2010年05月30日

華やか花形揃い踏み

親世代の円熟した役どころに若手花形が挑む7つの演目。今の年齢でなくては演じられないような熱さ、きらめき、華やかさがあって、歌舞伎の新しい時代のスタートを飾るにふさわしい船出となりました。

hanagata2.jpghanagata1.jpg

新橋演舞場 五月花形歌舞伎 
昼の部
一、菅原伝授手習鑑 寺子屋  
市川海老蔵  中村勘太郎  中村七之助  尾上松也  市川染五郎 ほか
二、義経千本桜 吉野山
中村勘太郎  市川猿弥  中村福助
三、新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎  
尾上松緑  中村芝雀  市川海老蔵  中村七之助  市川左團次 ほか
四、お祭り
市川染五郎  松本錦成 ほか

夜の部
一、一谷嫩軍記 熊谷陣屋
市川染五郎  市川海老蔵  中村七之助  尾上松也  中村歌六 ほか
二、うかれ坊主
尾上松緑
三、歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜 三浦屋格子先より 水入りまで
市川海老蔵  中村福助  市川染五郎  尾上松緑  中村七之助  市川猿弥  中村歌六  片岡秀太郎  市川左團次 ほか

5月15日(土) 昼の部 11:00am 新橋演舞場  1階1列センター
          夜の部 4:30pm  新橋演舞場  1階13列上手


お芝居を観る上で、過去に同じ役を演じた他の役者さんと比べるのは、基本的にルール違反だと思っています。たとえ演出が同じでも、共演者やまわりの様々なことや、まして観る側の自分自身の“目”がその時々で同じではないはずだから。
ですが、歌舞伎の場合、その家の芸というものがあり、この役者さんならではという持ち役もあり、「團十郎の助六は」「吉右衛門の熊谷は」となってしまうのは無理からぬことかもしれません。まして今月の新橋演舞場花形歌舞伎は、親世代が演じた四月歌舞伎座公演との対照を前提とした座組となっています。中でも一番印象に残ったのは、打ち出しの「助六由縁江戸桜」。
22年ぶりの上演という水入りも観るのは初めてで、とても楽しめました。
四月の團十郎さんの助六を観た時、「そうよ。助六ってこうよね~」と思ったものでしたが、海老蔵さんの助六は、團十郎さんのそれと同じではないのに、「あ、これ、助六!」と感じました。颯爽と舞台を駆け抜けるような助六。いかにも男伊達な姿形が美しいばかりでなく、生意気でやんちゃで暴れん坊なところも、友切丸を探すという目的を堅く秘めたところも、團十郎さんの助六像を受け継ぎながら、自分なりの解釈も加えて、”海老蔵の助六”をつくり上げている感があります。これが成田屋宗家の血?「助六」って成田屋の芸なのだなぁと実感しました。

福助さんの揚巻は崩すことなく丁寧に演じている印象。水入りの場面で、助六を隠して、取り囲む捕り手に向かって切る啖呵、カッコよかったです。
そして、染五郎さん初役の白酒売新兵衛がとてもよかった。こんな染ちゃん好き揺れるハート白塗りの美しいお顔に江戸和事のやわらかでふんわりした雰囲気がマッチして、弱っちぃけど品は失わず、ちゃんと兄としての格もあって、海老蔵助六とのバランスもよかったです。
この二人にからむ通人の猿弥さんがケッサクわーい(嬉しい顔)四月の客席を大いに沸かせた勘三郎さんの後ではさぞやりにくかったことと思いますが、海老蔵さんを「肉食系男子」、染五郎さんを「草食系男子」と呼び、「見ごろ 食べごろ 染五郎」と続けて、花道では、「あんな男になりたや~(成田屋)」とキメてやんやの喝采を受けていました。

海老蔵さんのもうひとつの大役 「寺子屋」の松王丸はさすがに手ごわかったでしょうか。とても力が入っていた感じを受けました。仮病とはいえ、咳をしても病気に見えなかったのはご愛嬌かな。
海老蔵さんの他の2役 「魚屋宗五郎」の磯部主計之助と「熊谷陣屋」の源義経は、どちらも短い出ながら品と大きさを感じさせました。こういう高貴でキレイな殿様はほんとによくお似合い。二役とも「堅固で暮らせ」という同じセリフがあるのですが、当然のことながら言い方も変えていてさすが。

染五郎さんの「熊谷陣屋」は吉右衛門さんの絶品直実がまだ記憶に新しいので、いささか分が悪いです。ご本人も筋書のインタビューで語っていらっしゃるように、「形や台詞回しなどが完成されているので、なぞるだけで精一杯」だったのかもしれません。が、やや硬さが目立った前半に比べて、後半は直実の苦しい胸の内や、わが子小次郎、妻相模に対する思いがほとばしり出て胸を打たれました。そして、最後の花道で、人の世の無常を思ってぽろぽろ涙をこぼす直実にこちらももらい泣きたらーっ(汗)これから回数を重ねて、直実を自分のものにしていくこと、期待しています。

七之助くんの相模は若くて美しく、わが子を思う気持ちがよく表れていました。声の通りもよくて台詞はしっかりしていましたが、台詞がなく佇む場面や他の人が芝居をしているところでは所作が止まって、「相模」ではなくなってしまうところが今後の課題でしょうか。これは藤の方を演じた松也くんにも感じました。
勘太郎くんは「寺子屋」で演じた千代が際立った印象。忠義のために、一度は納得してわが子を身替りにしたものの、心では堪えることができない母としてのい哀しみが滲み出ている千代でした。

松緑さんは「魚屋宗五郎」のような役がよくお似合いです。江戸前で気風もよくて、酔っ払いの演技もお手のものという感じです。ちょっと雰囲気が現代劇のようでしたが。
女房おはまの芝雀さんがすばらしい。芝雀さんって白塗りの印象が強かったので、最初誰だかわかりませんでした。完全に姉さん女房だけど(笑)、情に厚くしっかりものの下町のおかみさん。ステキでした。

お父さん世代の域に達するのはまだまだ遠く険しい道のり。
でもそのお父さんたちだって初役の時があったのだし、たくさんの精進を重ねて今に至ったはず。
若い世代には、お父さんたちが欲しくてももう手に入れることができない若さやきらめきがあって、熱い想いもあふれていることでしょう。
勘太郎くんの狐忠信や染五郎さんの鳶頭なんて、姿も所作も踊りもほんとにキレイで、観ているだけで楽しいし、うっとり見とれてしまいます。これぞ花形の醍醐味のひとつ。
その輝きを武器に、これからも精進していただきたいし、応援しつつ楽しみに観ていきたいと思います。


IMG_3234.jpgこの日の夕食は、前から一度行ってみたかった銀の塔のビーフシチュー。
歌舞伎座がある時には行ったことなかったのにね。


夜の部の幕間に食べに行ったから「うかれ坊主」パスしてしまいました。ゴメンナサ~イ のごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 644 わーい(嬉しい顔) vs 640 ふらふら)
posted by スキップ at 00:45| Comment(2) | TrackBack(1) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先にTBだけしてコメントが遅れて恐縮ですm(_ _)m
新橋演舞場五月花形歌舞伎は、四月の歌舞伎座さよなら公演と3演目わざわざかぶらせたことで、若手の奮起の場となって芸の継承を目の当たりにして感慨深いものがありました。
七代目幸四郎の曾孫たち+中村屋兄弟の花形がそれぞれ頑張ってくれているのが嬉しく、これからも歌舞伎を観続ける楽しみが増しました。
千穐楽の「助六」の記事だけTBさせていただきましたが、末尾に全部の記事をリンクしてありますので、よろしければお目通しいただけると嬉しいです。けっこう気合が入ってしまったもんですから(^^ゞ
Posted by ぴかちゅう at 2010年06月08日 00:03
♪ぴかちゅうさま

ほんとうに、親世代の円熟味とはまた違った、荒削りではありますが
瑞々しく、真摯に役に取り組む花形役者さんたちの舞台もまたとても
魅力的でしたね。
明らかに次代の歌舞伎を背負って立たせることを意識した座組みにも
興味シンシンでしたが、がんばっていらっしゃいましたね。

トラックバックありがとうございます。
ぴかちゅうさんの気合いの入ったレポ、じっくり読ませていただきます。
Posted by スキップ at 2010年06月09日 05:45
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック

10/05/28 五月花形歌舞伎千穐楽夜の部(3)22年ぶりの水入りまでの「助六」
Excerpt: {/usagi/} 歌舞伎座さよなら公演と2ヶ月続けてかぶらせる演目の第三が「助六」。22年ぶりの上演となる「水入り」までを若い海老蔵がやってくれるというのが最大の楽しみ! 御名残四月大歌舞伎「助六」..
Weblog: ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記
Tracked: 2010-06-07 21:10