2020年07月12日

演劇配信の新しい形 「『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊」 @KAAT Youtubeチャンネル


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「上演の予定がなくなった演劇は、幽霊になるのでしょうか?
あなたのオンライン環境に、「未練の幽霊と怪物」の上演の幽霊を出没させてみたいと思っています。」
と岡田利規さん(作・演出)。


私もチケットを取っていて、全公演中止をとても残念に思っていた公演。
カンパニーは中止が発表された後も来るべき未来の上演に向けて一度も直接会うことなく、それぞれのリモート環境下でワークショップやリハーサルを行ってきたのだとか。
そのクリエイションの一部を演奏付きのリーディング形式でオンライン配信。
ライブではありませんが、定められた2日間2回だけの無料配信でアーカイブもなしという潔さ。


「『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊」
『挫波(ザハ)』『敦賀(もんじゅ)』(の一部)
作・演出: 岡田利規
音楽監督・演奏: 内橋和久
出演: 森山未來  片桐はいり  栗原類  石橋静河  太田信吾/七尾旅人(謡手)
アフタートーク: 岡田利規  白井晃/進行 鈴木理映子

2020年6月27日(土) 4:00pm KAAT Youtubeチャンネル
(本編80分+アフタートーク)



今では巷にあふれているリモート配信とは一線を画して、細部にまでこだわり、とても凝っていてアーティスティック。
ひとつの作品として完成されていて、映像作品としても成り立つ、演劇配信の新しい形です。
内容は途中までだし難解で理解できない部分もありましたが、映像含めてとても刺激的で示唆に富んだ作品。
これ、やっぱり舞台で観たかったなぁと思いました。

配信開始時間少し前から映し出されるのは道路に面した一面の窓際に置かれた木製の机。
小型のスピーカーが置かれています。壁には今月のカレンダー。
外の道は人が行き来したり車が通ったりしていました。

開始時間になると机の上に写真立てくらいの、大きさが違う紙製のパネルが3つ並べられ、そこに役者さんの映像を個々に投影する形。
進行につれて窓の外は日暮れて次第に暗くなって時の流れが感じられます。

能の上演形式にのっとった舞台ということでしたが、今回のクリエイションは、どちらも能で言う後ジテが登場する前の部分までの上映でした。


「挫波(ザハ)」
日本の新国立競技場の国際コンペを勝ち取りながら理不尽な理由で白紙撤回され、その後亡くなってしまったイラク出身の建築家 ザハ・ハディドの物語
 ワキ(観光客):太田信吾/シテ(日本の建築家):森山未來/アイ(近所の人):片桐はいり/
歌:七尾旅人/演奏:内橋和久 

 「敦賀(もんじゅ)」
1985年の着工以来1兆円を超す巨額の資金が投じられながら一度も正式稼動することなく廃炉の道を辿る高速増殖炉「もんじゅ」の物語。
 ワキ(旅行者):栗原類/シテ(波打ち際の女):石橋静河/アイ(近所の人):片桐はいり/歌:七尾旅人


夢幻能形式と言われるもので、どちらのお話も、縁の場所を訪ねたワキ(観光客、旅行者)が、シテ(亡くなった失意の建築家の化身、擬人化された廃炉発電所)の回想と地元の人の話を聞くまで。
基本リーディング形式ですが、森山未來くんや石橋静河さんはダンスもあって、小さなパネルの中で動きが見えにくいのが残念なくらい。
内橋和久さんの音楽と演奏、語りにも似た七尾旅人さんの歌唱もとてもよかったです。

本来は、「東京オリンピックを目前に控えた日本」で上演されることを前提として構想された作品ということですが、先の見えないコロナ禍、その中で演劇や芸術のあり方、捉えられ方、開催自体が危ぶまれるオリンピックなどの状況がこの2つの物語と一層シンクロする印象。
ザハの一件にしてももんじゅにしても、都合の悪いことはうやむやにして「ないもの」とする傾向が見え隠れする政権のあり方が、今のコロナの対応にも重なるようでうすら寒さも感じます。

後ジテの登場する後半も観てみたかったし、何より舞台で観たかったな~と思いました(再び)。


アフタートーク
作・演出の岡田利規さんとKAAT芸術監督の白井晃さんの聴き応えたっぷりのアフタートーク。

芸術家肌のお二人のトークは私には難解な部分も多く、文章にまとめるのが難しいのですが、「テーブル(机)が能舞台」という発言があって、「そうだったのか!」と気づいたりも(遅い)。
白井さんは「映像の人物が小さい。あとでアップになるかと思っていたけどなかった」とおっしゃったのを聞いてぶんぶん首を縦に振った不肖スキップでございました。
「パソコン持ち出して外の環境で2度、駅のホームと環八の歩道橋の上で観たら、忘れてはいけない日常のことがより増強された」とも話していらして、窓の外の風景が映り込んでいるのも「日常」から離れないという意図があったのかなと思いました。


この公演は今年は中止になりましたが、延期して実現される予定とのこと。
楽しみに待ちたいと思います。
 



一度では拾いきれない部分もあったので日曜日にもう一度観たかったけど無理だったのよ のごくらく地獄度 (total 2115 vs 2122 )


posted by スキップ at 23:11| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする