2008年02月25日

咲く花を見ていればよかった

IMG_3229.jpg坂本龍馬と岡田以蔵は、ともに土佐藩の下級武士の出身で、同じ時代を生き、志半ばで若くして非業の死を遂げるという同じ運命を辿っていますが、まるで歴史の明と暗-坂本龍馬が幕末から明治維新を颯爽と駆け抜け、今なお敬愛され続けるヒーローであるのに対し、「人斬り以蔵」と呼ばれ、暗殺を生業としたダークでアンチなイメージの岡田以蔵-28歳でこの世を去ったそんな岡田以蔵を、28歳の森田剛が鮮烈に演じたいのうえ歌舞伎。

劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎☆號「IZO」

2月18日(月) 6:00pm シアターBRAVA! 1階U列下手

作: 青木豪     
演出: いのうえひでのり
出演: 森田剛 戸田恵梨香 田辺誠一 千葉哲也 池田鉄洋 山内圭哉 木場勝己 
    西岡徳馬 粟根まこと 中谷さとみ ほか


無口でクール・・・これまで描いていたイメージとは全く別の以蔵でした。
混沌とした幕末の時代、「天誅」の名の下、殺し屋として暗躍し、畏れられ、そして疎まれ蔑まれた以蔵。森田剛の以蔵はとにかくひたむきに、立ち止まることなく叫び、走り、斬り、何かを求めつづけていました。甘え、拗ね、怒り、妬んだ-その全身全霊の叫びが、ひりひりと痛く、見ていて辛い。ただひたすら武市半平太を慕い、自分にとっての「天」と信じた以蔵が最後に見つけた答え、それは「天は動く」ということ。「犬に扱われれば人になりたがり、人になったら武士になりたがった-ただそこにあるだけの山を見上げて、咲く花を見ていればよかった」と独白する以蔵の背にふりそそぐ黄色いまんさくの花・・・切ないくらいに哀しく美しいラストシーンでした。

心配になっちゃうくらい痩せている森田剛は、それが却って精悍で荒んだ以蔵のイメージに重なり、想像以上にハマっていました。「荒神」の時にも感じましたが、とても身体能力が高く、スピーディでキレのよい動きや殺陣はカッコいい。その表情からは以蔵の焦燥感や絶望感、孤独な心が感じ取られ、いのうえさんではないけれど「ジャニーズ侮りがたし」です。願わくば古田新太や橋本じゅんとがっぷり組んだ新感線の舞台で森田剛をもう一度観てみたい。

池田鉄洋の龍馬も山内圭哉の田中新兵衛もよかったけれど、一番印象に残ったのは粟根まことの勝海舟。べらんめぇ調のセリフも決まって、勝海舟という人物の度量の大きさや賢明さ、ちょっと変わり者ぶりがすごくよく出ていて、短い出番ながら影の当り役ではないかしら。

2004年の『アカドクロ』『アオドクロ』連続上演の後、いのうえ歌舞伎は第2章に入り、より人間ドラマを掘り下げる方向へシフトして、その第1作が笑わない橋本じゅん(柳生宗冬役)に象徴される、笑いやギャグをできるだけ排した『吉原御免状』で、明らかにその変化を感じたものでした。
そういう意味では、ちょうど1年前の今日千秋楽を迎えた『朧の森に棲む鬼』より、今回の『IZO』の方が第2章のコンセプトをより反映しているように感じます。

ただし、映像を多用した演出には一言あり、です。
シルエットを上手く使っている場面もありましたが、時の流れや事件の経緯を文字(字幕)で説明するというのは、舞台の演出としていかがなものか。確かに“八月十八日の政変”をきっかけに尊皇攘夷派の立場がドラスティックに反転するあたりはややこしいけれど盛り込まなければならないサイドストーリーで、演出家泣かせではありますが、私たちは映画を観に来た訳でもケータイ小説を読みに来た訳でもありません。わかりやすく、という意図は理解できますが、観る側のイマジネーションも信じてほしい。石部宿の暗殺の場面の階段の回り舞台はすごくカッコよかったし、ラストのまんさくの花が散りゆく様は涙出るくらい美しく、ああ、舞台っていいなって思えた・・・舞台ってこうでしょ?・・・ここのところ、一度いのうえさんとじっくり話したいです(笑)。

位置情報 そういえば、むかーしTVでやってた三谷幸喜脚本のドラマ『竜馬におまかせ!』 今から思えば武市半平太役ってなるし~だったなぁ。(ちなみに主役の竜馬はダウンタウンの浜ちゃんで、以蔵は反町隆史でした。)


ラスト近く流れるメロディに、え~っ、何この歌~?と思ったのに泣けてきたよのごくらく地獄度 わーい(嬉しい顔) ふらふら (total 303 わーい(嬉しい顔) vs 300 ふらふら)
posted by スキップ at 23:37| Comment(8) | TrackBack(1) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
スキップさん、こんばんは!
ラストシーン、本当に本当に美しかったですよね。
今思い出しても、ちょっとうるっときてしまいます。
そして、私も粟根さんの勝海舟が大好きです!
もしかしたら一番好きだったかも?(笑)
Posted by 恭穂 at 2008年02月26日 22:22
♪恭穂さま

こんばんは。
舞台全体を通してわりと色彩を押さえた暗めのトーンだったので、
あのラストのまんさくの花びらには視覚的にも心情的にもヤラレ
ました。そこに剛くんの姿が重なって・・・涙出そうです。

粟根さんが勝海舟と聞いた時にはどうだろう?と思ったのですが、
ほんとにハマってましたよね。もう少し長く観たかったです。
Posted by スキップ at 2008年02月27日 01:46
こんばんは。
『IZO』東京で見て堪能しましたが、大阪で追加になった場面があるなど、
演出の変更があったと聞き、もう行けば良かったと悔しがってます。

映像は私は『メタル・マクベス』くらいの使い方が好きです。
『IZO』は場面数が多いとはいえ、もう少し観客の想像に頼っても良いかなと思います。
それでもラストの美しさにはヤラレター!
Posted by 花梨 at 2008年02月27日 23:33
♪花梨さま

こんばんは。
大阪で場面が追加になっていたのですね、どの場面かしら?
私が観た日も会場でいのうえさんをお見かけしましたが、
幕が開いてなお舞台を見つめ続け、改良すべきところは
改めていくというあの姿勢には頭が下がります。

そうそう、「メタル・マクベス」はよかったですね。
じゅんさんの入浴シーンとか(笑)。
Posted by スキップ at 2008年02月28日 03:22
読ませていただき、
>むかーしTVでやってた三谷幸喜脚本のドラマ『竜馬におまかせ!』
・・・の、
>武市半平太役ってなるし~だったなぁ
・・を、(興奮して)探すべく旅にでており
すっかり、コメントが遅くなってしまいました(笑)
もう、何にも無い!何も見ることはできませんでした(残念!)
しかし、すごいですね~~!
私も一目見たかったなあ!
・・・って、『IZO』に関しての一言はっ!?(がはは!)
今度、お会いした時に・・・・(笑)
いや、なるし~について、聞いてるかも・・(笑)
Posted by かずりん at 2008年02月28日 09:53
元V6ファンだからの贔屓目なのかと思ってましたが
スキップさんに褒めていただいててホッとしました。

岡田以蔵=反町隆史なぐらい好きだったドラマですが、残念なことになるし~の記憶はありません・・・
Posted by 京 at 2008年02月28日 22:10
♪かずりんさま

何だかあのドラマは視聴率がとても悪かったので、ビデオとかDVDとか
一切作らなかったそうです。ザンネンですね。

なるし~はねぇ、あんまりよく覚えてないんだけど、おかしかったです(笑)。
Posted by スキップ at 2008年02月29日 00:53
♪京さま

剛くんは「荒神」の時もすごくよかった印象があるので、今回も期待していた
のですが、期待以上でした。これからももっといろんな役を観てみたいですね。

なるし~の武市はレギュラーではなくて、1回か2回のゲスト出演だったと
思います。あんまり存在感なかったかな(笑)。
Posted by スキップ at 2008年02月29日 00:57
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Tracked: 2008-02-27 23:43