
皆様方のお目がもし
お気に召さずばただ夢を
見たと思ってお許しを
拙い芝居ではありますが
夢に過ぎないものですが
皆様方が大目に見
お咎めなくば身の励み・・・
ラスト 聞き慣れたパックの口上を役者さんたちが一節ずつ語り、横一列になって手をつないでゆっくりと舞台奥から前方に出てきた時、ぶわっと涙があふれました。
自分でも不思議な感情。
本当に、一夜の夢のような ナマの舞台が私は大好きで、今年はこんな状況になってたくさんの公演が中止になったり観に行けなかったりして、それは仕方のないことと納得していたつもりだったけれど、自分でも気づいていない悲しみの澱のようなものが心の奥底に沈んでいて、そこにパックの言葉がしみ入ったのだと思います。
最前列でしたので、涙をぬぐいぬぐい拍手する私をキャストの皆さまが珍しいものを見るようにご覧になってた気が・・・(^^ゞ
「真夏の夜の夢」
原作: ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳「夏の夜の夢」より
潤色: 野田秀樹
演出: シルヴィウ・プルカレーテ
舞台美術・照明・衣裳: ドラゴッシュ・ブハジャール
音楽: ヴァシル・シリー 映像: アンドラシュ・ランチ
出演: 鈴木杏 北乃きい 加治将樹 矢崎広 今井朋彦 加藤諒
長谷川朝晴 山中崇 河内大和 土屋佑壱 浜田学 茂手木桜子
八木光太郎 吉田朋弘 阿南健治 朝倉伸二 手塚とおる 壤晴彦
2020年11月21日(土) 1:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
1階C列(最前列)下手 (上演時間: 2時間)
シェイクスピアの「真夏の夜の夢」は、「目を覚まして最初に見たものに恋してしまう」という恋の媚薬を妖精パックが間違えて塗ってしまったことから巻き起こる2組の若い男女と妖精の王・女王の恋のドタバタを描いたファンタジーコメディですが、今回上演されたのは野田秀樹さん潤色版。
物語の舞台は創業130年の割烹料理屋「ハナキン」。
ハーミアはその料亭の娘ときたまご(北乃きい)、恋人のライサンダーは板前ライ(矢崎広)、許婚のデミトリアスは板前デミ(加治将樹)、デミトリアスに恋するヘレナはそぼろ(鈴木杏)、アーデンの森は富士山の麓の「知られざる森」となって、彩り豊かで重層的な物語が展開します。
野田秀樹さんの「真夏の夜の夢」といえば、大竹しのぶさんのそぼろ、毬谷友子さんのときたまご、デミとライは唐沢寿明さんと堤真一さんという超豪華キャストだったなぁと思い返して調べたら1992年。おぅ、28年も前だったのかと驚愕(もちろんこのブログ始めるはるか前)。
野田版の最大の特徴は、「ファウスト」の悪魔メフィストフェレス(今井朋彦)が登場してパック(手塚とおる)に取って替わること。しかも明確な“悪意”を持って。
続きがあります