2007年07月10日

松竹座七月大歌舞伎 昼の部


shochikuza200707.jpg大阪松竹座の恒例七月大歌舞伎は、松竹座新築開場十周年記念で片岡仁左衛門率いる松嶋屋の面々に市川海老蔵が加わリ、昼夜とも上方ゆかりの彩り豊かな演目となっています。7月8日昼の部は、仁左衛門夫人つながり(?)の祇園甲部の舞妓さん、芸妓さんが上手下手の両桟敷席にずらり陣取っての総見でとても華やいだ客席でした。

大阪松竹座 「七月大歌舞伎」 昼の部
7月8日(日) 11:00 大阪松竹座 1階8列下手



幕開きは、市川海老蔵の鳴神上人に、片岡孝太郎の雲の絶間姫を配した
歌舞伎十八番の内 「鳴神」

この演目は市川海老蔵の荒事につきます。まさに力仕事、素晴らしい気迫でした。
花道間際の席だったので、最後の引っ込み、花道七三での見得は、全身に力が漲り、目は血走り、こめかみに血管が浮き出ているのがありありと見て取れました。歌舞伎十八番=成田屋十八番という市川宗家の神髄を見た思いです。

前半の高僧の部分も思いの外よくて、若いながら上人の気品も風格も感じさせ、所化たちが崇め畏れているのも納得の役作りです。ただ、雲の絶間姫とのやり取りの中で、いささか軽めでコミカルな台詞回しになるのは、どうかな?高僧の威厳と堕落するに至るバランスは難しいと改めて感じました。
これに対する片岡孝太郎の雲の絶間姫は、いかにもデキル女という風情ながら可愛らしさも色っぽさも併せ持っていて、亡き夫とのなれそめを聞かせるくだりは上人や所化さんたちと一緒にこちらまで聞きほれてしまいますが、癪を起こすところなど、まさに「さぁ、やるぞ」という表情を見せるのはいく分技巧に走り過ぎかな、という印象を受けました。後で番附を読むと意識してそういう(策略が匂うような)役作りをしているということでしたが、ここは好みの分かれるところでしょうか。


オ月大歌舞伎.jpg


中村壱太郎の牛若丸、片岡愛之助の武蔵坊弁慶で短い舞踊「橋弁慶」をはさんで、


「義経千本桜」 渡海屋・大物浦

渡海屋銀平実は新中納言知盛 片岡仁左衛門/源義経 市川海老蔵/相模五郎 片岡愛之助/入江丹蔵 市川男女蔵/武蔵坊弁慶 中村歌六/女房お柳実は典侍の局 片岡秀太郎

ずっと観たいと思っていた片岡仁左衛門の知盛。期待に違わぬ出来で、勇壮さも悲壮感も滲ませ、壮絶な最期に至るまで目をひきつけて離しません。渡海屋銀平での登場は颯爽とした侠客の雰囲気。義経一行の船が出た後、知盛としての正体を現すところでまず劇的に変化。その後、大物浦の場では、鎧まで白一色の装束に全身に傷を負い赤い血のりを散りばめた悲壮な姿へとさらに劇的に変化して鬼気迫る演技です。自分の体に突き刺さった矢を抜いて舐める場面があり、「うっわ~っ、ノドが渇いても血をなめるしかなかったのかなぁ」とあまりにリアルで凄絶な演出に思わず渋面を作ったほど。(・・・これ、後で番附読んで二世實川延若の型を復活させたことを知りました。)碇を体に巻きつけて、一顧だにせず背中から大きく海へ飛び込む知盛。勇将の豪胆もプライドも、激情も恨みも哀しみも、すべて海が呑み込んでいったのでした。

市川海老蔵の義経が、これまたとてもよかった。若く美しい容姿に気品と哀愁が漂い、音に聞く義経はきっとこんな風情だったのでは?と思わせます。あの義経だから知盛も「昨日の仇は今日の味方」と得心して海に還って行くことができたのかもしれません。オペラ座でまたひと皮むけたのか、仁左衛門さんのご指導のなせるワザか、市川海老蔵、充実の七月と見ました。夜の部も楽しみです。



最後を締めくくる武蔵坊弁慶(中村歌六)の法螺笛が哀感漂うごくらく度 わーい(嬉しい顔)
(total 226 わーい(嬉しい顔) vs 225 ふらふら)


posted by スキップ at 00:32| Comment(8) | TrackBack(1) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
拝読していると行きたくなってしまふ。
ここ半年飛ばしすぎて、大阪にさえ行けないくらいに極貧になってしまいました。
素敵な感想で満足して・・
あーっやっぱり行きたい!!(涙)
Posted by るるる at 2007年07月12日 20:40
♪るるるさま

コメントありがとうございます。
そうなんですよね。私も書いていてまた観たくなりました。
ほんとにステキだったんですよ、仁左衛門さんの知盛。
Posted by スキップ at 2007年07月13日 00:12
スキップさん、よかったですねー!! 仁左衛門さんの知盛がこんなに早く大阪で見られて。本当に最後まですごい引力でしたね。
舞台写真狙いでまだ番付を買ってないんですが、血をなめるアレは型だったんですか~。ムム、そんなことを考え出した二世實川延若さんって凄い。たしか同じ上方の役者さんでしたよね。
意外にもよかったのが海老蔵さん(笑)。油地獄、染ちゃんVS海老ちゃんがますます楽しみになりました。
鳴神はまだ観てないんですが、TBさせていただきますね。
Posted by ムンパリ at 2007年07月13日 02:37
スキップさん、こんばんは。
私は7日に見てきました。
仁左衛門さん、すごい気迫でしたね。
本当に悲壮な場面なのに、そこに「美」を感じてしまいました。
1階席なら、なおさら感じられたんじゃないでしょうか。
夜の部は残念ながら行かないので、感想楽しみにしてますね♪
Posted by るみ at 2007年07月13日 21:58
♪ムンパリさま

仁左衛門さんの知盛、ほんとにすばらしかったですね。
あの血をなめる型は、私は逆にそんな場面があると事前に知らなかった
ので、とても衝撃的でした。歌舞伎の様式美に仁左衛門さんの美学が
ピタリとハマッて、忘れられない舞台となりそうです。私も出来れば
もう1回観たいと思っているのですが・・・。

海老蔵さん、昼の部2役ともよかったです。
ご本人が「温かく見守って下さい」と珍しく殊勝な(?)発言をなさって
いる上方物の夜の部、楽しみです。
Posted by スキップ at 2007年07月14日 00:15
♪るみさま

こんばんは。
会社の後輩も7日に観たそうですが、最後の場面に安徳帝が出てこなかったとか・・・
舞台にハプニングはつきものと言ってもオドロキですね。

仁左衛門さんは本当にすばらしくて、思い出しても涙出そうですが、
夜の部はうってかわって、ほわぁ~んとしたお殿様ぶりを見せて
くださるとか。こちらも楽しみです。
Posted by スキップ at 2007年07月14日 00:19
>スキップさま
お言葉ありがとうございました。最近はブログも携帯で全ての操作ができますが,巡回は無理のようでお礼に上がるのが遅れました。
結局,昼の部は見ることができず,次の土日は完売ですから,諦めざるを得なくなってしまいました。見たかったぞ。大物まで向かえに行ったのに~(涙)。気を取り直し,今後もよろしくお願い致します。
Posted by とみ at 2007年07月18日 21:15
♪とみさま

もうすっかりお加減はよろしいのでしょうか。
舞台はナマモノと言ってもほんとに思いもかけぬことが起こるものですね。
昼の部、私も仁左衛門さんの知盛をできることならもう一度拝見したいし、
愛之助さんの鳴神も観てみたいや~ん、と色気を出してみたものの、
土日完売であえなく敗退。何とも悩ましい七月となりました。
こちらこそ、今後ともご指導くださいませ。
Posted by スキップ at 2007年07月19日 01:48
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Excerpt:  公演名 大阪松竹座新築開場十周年記念 七月大歌舞伎  劇場 大阪松竹座  観劇日 200..
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