2019年11月02日

加害者へと姿を変えた被害者 「死と乙女」


deathandthemaiden.JPG「未完成交響曲」とともにシューベルトの晩年(31歳で早世しているので“晩年”という言葉はしっくりこないけれど)の作品として学生時代、音楽鑑賞の時間に聴いた記憶がある「死と乙女」。
その弦楽四重奏曲をモチーフに、チリの劇作家アリエル・ドーフマンが、独裁政権下で自身が受けた弾圧の事実をふまえ、政権崩壊後の1990年に発表した戯曲。

かつての軍事独裁政権下で受けた拷問の記憶に苦しむ妻
民主的な新政権で重職を担う弁護士の夫
夫婦の前に現れた1人の男
息詰まるような台詞の応酬で、終始緊迫感に満ちた舞台でした。


シス・カンパニー公演 「死と乙女」
作: アリエル・ドーフマン
翻訳: 浦辺千鶴
演出: 小川絵梨子
美術: 松井るみ  照明: 原田保  衣装: 前田文子
出演: 宮沢りえ  堤真一  段田安則

2019年10月18日(金) 7:00pm サンケイホールブリーゼ 1階B列センター
(上演時間: 1時間35分)



物語: 独裁政権が崩壊し、民主政権に移行したばかりのある国。
かつて反政府側の運動家であった弁護士ジェラルド(堤真一)はある夜パンクで立ち往生し、通りかかった医師ロベルト(段田安則)の車に送られ、彼を家に招き入れます。
ジェラルドの妻ポーリーナ(宮沢りえ)は学生運動に身を投じていた頃、治安警察に拉致、監禁され激しい拷問と性的暴力を受けた過去に苦しんでいますが、ロベルトの声から、彼こそ15年前、シューベルトの「死と乙女」を流しながら目隠しをした自分を拷問、凌辱した男だと確信し、銃で脅して椅子に縛りつけ、「自白」を迫ります・・・。


銃を片手にロベルトに暴力的な言葉を浴びせ激しく迫るポーリーナ
拷問への関与をかたくなに否定し自分の潔白を必死に訴えるロベルト
2人の間で何とか事態を打開し、妻を翻意させようと苦闘するジェラルド
三者三様の思惑が交錯。
何が真実で、誰が狂気の淵にいるのか。
ひりひりするような緊迫感が続きます。

ポーリーナの主張が正しいのか、それは思い込みに過ぎず、ロベルトは無罪なのか
・・・真相は最後まで明確にされず、観る側の判断に委ねられます。
ストーリー展開そのものより、3人と葛藤や心理戦を目撃することが醍醐味の作品と言えるでしょうか。


続きがあります
posted by スキップ at 16:30| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする