
その夢の 真実を考えるところ
その夢の裂け目を考える ところ
ラストで歌われるこの曲が心に響きます。
劇場に行くことは夢みること=非日常 を求めてしまいがちですが、楽しく夢みられる面だけでなく、その裏なのか奥なのかにある真実を、その夢の裂け目をちゃんと見なさいと、井上ひさしさんの声が聞こえてくるようでした。
新国立劇場開場20周年記念公演
「夢の裂け目」
作:井上ひさし
演出:栗山民也
出演: 段田安則 唯月ふうか 保坂知寿 木場勝己
高田聖子 吉沢梨絵 上山竜治 玉置玲央 佐藤誓
音楽: クルト・ヴァイル 宇野誠一郎
音楽監督: 久米大作
演奏: 朴勝哲 佐藤桃 熊谷太輔 山口宗真
2018年6月28日(木) 1:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
1階C列(2列目)上手 (上演時間: 3時間/休憩 15分)
子どものころ、お祭りの縁日に紙芝居が来ていて、おじさんから買う水あめが大好きで、割り箸についた水あめをねりねりしながら観たなぁとか、私が通っていた小学校では、6年生が1年生の教室にやって来て紙芝居を上演してくれる、という時間があって、毎週(?)いろんな紙芝居観たなとか、「紙芝居」で思い出すのはそんなことですが、いずれも遠い昔のおぼろげな記憶。
これはそれよりさらにさかのぼった時代の、紙芝居屋の親方が主人公の物語。
物語の舞台は昭和21年の東京の下町 根津。
紙芝居屋の親方 天声こと田中留吉(段田安則)はある日突然GHQから東京裁判に検察側の証人として出廷を命じられ、民間検事局の川口ミドリ(保坂知寿)ら口述書を取られます。家族や周囲の人々を巻き込んで「極東国際軍事法廷証人心得」を脚本がわりに予行演習をして、当日は戦犯である東条英機らの前で無事証言を済ませた天声は、東京裁判の持つ構造に重大なカラクリがあることに気づきます・・・東京裁判の仕組みは天声がつくった紙芝居「「満月狸ばやし」と同じ筋書きなのではないか・・・それを紙芝居の上演で声高に喧伝し始めた天声は再度GHQから呼び出され・・・。
井上ひさしさんが新国立劇場に書き下ろした「東京裁判三部作」の1作目で2001年に初演された作品ということですが、初見です。
ちなみに他の2作(「夢の泪」「夢の痂」)も観たことがなくて、井上ひさしさんの作品、まだまだ観ていないものがたくさんあるなと思いました。
井上流・重喜劇ということですがいつも通り、というかいつも以上に「音楽劇」という印象。
3月に観た「シャンハイムーン」が井上ひさしさんの戯曲にしては珍しく歌も踊りもなく完全ストプレだったのと対照的です。
音楽は生演奏で、張り出したステージ前方の床が切り抜かれオケピのようになっていて、ピアノ、パーカッション、サックスなどのバンドが開演前から演奏を始めていました。
jazzyなメロディに日本語の歌詞が乗って、歌うまさん揃いで耳に心地よい。
「あれ?これ、『三文オペラ』の曲?!」と思っていたら、音楽にクルト・ヴァイルがクレジットされていることに終演後気づきました。
続きがあります