツヨシを巡って、跡目問題が現実味を帯びて来る中、タカヒロを慕う下っ端組員・森本(阿部サダヲ)は・・・。


ヤクザものと言ってすぐに思い浮かぶのは「仁義なき戦い」(古っ)、比較的最近では、「極道の妻たち」かしら。この舞台は、昔の東映映画のようなフライヤーからもわかる通り、裏社会を舞台にしていますが、そういったヤクザ映画のようなドロドロ感は希薄で、印象としては、ヤクザ世界を描く、というより、「組長」というポジションを争う当人同士とその周りの人々の思惑、権力抗争に姿を借りた人間ドラマといった趣きです。つまるところ、裏もオモテも、人間の営みは普遍、といったところでしょうか。

組員に慕われ、自分が組を背負うに適任と思っているようでもあるけれど、決して本音を明かさず、愛人の子として粛清される運命を受け容れるタカヒロ。
タカヒロを慕い、組の役に立ちたいと思っているけれど自分がどう動いていいかわからない森本。
タカヒロを粛清してでも、組織を守りたい水野。
タカヒロには敵わないと自覚しつつ、組の後継者として威圧することで威厳を保とうとするツヨシ。
そこに、何をおいてもタカヒロを組長にしたい母親の真知や、ツヨシの本妻と愛人の水面下の対立など、女の勝負もからみます。

同じ組織に属していても、男たちの思惑や願いは最後まで平行線を辿り、本音をぶつけ合ったり爆発させることもなく、すれ違ったまま。そのすれ違いが、観る者の気持ちをザラリと波立たせます。

唯一この“もの言わぬ”争いに異を唱え、苛立って、「意味がわからない」と何度も叫ぶ組員が阿部サダヲ演じる森本。
最初はただのパシリのような存在として登場する森本。子犬のようにタカヒロを慕い、気持ちばかりが先走る森本。そんな森本が、タカヒロが粛清されることに気付きながら何もできず、組織の力関係の何たるかを悟り、最後には水野と対等にやり合うまでになって、もしかしたら組を乗っ取ってしまうのでは、という雰囲気まで感じさせる・・・やはりタダモノではありません、阿部サダヲ。

風間杜夫は私にとっては永遠の銀ちゃん(「蒲田行進曲」の銀四郎)。このところTVや映画でシブい魅力を発揮してくれていますが、やはり舞台の人。普段穏やかで、ここぞという時に響かせるドスの効いた声もさすが。蘭ちゃんと踊るルンバやタンゴもステキでした。

江口洋介のタカヒロはいわゆる辛抱役。思慮深く男気もあって、「男は黙って・・・」というタイプ。組の汚れた仕事を一人で背負って、3年ぶりにシャバに出て来たのに先の展望も見えない、という心身ともに疲弊した雰囲気が滲み出ていて、観ていて切なかったです。

小出恵介のツヨシのカッコよさに目が釘付け黒ハート・・・坊っちゃん育ちの苦労知らずのエリートヤクザがぴったり。タカヒロに対して屈折した思いを抱きながら、それを虚勢を張ることで悟られまいとする小心さを醸し出しつつ、血筋から来るカリスマ性も感じさせます。
小出くんは、TVドラマなどでは好青年のイメージですが、前回観たナイロンの舞台といい、ちょっと狂気じみた悪の入った役が本当によくお似合いです。

岩下志麻姐さんばりの迫力あるセリフを聴かせてくれた伊藤蘭。立ち姿が美しく、凛として華やか。だけど正直言うとこの人のお芝居は私はちょっと苦手。とてもお上手なのに、なぜダロ?

逆に江口のりこのアンニュイで投げやりな雰囲気は好きです。坊っちゃんの正妻で、ずっと人を使い慣れている傲慢な態度もよく出ていました。江口のりこさん、「ネジと紙幣」といい、「裏切りの街」といい、私が観た舞台、脇役ながらすべてクリーンヒットです。

黒川芽衣のヨーコの京ことばがとてもベタベタした感じで不快だったのですが、ああいう役だし、そういう演出だったのかな。タカヒロのかつての恋人・ヤスコと友人みたいな設定だったけれど、ほんとはこの人がタカヒロの恋人だったのでは?とも感じたのですが、そこのところは曖昧なままでした。

そして、このヨーコの死で唐突に終わる物語。
チケット取っていた「死ぬまでの短い時間」を見逃したこともあって、今回が私にって岩松了演出作品デビューでしたが、う~ん、若干ビミョーかも。


豪華キャストに負けず劣らず客席も豪華・・・でも肝心な人 見逃したっ! の地獄度 ふらふら (total 694 わーい(嬉しい顔) vs 696 ふらふら)
posted by スキップ at 22:46| Comment(2) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これ、出演者が魅力だったのですが(とくに阿部サダヲちゃんを見たかった)、岩松了は「シェイクスピアソナタ」でちょっとついていけないところがあったので(TVのドラマだとやたら面白いんですけどね)、やめてしまいました。
でも、スキップ様のレポ拝読して、満足ですわ。ありがとうございます。

「表に出ろいっ!」の笑いの裏にある怖さ--本当にこわいですね、そういうのって。
Posted by SwingingFujisan at 2010年10月05日 23:26
♪SwingingFujisanさま

ほんとに豪華キャストですよね。
阿部サダヲさんはいつもながら熱演で、すごくいい味出していました。

>岩松了は「シェイクスピアソナタ」でちょっとついていけないところがあった
あ、やっぱりそうなんですね(笑)。
私も役者としての岩松さんはとてもおもしろく拝見していますが
演出作品は今回初で、豪華キャストですしすごく期待していたの
ですが、?!?!・・・という部分もありました。

笑いに包まれながら強烈なメッセージを示す「表に出ろいっ!」
を観たすぐ後だったので、余計に物足りなく感じたのかもしれません。
Posted by スキップ at 2010年10月06日 00:07
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