2019年09月21日

ホラーの顔をした人間ドラマ 「ブラッケン・ムーア」


brackenmoore.jpg「私たちの失ったものが帰ってきた。息子の姿をして-」
このコピーや「亡霊」という言葉が入ったサブタイトル、フライヤーの雰囲気から、ゴシックホラーか、もしくは岡田将生くんが息子になりすます犯罪劇かと思っていました。

が、そこに浮かび上がるのは、止まっていた過去から立ち上がって前へ進もうとする者と、まるで時代に取り残されたように動くことができない者が織りなす再生と喪失の、濃密な人間ドラマでした。


「ブラッケン・ムーア ~荒地の亡霊~」
作: アレクシ・ケイ・キャンベル
翻訳: 広田敦郎
演出: 上村聡史
出演: 岡田将生  木村多江  峯村リエ  相島一之  
立川三貴  前田亜季  宏田力  益岡徹

2019年8月31日(土) 6:15pm シアター・ドラマシティ 10列センター
(上演時間: 2時間35分/休憩 20分)



物語の舞台は1937年のイギリス ヨークシャー州の重厚な屋敷の居間。
この家の主 ハロルド・プリチャード(益岡徹)は裕福な炭鉱主ですが、10年前に一人息子・エドガー(当時12才)がブラッケン・ムーアという荒野の廃坑に落ちて亡くなって以来、妻エリザベス(木村多江)はふさぎこんで家に引きこもっていますが、そんな彼女を励まそうと旧友のエイブリー夫妻(相島一之、峯村リエ)が息子とともに訪ねてきます。夫妻の息子 テレンス(岡田将生)は亡きエドガーの親友でしたが、彼にエドガーの霊が憑依して・・・。


冒頭はハロルドと炭鉱閉鎖によって失職に追い込まれたジョン・ベイリー(立川三貴)の議論が続きます。
相容れない二人の会話に、当時のイギリスやヨーロッパの経済・社会情勢、迫り来る石炭産業の行き詰まりと凋落、古い価値観の崩壊といった時代の転換期が透けて見え、それらを肌では感じながらも、保守的で傲慢な態度を崩さないハロルドの閉塞感がこの邸宅を覆っているように感じられます。

この後、この屋敷に現れるテレンスは若く聡明で、左派の思想を持つ芸術家。
二人の会話も相容れることはありません。

やがてエドガーがテレンスに憑依。
その言動がエドガーの魂だと信じて疑わない母 エリザベス。
テレンスが芝居をしていると決めつける合理主義の父 ハロルド。
ここでも夫婦でありながら相容れない二人が垣間見えます。


続きがあります
posted by スキップ at 16:09| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする