
Love of my life – you’ve hurt me
You’ve broken my heart and now you leave me~
フレディ・マーキュリーが歌う “LOVE OF MY LIFE”の甘く切ないメロディが流れる中
名もない兵士として屍の中に身を埋めるロミオ
ジュリエットへの愛を胸に抱いて
あれ?ワタシ 泣いてる?
・・・訳もなく涙があふれるという思いを久しぶりに味わったラストシーン。
NODA・MAP 第23回公演
「Q:A Night At The Kabuki」
Inspired by A Night At The Opera
作・演出: 野田秀樹
音楽: QUEEN
美術: 堀尾幸男
照明: 服部基
衣装: ひびのこずえ
美粧 柘植伊佐夫
サウンドデザイン 原摩利彦
出演: 松たか子 上川隆也 広瀬すず 志尊淳 橋本さとし
小松和重 伊勢佳世 羽野晶紀 野田秀樹 竹中直人 ほか
2019年10月20日(日) 6:00pm 新歌舞伎座 1階8列下手/
10月23日(水) 2:00pm 1階3列センター
(上演時間: 3時間/休憩 15分)
野田秀樹さんがQUEENのアルバム「オペラ座の夜」からインスピレーションを得た作品。
映画「ボヘミアン・ラプソディ」よりも2年前、「『オペラ座の夜』の演劇性を本当に<演劇>として広げられないものか、それをクイーンが好きな日本の劇作家、演出家ヒデキにお願いできないか」というQUEEN側から直接のオファーが始まりだったそうです。
モチーフは「ロミオとジュリエット」。
最初からこのモチーフが明らかにされているので、たとえば「逆鱗」の人間魚雷、「エッグ」の731部隊のように、観ているうちに主題が現れて愕然とする、といったことはないなぁと思いながら観ていたのですが、そこは野田さん。
私たちが知っている「ロミオとジュリエット」の物語は一幕で完結して、二幕はその二人が生き残っていての「その後」の物語。
「オペラ座の夜」がまずあって、「ロミオとジュリエット」と源氏平家の争いとを重ね、さらにシェイクスピアの他の戯曲を散りばめ、歌舞伎、近松、民族闘争や近現代の戦争までを融合させて一つの物語として昇華させるなんてとんでもないワザで、それでいてちゃんと切ないラブストーリー。野田さんの筆致が冴えわたります。
本当に野田さんは天才。
2012年に中村勘三郎さんが亡くなった時、串田和美さんは「芝居の神様の子ども」という追悼文を寄せていらっしゃいましたが、野田秀樹さんも間違いなく「演劇の神様に選ばれた子ども」だと思います。
432,000秒(5日間)の恋に疾走するロミオとジュリエット。
源氏の領袖 源義仲の娘 源の愁里愛(じゅりえ)に広瀬すずさん
平家の平清盛の嫡男 平の瑯壬生(ろうみお)を志尊淳さん
そして、2人のその後の姿となる「それからの愁里愛」「それからの瑯壬生」を松たか子さんと上川隆也さんが演じて、この2人がこの恋の結末を死という悲劇で終わらせないよう運命の先回りをしようという展開。
ティボルトがマーキューシオを殺し、そのティボルトをロミオが殺して・・・という報復の連鎖が描かれる「ロミオとジュリエット」ですが、平清盛が源義朝を討ち、義朝の遺児である頼朝、義経が平家を滅ぼすという源氏と平家の争いは、まぎれもなく報復の連鎖だと改めて感じました。
「この世から戦(いくさ)が消える日に」また会えると約束したはずの愁里愛と瑯壬生。
「この世から戦(いくさ)が消える日に」と何度もつぶやく愁里愛。
でも二人にその日は来なかった。
それはとりもなおさず、この世界から戦争がなくなる日がまだ来ていないという野田さんのメッセージと受け止めました。

本人確認が厳格だったこの公演。
確認終了後にいただける日替りのカードはポスターやパンフレットからのデザイン。
渡辺敏秋さんのイラストです。
続きがあります